大宮西vs本庄第一
鉄壁の二遊間。大宮西が守り勝ち
佐々木(大宮西)
大宮西対本庄第一の一戦だが、奇しくも両チームこの大会直前に監督が代わっている。大宮西は20年勤務した鈴木監督が市立川口へ異動し、後任には与野高校を率いていた大宮西野球部OBでもある前田氏が就任する。一方の本庄第一も須長監督が退任し、後任にはコーチとしてチームを率いていた、同じく須長監督の教え子である田中氏が就任する。互いに4月1日からの新体制という難しい状況で迎えたこの一戦、大宮西がエースの佐々木、本庄第一が左腕の権藤が先発し試合が始まる。
試合は序盤から大宮西のペースで進む。
1回表、大宮西は権藤の立ち上がりを攻め先頭の中島が四球で出塁すると、続く栄森がきっちりと送り一死二塁とする。ここで3番・中野がセンター前タイムリーを放ち幸先良く1点を先制する。
これで流れを掴んだ大宮西は、2回表に7番・永瀬の三塁打を足掛かりにし、続く佐々木が犠飛を放ち1点を追加すると、3回表も5番・岩崎がレフト前タイムリーを放ち権藤をマウンドから引きずり下ろす。
大宮西は代わったエース馬場に対しても攻め立て、二死三塁から1番・中島がセンター越えタイムリー三塁打を放ち4対0とし試合の主導権を握る。
この試合のハイライトは4回裏の攻防であった。
4点のビハインドを背負った本庄第一は、一死から3番・福田が四球で出塁すると、続く持田がセンター前ヒットを放ち一死一、二塁、さらに5番・横田も死球でつなぎ一死満塁とする。ここで、続く大久保(友)はセンター定位置へライナー性の打球を放つ。犠飛には十分な当たりかと思われた。
だが、センター中野は捕球後、非常に素早い送球で中継者ショートの中島へ送球する。中島が捕球した位置はセカンドベースの後方、距離、タイミング共にアウトにするのは難しいかと思われたが、そこから反転しキャッチャーへ一発ストライク送球でタッチアップを狙った三塁走者を刺しピンチを切り抜ける。
馬場(本庄第一)
「高校生離れしたプレー」
と試合後大宮西・前田監督も絶賛したが、このビックプレーで完全に勢いに乗った大宮西は、6回裏にも二死二塁から5番・横田にレフト前ヒットを浴びるが、今度はレフト永瀬の好返球で二塁走者を本塁で刺すと、8回表には二死二塁から、9番・村松がレフト越えのタイムリー二塁打を放ち試合を決めた。
投げては、大宮西・佐々木が中盤以降やや疲れが見えたが、コントロール重視の投球で要所を抑え完封で切り抜ける。大宮西が5対0と本庄第一に完勝し、三回戦へ駒を進めた。
まずは本庄第一だが、どこかで1点を返すことができれば、流れが変わっていたであろう。だが、その1点がこの日は遠かった。これで今年の夏もノーシードとなるが、そこは夏に強い本庄第一のことだ。このチームには経験豊富な権藤、馬場両投手がいるだけに夏までにはきっちりとチームを立て直してくるであろう。特にこの日も気迫の乙球を見せたがまた球速が増した印象のあるエース馬場の最後の夏に期待したい。
一方の大宮西だが、エース佐々木の安定感はもちろんだが、とにかくセンターラインの守備が堅い。特に二遊間は一見の価値がある。中島、村松は走者なし場合、芝生に足がかかるぐらい深いポジションをとる。このポジションを取れる二遊間は県内でそうはいない。元々、肩も強くフットワークが軽いからこそできる業なのだが、状況判断も素晴らしい。ピッチャーが投球動作に入ると、微妙にポジションを移動し打球を予測する。3回裏には一死一塁から相手のエンドランはセカンドゴロとなる。だが、刺せると見るや4-6-3で併殺に打ち取るなどこの二人には阿吽の呼吸がある。その中心である主将中島は走攻守共にハイレベルで今後も楽しみな選手だ。
最後に、田中、前田両監督についてだが、共に須長、鈴木氏の教え子ということもあり、まずはこれまでチームのやり方について大きく変えることは考えていないそうだ。むしろ、こういう状況で試されるのは選手達だ。自分達から能動的に考えて戦うことが求められる。だが、そういうことができるようだと、何よりも彼らにとって大きな財産になる。こういう危機感がきっかけで自主性を持ち夏に良い結果を残すチームをこれまで何度も見てきた。彼らの今後の戦い方に期待したい。
(取材・写真=南 英博)
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