大垣日大vs常葉橘
大垣日大・葛西があわや完全試合。
球場が静まりかえった。
9回2死まで、打者26人をパーフェクト。
あと1人で、偉業達成の瞬間を迎える。
7回以降はスタンドからも1球のボールにため息が起き、1つのアウトに安堵の気持ちを表す歓声と拍手が起きるようになっていた。
マウンドには、大垣日大のエース・葛西(かっさい)。
打者26人に対し、奪三振はわずか1。6回までわずか50球の投球数が示す通り、ストレートを主体に内角をしっかり突き、打たせて取る投球でここまで来た。
完全試合は、7回にベンチで「もしかして、パーフェクトじゃねぇ?」と言われ気がついた。
「あれでかえって気が楽になりました」(葛西)
27人目の打者は9番の左打者・俊足の宮路。
初球、外角低めにストレートが決まる。
そして、運命の2球目。葛西が選択したのは外角へのスライダーだった。
ひっかけた打球がセカンドの左へ。二塁ベース横で掴んだ二塁手・長尾が懸命に一塁に送球するが、間に合わない。観客の「あーあ」というため息とともに、完全試合はあと一歩のところで幻に終わった。
それでも、葛西は続く打者を落ち着いて三振に取り、1安打完封。1年生とは思えない堂々とした投球だった。
試合後、阪口監督は内野安打となった1球をこうふりかえった。
「ゆるい球はいかんと思ったんですよ。ひっかけられるから」
ただ、そのスライダーが武器になっていたのも事実。この日投げた23球のカーブ、スライダーのうち、ボールになったのはわずか7球だけだった。
「カーブ(スライダー)がよくなりましたね。あれでカウントが取れるようになった」(阪口監督)
「県大会後にひじを上げて、リリースを高くするようにしたら決まるようになりました。カーブでストライクが取れて楽でした」(葛西)
いつもよりカーブがよかった分、宮路にもカーブ系を選択したのだろう。
試合後、葛西、捕手の時本に打たれた球を聞くと、ともにこんな答えだった。
「ストレートだったと思います。スライダーだった? 覚えていません」(葛西)
「最後はスライダーだった? 覚えてないです(笑)」(時本)
完全試合まであと1人と迫った重圧が、記憶をなくさせているのか。
指導者から「覚えていない」というように指示されたのか。
いずれにしても、打者が俊足の左打者だっただけに……。
「ストレートにこだわりはないです」
葛西はそう言ったが、惜しまれる1球だった。
パーフェクトは難しい。
(文=田尻賢誉)
[:addclips]
[:report_ad]
大垣日大 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
常葉橘 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
大垣日大 葛西―時本 常葉橘 長谷川―牛場
二塁打= 高田,後藤(大)