佼成学園vs東亜学園
4回2点タイムリーを放った4番山下(佼成学園)
佼成学園が延長10回、満塁から中犠飛でサヨナラ勝ち
前日からの雨が朝まで残ったが、人工芝の神宮第二球場だけは何とか試合が出来た。
13時15分にプレーホールとなったが、試合後半には日が射すようになり、1日の天候が大きく変わってまるで別の日のように感じられたくらいだったが、この試合も前半と後半で試合の主導権が目まぐるしく変わり、別の試合であるかのような印象でもあった。
先制したのは佼成学園で2回、2死満塁から二番中川君の中前打だった。
さらに4回には東亜学園の二番手左腕保坂君に対して黒澤君の中越二塁打や死球で2死二三塁として注目の好打者四番山下君が左前へ適時打して二者を返してリードを広げた。
ここまでは完全に佼成学園が主導権を握った試合だった。
ところが、東亜学園が5回に四番芳賀君の二塁打で1点を返すと流れが変わり、6回は代打吉田君の犠飛と一番蓑原君の右前打で同点とした。
佼成学園は踏ん張っていた溝口君から左腕の今井力君につないだが7回、東亜学園が押し出しで逆転した。
その裏、佼成学園は無死二三塁を逸する。こうなると、試合そのものは東亜学園の行け行けムードになるのかなというところではある。
ところが、この試合に限ってはそうはならなかった。東亜学園も8回、無死一三塁という好機を盗塁失敗などで逸して再び展開を混迷に導いた。
案の定というか、その裏佼成学園は1死二三塁でスクイズを外されながらも、何とか事なきを得た後に中川君の中犠飛で追いついた。
9回には無死で中井君に二塁打か出て、東亜学園は1死三塁まで攻めるものの、ここは今井力君が踏ん張って切り抜けて延長戦に突入した。
サヨナラの犠牲フライを放った3番吉田(佼成学)
10回の攻防は佼成学園が1死一二塁を併殺で切り抜けると、その裏、八番に入っていた今井力君が安打で出るとバントと四球に、中川君の安打で満塁として三番吉田君が中犠飛を放ってこれがサヨナラとなった。
「とにかく、思い切って振って来い」と送り出した吉田君は1年生だが三番に入っているだけにスイングは鋭かった。
この試合、吉田君は守りでも再三攻守を披露していたが、センスのある好選手であり藤田直毅監督の期待も高い選手である。
主導権が何度も行き来する試合展開でベンチとしても気が気でない状態だったであろう。
藤田監督は試合後、
「1点差の試合というのは監督の差が出るといわれるじゃないですか、4―3になった時に、そう思わされましたよ。ただ、今日はウチがラッキーがあって同点、逆転できましたけれども、8回にスクイズを外された時には上田さん(東亜学園監督)の百戦錬磨の執念を感じましたね。あの後、よく打ってくれました」
と、厳しい試合を何とか制して安堵しながらも、1年生の多いチームだけに、これを自信にしていきたいという気持ちも改めて強くなっていったようだった。
(文=手束 仁)
(写真=高校野球情報.com編集部)