Interview

千葉ロッテマリーンズ 鈴木 大地選手 vol.2「守備を支える独自のグラブのこだわり」

2016.05.24

 千葉ロッテの元気印・鈴木 大地選手。第2回では鈴木選手のグラブのこだわりについて徹底的に迫っていきます。

■第1回はこちら:プロフェッショナルなショートの『目』

「3つのライン」にこだわりを持つグラブ

鈴木 大地選手(千葉ロッテマリーンズ)

 鈴木選手がメンタルを保つためのたいせつな時間の一つに「グラブの手入れ」がある。前回のインタビューで、そのこだわりを聞いたが、今シーズンのグラブは色を変えた。
「今シーズンのグラブは少し大きい感覚があるのですが、配色によって大きさも違って見えるらしいので。機能面に関して、大きなことは変えていません」

 ミズノのグローバル・エリート。大学1年時からミズノ製を使い続けている。もっとも、高校時代までは特にグラブにこだわりはなかった。
「大学に進んで野球経験を積んでいく間に、いろんなグラブに出会うじゃないですか。チームメイトや他の選手の違うメーカーのものを、ふざけてはめさせてもらったり。その際にしっくりくる感覚が得られることがあって。

 僕の場合は基本的に柔らかいグラブが好きですけど、柔らかすぎてもダメで。逆に硬いのは嫌いなので…って矛盾してますけど(笑)、ポイントはしっかり、それ以外は程よく柔らかいと本当に体の一部になる感覚があるんです。言葉でうまく説明できないのですが、はめた瞬間に『あ、いいな』ってわかる感覚です」

 鈴木選手の言う「ポイント」とは、親指と人差し指、そして小指のラインのこと。ここがしっかり真っ直ぐになっていることが重要なのだ。

「前回も話しましたが、自分は当て捕りが苦手で。なぜなら、捕球時にグラブの中でボールが遊ぶのが嫌だからです。捕った時にボールが遊ぶと、意図していないところを握ってしまい送球に戸惑ってしまう。自分はしっかりボールを捕りたいタイプ。つまりグラブでボールをしっかり“握り”たい。となると親指と人差し指、そして小指のラインがポイントになります」

千葉ロッテマリーンズ・鈴木 大地選手の試合用グラブ

 取材時に見せていただいた試合用グラブ(※写真参照)は、広く深い作り、という印象だ。使い込まれているのは間違いないが、とてもきれいに手入れされているのも印象的だった。手入れの仕方や型のつけ方など、理想的な形に見える。ただ、鈴木選手は指摘する。
「今日は遠征帰りなのでバタバタしてしまい、まだ調整できてないんですけど、人差し指の部分はこれから紐をしばって硬くしようと思います」

 写真を見てお分かりになるだろうか、人差し指の部分が内側に少し曲がっている。鈴木選手のいうポイントの一つに異変が起きていた。

「ショートは打球の他にも盗塁時のキャッチャーからの送球、連係時の外野からの送球、ピッチャーからの牽制など、捕球する機会が多いポジションです。その際にグラブの人差し指のラインが弱いとボールがグラブの中で遊んでしまう。加えて人工芝のグラウンドだと、打球は減速しない。グラブが弱いと勢いに押されて弾かれてしまうことも多い。その点を考えても人差し指を固めておくことは必要かと思います」

 取材時に偶然そのような形だった可能性は否めないが、鈴木選手が言うグラブのポイント、「親指、人差し指、小指」のラインの中で、もっとも酷使しているのは人差し指かもしれない。

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[page_break:数と経験、そして「疑い」からもたらされるグラブさばき]

数と経験、そして「疑い」からもたらされるグラブさばき

鈴木 大地選手(千葉ロッテマリーンズ)

 グラブについて話をうかがう際、ショートで活躍する選手に聞いてみたかったのは「グラブさばき」についてだ。ショート、セカンドの選手はグラブさばきが巧みな選手が多い。これはなぜなのか。そして、どうやったら習得できるものなのか。

「基本的な動き、ってありますよね。こういう打球にはグラブをどう出せばいいか、という。でも、全ての打球に対して基本で対応できるわけではありません。むしろ、想定していたのと違う打球が来るケースって結構あります。イレギュラーしたり、回転がかかっていて少し左右にズレたり、詰まったり。

 そこはもう感覚に頼る部分はあります。自分も、頭で考えるより先にグラブが反応していることもありますし。『感覚』という一言だけで終わらせるのは申し訳ないですけど…。一つ言えるのは、『こうなるかもしれない』と、常に疑いから入っているということでしょうか」

 最後の言葉に最上のヒントがあった。例えば、運転免許取得の際に「危険予測」という事項を学ぶ。運転中に物陰から何かが「出てこないだろう」と思わずに「出てくるかもしれない」と予測していると、不測の事態にも対応できるというものだ。それと同じで、飛んでくる打球に対して「イレギュラーするかもしれない」「ズレるかもしれない」とあらかじめ考えておくことで、実際にそうなった時も対応できる可能性が高まる。その対応の一つの形が、柔らかなグラブさばきだ。

「例えば打者のバッティング時の態勢が悪いとか、連係プレーでも相手からの送球時の態勢が崩れているとか、そういった情報から思っていたのと違うボールが来る“かもしれない”と準備しておくことはできます。そこで実際に想定外のボールが来ても“あ、やっぱりな”と思える。準備せずに想定外のボールが来て“あ!まずい!”と思ったらおしまいですから」

 突発的な事態に陥ると、焦りと緊張から人間の身体は硬直する。言葉どおり「柔軟に」対応するには、予測と準備が欠かせないのだ。もちろん、これは一朝一夕でできることではない。数を受け、経験を積む先に得られる感覚であり、準備力である。

「数をこなさなければ覚えない、というのが持論です。自身、これまでも数をこなしてきましたし、これからもまだまだこなすべきだと考えていて。でも、それが全てではない。ノックで数をこなせば、即試合で通用するかというとそんなことはない。試合でエラーをしろというわけではありませんが、試合中にいろんなエラーをしてあらゆることを覚えてきたのも事実です。

 つまり、実戦でしか学べないことって、ノックから学ぶことと同じくらいたくさんある。グラブさばきもそう。ステップもそう。実戦の失敗こそ最上の教科書になる。試合中のエラーから学び、さらにいかに日々の練習へフィードバックできるか、ではないでしょうか」

 今回は鈴木選手の守備のこだわり、グラブのこだわりを徹底的に伺いました。次回は鈴木 大地選手を大きく成長させた中学時代のエピソードに触れていきます。(続きを読む

(取材・文=伊藤 亮


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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