第5回埼玉県高校野球指導者研修会
今年のテーマ「いいチームとは」
今年最初の3連休となった1月の2週目週末の中日、13日(日)に埼玉県戸田市の南稜高校(野球部訪問:埼玉県立南稜高等学校)で、県内の中堅若手指導者たちが中心となって集まった「埼玉県高校野球指導者研修会」が午後3時から開催された。今年で、5回目となるが、元々は東京都で都立校の指導者たちが中心になって1985年から開催されている「東京都高校野球研究会」に倣(なら)って、開催するようになったものである。
南稜・遠山監督と川口北・柴田先生(左)
東京都に比べるとまだ、規模も小さいがそれでも熱心な指導者が集まり、それぞれの思いを語り合っていた。今年のテーマは、「いいチームとは…」というもので、いくらか曖昧なものでもあったが、これは、「この場で結論を出すものではない」という前提で、ここでさまざまな意見交換をしていく中から、自分のチームにとって必要なもの、ヒントとなることがあれば、それを実践していけばいいという考えからのものだった。
ところが、会を主宰して、今回のテーマを提案した大宮南の蓜島耕太郎監督が、インフルエンザで倒れ欠席となってしまっていた。そこで、同じく幹事の南稜・遠山巧監督と、前年まで三郷北で指導していたが、現在は野球部のない川口北に異動した柴田隆幸先生が会を進行した。
それぞれが5~6人の小グループになり、ディスカッションを行って、そこで思いを話しあった。遠山監督の声掛けで、川口市や戸田市など近隣の中学の指導者も何人か集まっていた。中学野球の指導者と高校野球の指導者が交流して話し合うことで、お互いに新たな発見もあったようだ。
ディスカッションを交わす指導者たち
そうした中から出てきた、今回のテーマに沿って出てきたいくつかのキーワード、ポイントとなる発言があったので、ランダムにここで挙げておこう。
「やらされている野球ではなくて、選手たちが自分で考えてやっているという雰囲気があるチーム」
「監督の意図を、選手たちが理解して自分たちから自主的に動いていくことのできるチーム」
「結果が出たことで、後付けかもしれないけれども、“いいチーム”になることもある」
「チームの核となる選手がいることで、その選手が引っ張っていくことでチームとしての色や特徴をアピールできるチーム」
「いいチームとは、選手にとってと、監督にとってと、見ている人にとってと、束によって違うかもしれない」
「今の、自分たちの能力を理解し、選手個々がそれぞれの役割を理解していることでチームが優れていく」
「いいチームとして一番大事なことは、選手と指導者との信頼関係。それがどれだけ強いのかということが現れ見えてくる」
「当たり前のことを当たり前に徹底できるのかどうか、それがいいチームかそうではないのかの境目」
「誰もが見ていて応援したくなるチームであること、そのことがにじみ出てくるかどうか」
「選手作りよりも、人作り。それが本当に出来ているのかどうか、それが現れたのがいいチーム」
「究極のいいチーム、高校野球にとって理想のチームというのは、ノーサインの野球が出来るかどうか」
いずれも、何回も言い尽くされたことかもしれない。しかし、こうして、同じ目標をもってしのぎを削り合っている仲間と議論し合うことで、改めてその大切さに気付くということもあるであろう。こうした会は、そんな指導者たちの意識の確認や、アイデンティティーをもう一度、確認するという意味もあるのだろうと感じた。
討論会はいったん閉鎖しても、メンバーの人たちは場所を変えた懇親会で、さらに熱い議論を続けていた。こうした情熱と思いが、高校野球を支えているもう一つの側面でもあるのだ。
(文・手束 仁)
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