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恩師が語るドラフト候補・佐藤柳之介(富士大)の高校時代「衝撃的な成長ぶりだった」【野球部訪問・東陵編③】

2024.04.17


富士大・佐藤柳之介

宮城県気仙沼市の私立校・東陵高校の野球部は大学などで活躍するOBを多数輩出している。現在の筆頭は今秋ドラフトの候補に挙がる富士大4年・佐藤 柳之介投手。高校時代から注目を集め、3年夏はエース左腕としてチームを宮城独自大会4強に導いた。恩師である千葉 亮輔監督に当時の印象などを聞いた。

「チームを勝たせるピッチャーになってくれ」

千葉監督が初めて佐藤の投球を目にしたのは、佐藤が中学3年生の頃。オープンスクールの際に放っていた球はスピードこそなかったものの、美しい球筋を描いていた。

ただ同期に右の本格派である佐々木 諒太投手(現・宮崎サンシャインズ)らがいたこともあり、中学での実績が乏しい佐藤は入学当初、決して抜きん出た存在ではなかった。それでも早い段階から急成長を遂げ、1年の夏休み頃には直球の球速と回転数が大幅に向上。千葉監督は「強いチームを抑えるのはこのピッチャーかもしれない」と予感した。「体が大きくなって、元々綺麗だったボールに力強さが加わった。衝撃的な伸び方でした」。期待値は一気に高まり、1年秋からは公式戦で先発の一角を任せた。

その後も順調に成長したが、「勝ち運には恵まれなかった」。好投しても打線の援護をもらえない試合が多く、公式戦で思うように勝ち星を積み上げられたわけではなかった。

どれだけ負けようと、千葉監督は「チームを勝たせるピッチャーになってくれ」と口酸っぱく伝え続けてきた。その言葉は大学進学後、体現されており、昨年の明治神宮大会初戦で上武大相手に3安打完封勝利を挙げるなど、全国大会でもチームを勝たせられる投手になった。千葉監督は「高校時代はなかなか勝たせてあげられなかったので、大学での活躍はすごく嬉しい。安田(慎太郎)監督はじめ、周りの方々に恵まれたんだと思います」と感慨深げに口にする。

後輩たちも刺激を受けており、同じ左腕の熊谷 太雅投手(3年)は「(佐藤は)左投手で球が速いので、自分もそれくらい速くなりたい」と話す。打線の中軸を担う沼田 和丸外野手(3年)も「佐藤 柳之介さんのように、全国で活躍して後輩に刺激を与えられる選手になりたい」と目を輝かせた。

佐藤がNPB入りを果たせば、東陵のOBとしては井上 純氏(元横浜など)、相原和友氏(元楽天)に次いで3人目のNPB選手となる。大学ラストイヤーのさらなる飛躍に期待がかかる。

千葉監督が「平等」を重視する理由

大学野球の舞台で奮闘する東陵OBは佐藤だけではない。高校時代は控え投手だった熊谷 蓮投手(東北工業大3年)は140キロ超の速球を投げる好左腕に成長し、恵まれた体格を持つ右腕の高橋 幸誠投手(東北学院大3年)もリーグ戦の出場機会を増やしている。

東北工業大・熊谷蓮

今春高校を卒業した代も、今春のリーグ戦開幕週で早くもスタメン出場し結果を残している今野 悠貴内野手(仙台大1年)、鴫原 琉仁外野手(石巻専修大1年)ら、楽しみな存在が多い。また大学で準硬式野球や軟式野球を選択するOBもおり、昨年は高校では4番を打っていた嶺岸 奎内野手(今春仙台大卒業)が大学軟式野球日本代表に選出された。

仙台大・今野悠貴

千葉監督は教え子たちの進路について「続けられる子は続けてほしい。草野球でも、指導者でもいいので、長く野球に携わってほしい」と考えている。だからこそ普段から、試合に出場する主力メンバーだけでなく、部員全員と平等に、全力で接している。

「高校で芽が出なくても、大学で芽が出る子がいるかもしれない。ここで花開いてくれたら嬉しいですけど、次のステージで伸びる子がいてもいいと思う。ここがピークじゃなくていいと思う。『君はレギュラーではないからもういいよ』と言ってしまうと、次のステージもなくなってしまいますからね」

そう語る指揮官は、それぞれの将来が輝くことを願って、優しいまなざしで選手一人ひとりを見つめていた。

(取材=川浪康太郎)

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この記事の執筆者: 川浪 康太郎

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