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野球が終わっても「腰が低いし笑顔が似合う」と言われてほしい 恩師が語る野村祐輔(広陵)の高校時代

2019.06.01

 序盤こそつまずいたものの、大型連勝を続け現在はセ・リーグ4連覇へ向け順調な道筋を描く広島東洋カープ。その大黒柱として君臨するのが広陵(広島)で2007年春夏連続甲子園出場で春ベスト8・夏準優勝投手。その後、明治大でも東京六大学リーグ30勝で4年秋には明治神宮大会優勝を手土産にドラフト1位で広島の地に帰還。今季8年目を迎える野村 祐輔投手である。

 どんな場面にあっても心技体の制球力を駆使し、ポーカーフェイスで投げ続ける野村投手。その原動力となっているものとは何か?今回は広陵時代の恩師・中井 哲之監督に高校当時の野村投手について、そして野村投手が今も続ける「習慣」についても語って頂きました。

「あの先輩」がブルペンに来ると中井監督に……

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広陵高校時代の野村祐輔(広島)

 野村(祐輔)を最初に見たのは倉敷ビガーズ(岡山・ヤングリーグ)の時だったと思います。第一印象は「うまいな、伸びしろがあるな」。ものすごい剛球を投げている感じではなかったけど、コントロールがいい。今もそうですが「うまい、賢い」。考える力がある、自分を知っている、ということですね。「これが力強くなれば球速も速くなるだろうし、身体の使い方も柔らかいので、伸びるだろう」とは思ってました。

 だから投手でなくても他のポジションができる感じでした。本人に「ピッチャーできなくなったらどうするんや?」と聞いたら「セカンド・ショートをしたいです」と言ってたのは覚えていますけど(笑)。打つのも守るのも器用な子でしたよ。

 その後、力がつくとスピードもキレも増していきましたし、変化球のコントロールもよくなっていきました。さっき言った「うまさ、賢さ」を活かしながら、そこを指導していきましたね。野村の1学年上は吉川(光夫・読売ジャイアンツ)がいたんですが、彼は高校時代から強いボールを投げられていた。だから祐輔にはそこで刺激を与えていました。

 ただ、本人は体力がないのに強いボールを投げようとすると身体が開きすぎるし、突っ込んでしまうことは解っていたようです。当時の吉川とは筋力が違いますからね。人のペースを崩すわけではないんですが、いい意味でマイペースな子だったと思います。だから「吉川さんと並んで投げると力むから、横では投げたくない。吉川さんが終わった後に投げます」と。2年生でそんなことは普通よう言わんのですが、僕は「あ、そう」みたいな(笑)。そんなエピソードはありました。

 ですので、下級生時代は球速も140キロを少し超えるくらいだったし、出し入れ・コントロールがよかったスライダーで勝負する、その後、明治大に行った時は149キロ・新入生で一番球速は速かったらしいんですが、それでも「速さじゃないんだ」ということでバランスを崩さず、広島東洋カープでも打たせて取って勝てる投手になれた要因だと思いますね。

[page_break:節目節目であいさつができる「人として」育ってほしい]

節目節目であいさつができる「人として」育ってほしい

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野村祐輔の恩師である中井哲之監督(広陵)

 高校で最も印象深いのはやはり逆転満塁ホームランで負けた3年夏の甲子園、佐賀北(佐賀)との決勝戦後。宿舎では野村だけでなく、みんな泣いていました。あとで聞いたら「監督さんが僕らの気持ちを代弁して、僕らを守ってくれたうれし涙でした」とは言ってくれましたけど。
 僕は彼らに「正しいか、正しくないか」という躾(しつけ)はしてきましたし、僕自身もそうしてきましたけど、そんなこともあって嬉しかったんだと思っています。

 でも、僕らにとっては普通なんですよ。「親父が泣けば子どもが泣く、子どもが泣けば親父が泣く」というのは。広陵はずっとこのスタイルなので。

 それと野村は有原(航平・北海道日本ハムファイターズ)もそうなんですが、彼は節目節目で広陵まで来てあいさつをしてくれる。そんな彼ですから。僕は今も日々自分に厳しく頑張っていると思います。

 だからこれは誰にでも言っていることなんですが、野村にはこれからも「人として」育ってほしい。いつかプロ野球選手としての時間は終わるわけですし、「野村さんは野球が終わっても腰が低いし笑顔が似合う」と言われてほしいですね

(取材・文=寺下 友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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