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近江の有馬諒らが語る奥川恭伸(星稜)。さらに深みのある投球術を求めて

2019.03.22

掴んだ課題と深みを増した投球術

近江の有馬諒らが語る奥川恭伸(星稜)。さらに深みのある投球術を求めて | 高校野球ドットコム
奥川恭伸(星稜)

 センバツ組み合わせ抽選会翌日の3月16日に星稜近江の練習試合が行われた。星稜のエース・奥川恭伸(新3年)が先発登板し、7回無失点の好投。23日の履正社との1回戦に向けて上々の仕上がり具合をアピールした。

 対外試合解禁から1週間。今年最長の7回94球を投げて被安打5、四死球0、奪三振5と申し分ない投球内容だった。しかし、久しぶりに長いイニングを投げたことで疲労を感じたという。

 「まだ慣れていないということで、初回はあまり感覚が掴めずに力んだ分、スタミナを消耗してしまいました。特に最後の回は疲れを感じていました」

 これまでの実戦登板では短いイニングでの登板に留まっていた。そのこともあり、試合中は試行錯誤の投球が続いていたという。それでも「途中から自分の納得できるボールが増えてきたので、この感覚を大事にしていきたいです」と投げる中で手応えを感じていたようだ。近江はセンバツ不出場校の中ではトップクラスの実力を誇るチーム。その相手を無失点に抑えたことは自信になるだろう。

 秋には北信越大会での10者連続奪三振など圧倒的なパフォーマンスを見せた奥川。だが、秋から春に向けて投球の幅を広げようとしている。捕手の山瀬慎之助(新3年生)がこう話してくれた。

 「秋は外だけで抑えられたんですけど、インコースを上手く使えれば配球に深みが出て、外がもっと活きます。今日は良い時も悪い時もあったんですけど、良い時の感覚を掴んでいけば間に合うと思います」

 秋は力量差で抑えることができていたが、神宮大会が終わってからはインコースに強い球を投げる球を意識してバッテリーは練習を続けてきたという。150㎞に迫る速球がインコースにも決まるようになれば、相手打者は対応にかなり苦戦するのではないだろうか。

[page_break:あくまでチャレンジャーとして頂点を目指す!]

近江の主力打者が奥川を語る!

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奥川恭伸(星稜)

 対戦した近江の打者に奥川の印象について聞いてみた。まずは主将で4番の有馬諒(新3年)。プロ注目の捕手でこの日は奥川に対して3打数2安打と結果を残している。

 「かなり完成度の高いピッチャーだと思いました。真っすぐとスライダーに関しては一、二を争うピッチャーなんじゃないかなと思います」

 実はこの日、フォークとチェンジアップが決まらず、ストレートとスライダーが中心の配球だった。それでも有馬がスライダーを見送った時に驚いた表情を見せた場面があり、この2球種についてはかなりのレベルであることが窺い知れる。

 有馬と同様に昨春の甲子園で対戦したのが住谷湧也(新3年)。最初の2打席は凡退したが、3打席目にライトへの二塁打を放っている。住谷は「昨年よりは球も凄く速くなっていました」と昨年より相手が成長していることを実感していた。そんな中でインコースのストレートを上手く捌いた彼の打撃技術もかなりのものだ。

 奥川と初対戦となったのが、1番で出場した土田龍空(新2年)。速球に対応するためにバットをいつもより寝かせ気味にしたが、3打数無安打2三振と完全に抑え込まれた。初めて奥川と激突してどんなことを思ったのだろうか。

 「吉田(輝星・日本ハム)さんと違うタイプだったんですけど、良いピッチャーだなと思いました。スライダーのキレなどは吉田さんの方が上だと思うんですけど、素晴らしいピッチャーだったと思います」

 奥川の素晴らしさを実感しつつも現時点の奥川よりも昨夏の吉田の方が上だと対戦して感じたようだ。それだけ昨夏の吉田はインパクトが強かったのだろう。

 近江との対戦を終え、星稜は23日の履正社戦に挑む。履正社はセンバツで2度の準優勝という実績があり、今大会も井上広大(新3年)や小深田大地(新2年)など強打者揃い。強敵との試合を前に奥川は次のように意気込みを語ってくれた。

 「自分たちよりも力のある学校だと思うので、優勝候補と言われていますが、チャレンジャー精神を忘れずにぶつかっていきたいです」

 センバツの優勝候補大本命として挙げられている星稜だが、気持ちはあくまで挑戦者。日本一に向けて初戦から厳しい戦いが予想されるが、相手にとって不足はない。奥川の右腕によって石川県勢初の甲子園優勝に導くことができるだろうか。

文・写真=馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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