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【本日発表】議論尽きない センバツ「特別枠」の 未来は? 21世紀枠、神宮枠に加え過去には希望枠も

2024.01.26


今年は3月18日(阪神甲子園球場)から第96回選抜高校野球大会(センバツ)が開催される。このセンバツの選考は、21世紀、すなわち2001年以降、大きく変化する。

2001年の第73回大会からは21世紀枠が設けられた。一般選考枠で決まる出場校に比べると、実績はやや劣るものの、高校野球にふさわしい活動を続けてきた学校のための特別枠だ。初年度のこの大会は、安積と宜野座の2校が選ばれている。

この大会の出場校は、通常より2校多い34校だったため、一般選考の地域枠に変動はなかった。しかし、次の第74回大会は全体の出場校が32校で、一般選考枠は2校減ったため、関東と近畿がそれぞれ1減となった。

さらに03年の第75回大会になると、神宮大会枠と希望枠が新設された。神宮大会枠は、秋の明治神宮大会で優勝したチームの地区は、事前に公表されている地区ごとの出場枠に1校追加される制度だ。希望枠は、神宮大会枠で追加された地区を除く9地区の補欠校の中から、平均失点など守備力重視で選ぶ制度だ。しかし希望枠は2008年の第80回大会を最後に廃止され、21世紀枠が3校になった。

明治神宮大会についても、少し説明しておきたい。明治神宮大会は1970年に秋の大学日本一を決める大会として始まった。73年の第4回大会からは高校の部も新設されたが、地区の優勝チームで出場しているのは、お膝元の東京と、寒冷地で大会が終わるのが早い北海道、東北、北信越などであった(4地区以外でも、たまたまその年の大会が早く終わり出場したケースもある)。それ以外の地区は、原則として地区内の府県の持ち回りで、近畿であれば、該当する府県の3位ないし4位校が出場していた。そのため優勝チームも最初の方は東京、北信越、東北が圧倒的に多かった。78年は福岡県の柳川商(現・柳川)が優勝しているが、九州大会の1回戦で敗れている同校は、翌年のセンバツには出場していない。

96年から各地区の優勝チームが出場するようになったが、四国などは間に合わず大会にチームを送っていない。99年は10チームが参加する現在の形になったが、やはり四国だけでは間に合わず、四国大会の1回戦で敗れた丸亀が出場している。そして01年から、基本的に10地区の優勝校が参加する現在の形になり、翌年の優勝校の地区から神宮大会枠の適応になった。

なお、東京はセンバツで1968年以降、74年~76年、89年、90年を除き2校が出場していたが、03年から関東4、東京1で残り1枠を関東の5校目と東京の2校目を比較して選ぶ現行の制度になった。04年から中国・四国は合わせて6校から、中国2、四国2に加え3校目の比較でどちらかに1校という全体で5校に、東海も3から2に減枠された。そして今年、東海はまた3枠に戻ったが、中国・四国はさらに減枠になった。

センバツは人が出場校を選ぶ以上、異論が出ることは避けられない。22年の大会では東海地区準優勝の聖隷クリストファー(静岡)が選ばれなかったことは、かなり物議を醸した。

さらに京都国際(京都)がコロナにより大会直前に辞退を余儀なくなれたが、代わりに出場した近江(滋賀)が準優勝したことは、選考することの難しさを示している。

また、21世紀枠での出場校と一般選考枠の出場校との実力差も常に問題になる。しかし84年の第56回大会は32校中、初出場が16校もあった。そういう状況なら21世紀枠のような制度は必要ないだろうが、昨年は、36校中初出場はわずかに5校。21世紀枠の2校を除けば、3校しかない。

大会を重ねれば出場経験校が増え、初出場校が減るのは当然ではあるが、出場校の固定化も気になる。常連校になるのは彼らの努力の結果であり、称賛されこそすれ、非難されるものではない。けれども、1校でも多くの学校にとって、甲子園は現実の目標であってほしい。21世紀枠という名称や、選考の基準には議論の余地があるだろう。けれどもセンバツらしい、特徴のある学校選びはあっていいと思う。

センバツ大会は英文では「National Invitational High School Baseball Tournament」と表記されている。もちろん春の高校日本一を決める大会の権威、NHKがほぼ完全中継するなどの公共性、それに今やSNSなどで誰でも意見を発出できる状況を考えれば、出場校にはある程度の納得感は必要だ。しかしセンバツらしい特徴のある出場校選びも大切にしたい。それを成り立たせるのが特別枠であり、特別枠も時代に応じて進化していってほしい。

この記事の執筆者: 大島 裕史

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