「公式戦は勝つもの」昨秋3決で涙を飲んだ東山(京都)が春にかける思い
怪我に泣いた現役時代 25歳の若さで監督に就任した足立監督
ミーティングで話す足立景司監督
岡島 秀樹(元レッドソックスなど)ら数々のプロ野球選手を輩出し、春4回、夏4回の甲子園出場経験を持つ東山。2002年夏を最後に甲子園から遠ざかっているが、一昨年秋の近畿大会に出場するなど、激戦区の京都府において近年も安定して上位に顔を出している。
昨秋はセンバツに出場した京都国際に3位決定戦でサヨナラ負けを喫し、あと一歩で近畿大会出場を逃した。夏は19年ぶりの甲子園出場を果たすべく、日々の練習に取り組んでいる。
チームを率いるのは同校OBで30歳の足立 景司監督。高校時代は府内でも有名な投手で、卒業後は立命館大に進学。同期には金子 侑司(西武)がいた。大学でも活躍が期待されていたが、入学と同時にイップスになったこともあり、学生コーチに転身。その時の経験が指導者になってから役立っていると話す。
「怪我が多く、自分の野球のキャリアを振り返ると、失敗することが多かったのですが、高校生を指導するにあたって、思うようにいかない選手の気持ちに寄り添って考えられるようになったと思います」
大学卒業後に母校に戻ると、2016年4月に25歳の若さで監督に就任。その年にいきなり秋の府大会を制すると、その後も毎年のように上位に進むチームを作りあげている。
コロナ禍で行われた昨夏の独自大会は3年生だけで戦った。部員間の投票で選ばれた山中 颯馬(3年)が主将となり、新チームがスタートしたが、例年以上に基礎ができていなかったと足立監督は振り返る。
「去年の3年生は自分たちが最高学年なので、最後の大会に向けて、休校期間中に甲子園があるかわからない中でも各自で一生懸命に練習をしてくれた印象がありました。一方、下級生はそこまで当事者意識がないものですから、練習を重ねるのがなかなか一人の力では難しかったのかなと思います。そういう努力不足が如実に出ているような新チームのスタートでしたね」
[page_break:乙訓、京都国際戦を経て]乙訓、京都国際戦を経て
守備練習する東山の選手たち
春から夏にかけて実戦を経験できなかったため、夏休み期間は積極的に練習試合を組んだ。ところが、「基本ができていないのもそうですし、チームで野球をやっていく感覚が全くなかったですね。今までになく、練習試合で勝つことがなかったです」(足立監督)と勝率は例年以上に悪かった。
不安を抱えながら秋季大会に臨んだが、1次戦は難なく突破。2次戦の1回戦では宮津・加悦谷・宮津天橋連合を相手に7回を終えて10対11とリードを許していたが、8回表に2点を奪って逆転すると、9回には11点を奪って、23対11のハイスコアで勝利を収めた。
「夏休みの練習試合の感じだったらそのまま負けていたと思うんですけど、少なからず一発勝負で甲子園に繋がっている舞台でしたので、何とかみんなが踏ん張って頑張ってくれました」と足立監督。準々決勝の立命館宇治戦も3対1で勝利し、近畿大会出場に王手をかけた。
しかし、準決勝の乙訓戦では「立ち上がりから呑まれてしまった」(足立監督)と序盤から流れを掴めず、1対8の7回コールド負けを喫した。翌日の3位決定戦では京都国際に2対3のサヨナラ負けとなったが、得られたものもあったと指揮官は話す。
「京都国際さんとの試合はとにかく吹っ切って、思い切ってやるところだけをテーマにしていたんです。試合に負けはしたんですけど、1日前とは別人と言いますか、プレーに対する雰囲気が全く変わりましたので、本当にその入り方一つだなと思いましたね」
2年連続の近畿大会出場こそ逃したが、収穫の多い大会となった。冬場は休校期間中の遅れを取り戻すために基本練習を徹底して行った。春以降はその成果を試合の結果に結びつけていくことを足立監督は期待している。
「ボールを捕る力や投げる力はついてきたと思うんですけど、なかなかそれに試合というものがイメージされていないので、そこがリンクしてくるとブレイクするのかなと思っています。春の大会は絶対に優勝するという目標でずっと口酸っぱく言っていますので、甲子園に繋がる繋がらないに関わらず、公式戦は勝つものであるという雰囲気を根付かせたいと思っています」
(取材=馬場 遼)