PL学園vs上宮太子
大川悟投手(PL学園)
しぶとく!
『しぶとく、渋く、粘って』PL学園が近畿大会最後のイスを掴み取った。
吉川大幾前主将や勧野甲輝(ともに3年)というプロ志望届を出すような凄い選手はいない。試合を見ていても、強さはほとんど感じない。
「ここまで来られるチームだとは思っていなかった」という河野有道監督の言葉が、今のPL学園の力を物語っている。
前日の準決勝(2010年10月16日)は大阪桐蔭にコールド負け。河野監督は「選手には直接言えなかったけど、桐蔭とはやはり力の差はあると思っていた」と覚悟していた負けだった。それでもこの日、河野監督は選手に語りかけたという。
「お前達にも(甲子園という)夢があるんだろ」。
選手は持っている力以上のものをこの3位決定戦にぶつけた。
まずは先発のマウンドに上がった大川悟(2年)。普段はセンターを守る大川だが、この秋から投手の練習も始め、5回戦(東大阪大柏原)と準々決勝(大商大堺)に続く3度目の公式戦のマウンドだ。
前日、エースの橋本純一(2年)ら3投手が打たれていただけに、河野監督としても最後の砦として送り出した左腕。
「負ければここで終わりというプレッシャーはあった」という大川が立ちあがり2つの四球で2死ながらピンチを背負う。それでも「先制点を与えたくなかった」と意地で三振に切り、ピンチを切り抜けた。
PL学園・森(5回表に好返球でピンチを救う)
2回以降、立ち直った大川が次に迎えたピンチは5回。1死から上宮太子の7番谷護(1年)に初ヒットを浴びる。送りバントで2死2塁。
このピンチの救ったのがセンターを守る、森雅仁(2年)。9番金城輝昌(2年)が放った打球はセンター前へ抜けた。二塁走者は一気に本塁を目指す。「しまった」という大川だが、森からの返球は真っすぐに捕手の深海翼のミットに収まり、走者は本塁で憤死。与えたくなかった先取点を阻止した。
普段は内野手で前日のようにセカンドを守ることが多い森だが、この日は大川がマウンドに立つということで、センターに回っていた。河野監督が「本来は内野手なのだが、器用な選手なので」と話す森のビッグプレー。大川も「自分が投げていても心強い」と終盤にもファインプレーを見せた森に感謝。
これで勢いのついたPL学園はその裏、今度は下位打線が活躍する。先頭の8番藤本裕規(2年)がレフトの頭を越す三塁打で出塁。続く9番三好宏紀(2年)は2球目を打ち返すと、渋くライトの前へ落ちるタイムリーヒットとなり待望の先取点が入った。
実はこの三好はこの日セカンドで出場。前日は森がセカンドを守っていたために出番はなかった。その森が大川の先発に伴ってセンターに回り、掴んだ出場の機会。そのチャンスに貴重な先制タイムリーという形で応えた。
1点をもらった大川は後半、緩急をつけたピッチングがさらに冴え、上宮太子打線に連打を許さない。PL学園は8回裏に5番菅元隆斗(2年)のタイムリー三塁打と6番山原泰士(2年)のスクイズで2点を追加し3対0。
「強い気持ちで投げた」という大川は最後まで崩れず、120球で公式戦初完封。河野監督に「投手の軸も今は大川」と言わせるほど粘り強いピッチングを見せた。
PL学園 深海翼主将