第63回沖縄県高等学校野球秋季大会抽選結果と展望
来春センバツの選考となる第133回九州地区高等学校野球大会が、2005年以来8年振りにここ沖縄県で開催される。例年なら決勝へ進んだ2校のみだが、今年は開催地枠を含む4校が九州大会へ派遣されるとあって会場は熱気に包まれていた。各校の新主将たちが次々とクジを引いていく中で、驚きとどよめきの声があがる場面もあった。そんな各ブロックの展望を見ていこうと思う。
Aブロックの展望
▲組合せ(写真:美里工高校)
昨年の一年生中央大会と去った新人中央大会と、この年代での二大会連続優勝を果たしている美里工ブロック。新人中央大会のチーム打率.421(4試合121打数51安打)と圧倒的な数字を残した上に、決勝戦ノーヒットノーランを達成した島袋 倫が16イニングを投げて無失点に抑えれば、右の伊波 友和は同大会13イニングで1失点と安定感を増した。
この左右両輪が盤石な美里工は、あの甲子園春夏連覇を果たした興南を彷彿とさせるような強さを見せ、他校を頭一つどころか二つもリードしている。その対抗馬は嘉手納だろうか。新人中央大会で初戦敗退も浦添商に僅か1点差の惜敗。ともにスタンドへソロアーチを架けた4番知花 由樹と5番大城 璃功を筆頭とする強打と、左の桃原 瑠希、右の當山 富芳の投手陣が噛み合えば面白い存在になるだろう。
その嘉手納と対する南風原は、夏の選手権で上級生に負けない活躍を見せた小濱 優磨と金城 弘樹を中心とした打線で立ち向かう。このブロック一回戦の好カードだ。その他新人中央大会に出場した前原には、まだ一年生ながら8回途中まで糸満打線を5安打1自責点に抑えた西野 光人が、那覇には164Cmと小柄ながら内角を突く強気なピッチングで美里工打線を5回まで無失点に抑えた大城 匠之介の好投手が控える。粘りの野球をする北中城やまだまだ未知数の豊見城、名護、浦添工といったところも楽しみだ。
Bブロックの展望
▲組合せ(写真:糸満高校)
一年生中央大会準優勝、新人中央大会4位の糸満ブロック。ひとつ上の代からレギュラーとして活躍し、新人中央大会でも11打数4安打、3試合連続ヒットをマークした神谷 大雅が糸満打線を引っ張る。そこに元来バットコントロールに優れるが同大会では精彩を欠いた新垣 僚麻が復活すればさらに強力なチームへとなるだろう。3試合で先発した赤嶺 祥吾も、疲れが見られた3試合目以降こそ不安定も、そこまでの2試合で16イニングで自責点2とメドが立った。ここに選手権大会で投げた新里 勇介らに、期待の大城 龍生や金城 乃亜の180Cm一年生コンビが加わるなど選手層の厚さは目を引く。
新人中央大会でベスト8入りした八重山商工。初戦で12奪三振184球で延長12回完投した馬場 寿希矢が頼みだ。ベンチメンバーが僅か12名しかいない少人数だが、1974年にさわやかイレブンと呼ばれた徳島池田高校や、77年に24の瞳と話題になった高知中村高校のような伝説を築くかもしれない。
一年生中央大会で活躍した仲宗根 陽介がいる読谷や、選手権大会でブレイクした川野 裕司のいる具志川も侮れない。そんな中ここの注目は沖縄水産か。中学校軟式野球で、全日本春季軟式野球沖縄県予選大会と、KBC学園杯新人野球大会、そして選手権大会の三冠を達成した当時の知念中学でバッテリーを組んでいた島袋 朝大投手と大田 徳斗捕手が、沖縄水産でも順調に成長しているとのこと。修羅場を潜り抜けてきた二人に、この秋の古豪復活が託される。
Cブロックの展望
▲組合せ(写真:コザ高校)
新人中央大会準優勝のコザブロック。金城 諒・勢理客 雄大・内間 敦也の一年生トリオに、二年生サイドスローの宮里 季築を加えたコザカルテットで、同大会準決勝までの3試合計33イニングで失点が僅かに1という抜群の守りを見せた。一方でその魅力的な投手陣に比べると、決勝を含む4試合で15安打しか記録出来なかった打線と、堅守というにはまだまだ若い内外野陣に一抹の不安が残ったのも確かだ。打撃の向上はすぐには見られないだろうが安定した守備力をどれだけアップ出来たかがベスト4へのカギだろう。
ひとつ前の代から出場し、勝負強さがある桃原 雅史に安仁屋 周平・浦崎 安鷹の投手陣の経験値に期待する那覇商や、学童時代から場数を踏んでおり、身長が180センチを超え将来を嘱望される野原 陽介がいる宜野湾、こちらも新人中央大会に出場し、コザ対抗の一番手となるのは宜野座と小禄。宜野座・伊保 拓海は初回こそ興南打線に5連打で4点を失ったが、それ以降の2回から7回までヒット4本に抑えて無失点と好投した。小禄・島袋 洋平は美里工・島袋 倫に勝るとも劣らない好左腕。コザとの試合では14回1/3イニングで被安打僅かに6本、193球2失点と力投した。
180センチ超えでキャッチャーとして夏の選手権でもマスクをかぶった安谷屋 太一の浦添などが面白い存在だ。
その中でもこのブロック一押しのカードが浦添商と首里。新人中央大会でベスト8の浦添商は、前チームから要の捕手を務める前田 光晴や好打者の長田 涼太など打撃陣は計算出来つつある一方で投手陣が不安。対する首里は一年生中央大会でベスト8。182Cmの長身から投げ下ろすストレートに威力がある本格派右腕の西岡 侑亮が主戦だ。また、新人中央大会で小禄を苦しめた宮古も侮れないだろう。
Dブロックの展望
▲組合せ(写真:沖縄尚学)
新人中央大会3位の沖縄尚学ブロックだが一番の激戦区となってしまった。甲子園でも好投した山城 大智に巧打堅守強肩の久保 柊人、長打力のある右の安里健に左の上原 康汰。そしてキャプテンとして諸見里 匠の、捕手として具志堅 秀樹の跡を継ぐ赤嶺 謙などの春夏の甲子園を体験したメンバーたち。これだけでも他校が羨む陣容なのに、彼ら抜きで新人中央大会3位を勝ち取った眞栄城 建や神里 廣之介らナインが加わるのだ。唯一の心配はその二つの融合か?だがそこは名門。杞憂に終わる可能性が高いだろう。
仲地航や、安座間 海、マックス ウェル ジェリー、小浜 百顕など春季県大会を制したときの主力でもあったメンバーが残った北山も上位進出が十分望める陣容。その初戦で北山と当たる普天間は、185Cmの大城 爽世と、先述したコザの内間や金城 諒、宜野湾の野原などと学童時代に凌ぎを削りあった184Cmの一年生与那原 大剛の長身コンビが、試合巧者北山にどう立ち向かうか。
北山と同じく前チームから残る新城 佑弥や山入 端立郎、ネブレトジョデシィなどの真和志と、新人中央大会で敗れたものの八重山商工を相手に延長12回で11三振(1失点)を奪った吉浜 敬祐のいる豊見城南の試合も見もの。さらに中部の強豪校として名を馳せる中部商と美里がぶつかるなど好カードが目白押しだ。そしてシード漏れした中で一番の注目であった興南がここに入った。しかも勝ち進んだと仮定した場合の直後の二回戦で沖縄尚学と当たるのだ。
興南・福地 正悠が「沖縄尚学は(互いに勝ち進めば)いつか必ずあたる相手。(一回戦を勝って)早めに当たることで勝利すれば波に乗って優勝までいけると思う」と語れば、沖縄尚学・赤嶺 謙は「どこと当たろうと沖尚の野球をするだけ。でも興南が隣に来てイヤだなと思うことはない。むしろワクワクしている」と返した。
センバツへと繋がる胸躍る大会は9月7日、[stadium]北谷球場[/stadium]を皮ぎりに開幕する!
(文=當山 雅通)