広陵・髙尾響、外角低めへ糸を引くような直球、「分かっていても打てない」魔球<2024年のヒーロー候補たち⑩>
髙尾 響
高校生としては完成された投球だった。今年の秋季高校野球中国大会準々決勝で、広陵(広島)のエース・髙尾 響投手(2年)が、下関国際(山口)相手に、わずか3安打の完封劇を見せた。1年春から公式戦デビューを果たした将来性豊かな右腕が、手も足も出ないような投球スタイルを完成させ、今秋大きく成長した。
8回まで無四球、二塁すら踏ませなかった。右、左打者問わず、外角低めに糸を引くような直球がズバズバと決まった。伸びてホップしているのではないかと錯覚を起こすくらいにキレキレだった。最速は147キロというが、この日は130キロ後半から140キロ台前半。それでも相手打者を圧倒するに十分だった。
同じ腕の振りからのスプリットも、面白いように決まる。低めへしっかりと制球されて空振りを奪った。カットボール、スライダーに加え、110キロ前後の大きなカーブも交え、バットから快音を封じた。
1年春からマウンドを経験。今年の夏の投球を見た名将・中井監督も「高校2年の時の(広島の)野村よりも上」と高評価したほどだ。23年春夏と甲子園も経験し、センバツでは完投勝利も手にした。経験に裏打ちされた落ち着きとマウンドさばきに、ますます磨きがかけられている。
これからの課題を挙げるとするならば、内角攻めができるようになれるかどうか。完封した下関国際戦でも、打者の内角に来た球は、ほとんどが逆球。内角を狙った投球は結果的には真ん中付近に来ていた。これから、内角へ強めの直球が投げられるようになれば、投球の幅は広がり、外角の変化球も有効になる。伸びしろは大いにありそうだ。
チームの戦力としては全国トップを狙えるほど充実している。伝統校の背番号1を背負った髙尾が、優勝の瞬間、マウンドで右手を高く掲げている姿は容易に想像できる。
広陵・髙尾 響投手
【経歴】
172センチ、73キロ、右投げ右打ち
福岡県粕屋町出身。粕屋中央小では土井ジャガーズ、粕屋東中では飯塚ボーイズに所属。
【寸評】
上背こそないが最速147キロ右腕、針の穴を通すような制球力のある直球と多彩な変化球を操る。甲子園での経験も豊富な右腕
【実績】
1年春 中国大会で2試合に登板(先発1)計5回で2失点。
1年夏 広島大会では2試合(先発1)に登板し4回を3失点。
1年秋 広島大会では4試合の先発を含む5試合に登板。29回を投げ29奪三振をマークし防御率は1.86。明治神宮大会では3試合に登板して12回16奪三振で防御率0.75。
2年春 センバツでは3試合すべてに先発。防御率は1.78。海星(長崎)戦では2失点(自責0)完投勝利をマークした。中国大会では1完封を含め2試合で防御率は0.60。
2年夏 広島大会では5試合に登板。36回で46三振を奪い、失点は完投した決勝で喫した2失点のみで、防御率は0.50。甲子園では初戦で7回3失点(自責1)で勝利も、3回戦の慶應義塾(神奈川)相手に延長10回6失点(自責3)で完投負けを喫した。
2年秋 中国大会3試合に登板。24回を投げて27奪三振、防御率は1.50。明治神宮大会では初戦で星稜(北信越)に敗れた。