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【高校野球ベストシーン’23・鹿児島編】2年生コンビの活躍で、神村学園が今夏一番の劇的シーンを演出

2023.12.07


勝利を喜び合う神村学園ナイン

2023年もあとわずか。ことしも高校球界ではさまざまな印象的な出来事があった。各都道府県ごとにベストシーンを思い出してみよう。

【選手権鹿児島県大会決勝・神村学園vs.鹿屋中央】
両チームが死力を尽くした好ゲームだった。今年の鹿児島県の高校野球を語るには、避けて通れない試合だろう。7月23日、鹿児島県大会決勝。延長10回タイブレークの末に、神村学園岩下 吏玖内野手(2年)のサヨナラ3ランで8対5の勝利。夏のフィナーレを飾るにふさわしい劇的な幕切れだった。

タイブレークに突入した延長10回。両者ともに3番からの攻撃で「強気」の攻めを見せた。鹿屋中央村山 源内野手(3年)、大谷 修司外野手(3年)の3番、4番が連続三振。5回途中からリリーフ登板していた神村学園の黒木 陽琉投手(3年)が踏ん張った。その後、適時打を浴びて1点を奪われたが、3番から始まる打線を1点でしのいだと言った方が正解かもしれない。

その裏の神村学園も、3番からの打順で送る素振りも見せずに、この回からリリーフした背番号3の板敷 風哉内野手(3年)を攻め立てる。3番・秋元 悠汰外野手(3年)が四球を選んで満塁とすると、4番・正林 輝大外野手(2年)が右前適時打。二塁走者は本塁で刺されたが、まずは同点に追いついた。そして、ヒーローとなる岩下が打席に入る。

岩下はここまで無安打。内角球を詰まらされる場面が多く、内野ゴロを重ねていた。フルカウントからの内角直球。コンパクトに振り抜いた打球が、高々と舞い上がって右翼芝生席へ突き刺さった。甲子園切符をつかむサヨナラ3ラン。時折、ジャンプしながらダイヤモンドを一周し、ナインが待つホームベース上でガッツポーズした。実はその前のカウント2-2から、内角球に詰まり、力ない飛球を一塁ファウルグラウンドに打ち上げている。フェンス際の難しいところだったため、二塁手は捕球できず命拾いした。それよりも高めのコースだったが、最後はしっかり振り抜いて殊勲打にした。

大事な場面で連打を放った正林と岩下の2年生コンビは、この夏の初戦を思い返していたに違いない。決勝から2週間以上前の7月5日、川内との1回戦。8回を終わって0対1とリードされていた。22年の夏は鹿児島実の前に1対2で初戦敗退。2年連続での初戦敗退の屈辱を味わう大ピンチを迎えていた。しかし、先頭打者だった正林が左前打を放つと、続く岩下はフルカウントからの外角球を左前に運び、無死一、三塁のチャンスを作った。その後、スクイズ、適時打などで3点を奪う奇跡の逆転劇で初戦を突破していた。正林と岩下は初戦と決勝で大仕事を果たしたことになる。

その後、神村学園は甲子園でも快進撃を続け、4強まで駆け上がった。正林と岩下のコンビの活躍なしには、この成績は語れない。当然ながら、この秋からの新チームでも2人は同じく4番、5番を任され、鹿児島県で優勝し九州大会ではベスト4に入った。

来年春のセンバツでもまた、「正林&岩下」の連打で勝利をつかんでいくことだろう。

<全国高校野球選手権鹿児島県大会:神村学園8-5鹿屋中央(延長10回タイブレーク)>◇2023年7月23日◇決勝◇平和リース

鹿屋中央スタメン
(中)大坂 塁(3年)
(一)板敷 風哉(3年)
(遊)村山 源(3年)※巨人育成2位
(右)大谷 修司(3年)
(左)郡山 一心(3年)
(三)松原 琉輝(3年)
(投)谷口 優人(2年)
(捕)菖蒲 怜真(3年)
(二)山本 祥大(3年)

神村学園スタメン
(一)今岡 歩夢(3年)
(二)増田 有紀(2年)
(左)秋元 悠汰(3年)
(右)正林 輝大(2年)
(三)岩下 吏玖(2年)
(中)上川床 勇希(2年)
(遊)松尾 龍樹(3年)
(捕)品川 善琉(3年)
(投)松永 優斗(3年)

この記事の執筆者: 浦田 由紀夫

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