Column

高校野球研究会 「取材現場から見た高校野球」

2013.12.20

[pc]



高校野球専門誌『報知高校野球』元編集長 今村成一氏

[/pc]

 毎年、12月の第二日曜日(以前は土曜日)を目処として開催されている、東京都の都立高校の高校野球指導者を中心とした勉強会である高校野球研究会。今年も8日に神宮球場の向かいにある都立青山高校で開催された。今回の講師は、高校野球専門誌の『報知高校野球』の元編集長で、高校野球の取材現場で40年以上も活動をしてきたベテラン記者の今村成一氏で、「取材現場から見た高校野球」というテーマで小山台の田久保裕之コーチの司会進行で行われた。

取材する側とされる側の一期一会

 今村氏は最初、報知新聞社の芸能面担当記者として入社した。それが、江川卓氏が作新学院で活躍した頃に運動一部に異動。当初は、ほとんど野球を知らなかったというが、その運動一部でアマチュア野球担当となったのが、高校野球との最初の関わりだったという。その後、江川氏の大学進学に伴って、いわば江川番のような形で張り付いていた。当時、報知新聞社から『大学野球』という雑誌が刊行され、それに関わるようになった。

 やがて、1978(昭和53)年に『報知高校野球』が刊行されることになるのだが、その創刊号から参加することになったのである。

 それ以来、高校野球の世界にどっぷりと浸りきることになっていくのだが、高校野球の取材ではまず監督との接触、それがすべてという考え方でやってきた。そこには、「取材する側とされる側の一期一会」があったという。その心がけと、思いを熱く語った。

 「監督が取材記者を知る必要はないけれども、記者は監督を知らなくてはいけない。監督にそっぽを向かれたらすべてがおしまいですから…。だから、この監督はどういう男なのかな、そういうことを知っていかないといけないんです。1時間話を聞いて、使えるのは、ほんの何行分かくらいしかないかもしれないけれど、そこに哲学というほどはオーバーじゃないかもしれないけれども、その人の考え方を大事にしていかないといけません」

 これが、今村氏の取材哲学である。つまり、原稿に反映されるのかどうかとは別に存在してるモノがあって、それをどう伝えていくのかということである。


「形にこだわりながらも、実は形がないのが野球」

 もっとも、酒好きの今村氏である。話が進んでいくと、取材しながら、さまざまな監督たちと杯を傾けた話が多くなってきた。しかし、そうした中からこそ、その人の考え方やこだわり、そして人生観なども垣間見ることができるのである。

 そんな中で、監督と話した言葉で印象に残った「飲水思源」「雪中送炭」という四字熟語の話にまで至った。ちなみに、飲水思源とは「水を飲むときにはその井戸を掘った人のことを忘れないようにしなさい」という意味で、感謝の気持ちを大事にするということ。また、雪中送炭とは、「寒い時には炭を送ってくれたら嬉しいけれども、温かい時にはそんなもの送ってもらっても嬉しくもなんともない。だけど、辛い時に施してくれた人のことを忘れてはいけない」という意味だということだ。

 そんな話を語るのは、やはり記者として言葉を大事にして、どの言葉をどう使っていくのがいいのかということを、いつも意識してきたからであろう。
 そして、さまざまな監督との交友録から、現代の高校野球で指導者たちが悩んでいることの一つでもある、メールでの報告などについても自論を展開した。そして、「形にこだわりながらも、実は形がないのが野球」という独自の野球観を述べた。1時間の予定時間の中で、まさに盛りだくさんのエピソードを史溶解していって、さすがにその道40年のベテラン記者であった。
 今村氏は、この高校野球研究会に、スタート当初から顔を出していたということもあって、最後は会の創設当初の思い出話などにも触れていた。

 講演終了後は、業務連絡とともに、会の発足者の一人である長嶺功元世田谷工監督から、体調を悪くしていた発起人の樋口秀司先生の状況が回復しているという報告と、先の台風で大きな被害を受けた大島高校野球部へ募金呼びかけも行われた。

 その後は、今村氏も参加して懇親会が行われた。

(文・手束仁

このページのトップへ

[/pc]

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.06

【2024年夏 全国地方大会シード校一覧】現在27地区が決定!

2024.05.06

センバツV・健大高崎は夏も強い! Wエース抜きで県大会優勝、投打に新戦力が台頭中!

2024.05.06

【大阪】大阪桐蔭が快勝!準々決勝でプロ注目・今坂幸暉擁する大阪学院大高と対戦!<春季大会>

2024.05.06

【春季埼玉県大会】花咲徳栄4回に一挙10得点!20得点を奪った花咲徳栄が昌平を破り優勝!

2024.05.06

【富山】富山商が高岡商を破って春連覇達成<春季県大会>

2024.05.06

【2024年夏 全国地方大会シード校一覧】現在27地区が決定!

2024.05.01

春季大会で頭角を現した全国スーパー1年生一覧! 慶應をねじ伏せた横浜の本格派右腕、花巻東の4番、明徳義塾の正捕手ら入学1ヶ月の超逸材たち!

2024.05.01

【神奈川】関東大会の切符を得る2校は?向上は10年ぶり、武相は40年ぶりの出場狙う!横浜は6年ぶり、東海大相模は3年ぶりと意外にも遠ざかっていた春決勝へ!

2024.05.01

【兵庫】報徳学園、須磨翔風などが順当に夏の第1シード獲得!昨秋ベスト4の長田、滝川二はノーシードに

2024.05.01

【福島】聖光学院と福島商が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.21

【兵庫】須磨翔風がコールドで8強入り<春季県大会>

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>