試合レポート

神村学園vs樟南

2023.06.01

神村学園が「1球への執念、1点への思い」伝わる勝利<鹿児島NHK旗>

神村学園vs樟南 | 高校野球ドットコム
3ランを放った岩下 吏玖

<第65回NHK旗争奪鹿児島県選抜高校野球大会:神村学園9-6樟南>◇31日◇決勝◇平和リース

 夏前最後の前哨戦は、今春・準々決勝の再戦。このときは樟南が序盤の6点差を跳ね返し、延長12回までもつれ、逆転サヨナラ勝ちだった。

 両者の実力は伯仲で、この試合も中盤まで一進一退の点取り合いが続いた。

 初回に4番・坂口 優志(2年)の犠飛で樟南が先制したが、その裏、神村学園はスクイズで同点にした。

 3回、樟南は4番・坂口の2打席連続打点となる右前適時打で勝ち越したが、神村学園は1死から連打を浴びせ、6番・岩下 吏玖(2年)が右越え3ランを放った。

 神村学園は4、5回と追加点を挙げ、点差を3点に広げ、前半は押し気味に進めた。

 グラウンド整備後の6回、樟南は7番・福元 崚馬(3年)が右越え2ランを放って1点差とし、1番・茶園 将太(3年)の強襲内野安打で同点に追いついた。

 その裏、神村学園は2つの四球で2死一、二塁とし、5番・松尾 龍樹(3年)の右翼線二塁打、6番・岩下の左前適時打で計3点を勝ち越した。

 7回以降はエース松永 優斗(3年)、8回からリリーフした今村 拓未(2年)が樟南打線の反撃を断ち、春の雪辱を果たした。

 神村学園は、春の準々決勝で延長サヨナラ負けした樟南との点の取り合いを制した。小田 大介監督は「選手たちの1球への執念、1点への思いが伝わってきた」勝利だったと振り返った。

 点をとってはとり返され、6回には同点に追いつかれる。連戦でエース松永も疲労がたまっており、守備のリズムを終盤まで作り切れなかったが「どんな形でも、恰好が悪くても、泥臭く野球をして最後に勝つ」ことだけを意識したと今岡 歩夢主将(3年)は言う。

 リードオフマンの今岡主将は5打席中4度出塁。盗塁を3つ決め、3度ホームを踏んでいる。6回、5番・松尾の二塁打で最初に勝ち越しのホームを踏んだのも今岡主将だった。

 リーダーの強気のプレーがナインに乗り移る。松永は7回、初めて三者凡退で切り抜け、8、9回は2年生・今村に託す。いずれも3人ずつで打ち取り、樟南に最後の反撃を許さなかった。

 絶対的なエースはいない。4番も日替わり。過去の神村の中でも「力は下」と小田監督の評価は厳しい。ただ「勝ちたい情熱」は過去の先輩以上のものを秘めている。

 準々決勝で対戦した鹿児島城西には、昨年8月の地区大会で大敗。準決勝の鹿児島実は昨夏初戦で敗れた相手。鹿児島城西鹿児島実、そして樟南と、この1年悔しい敗戦をした相手に勝って今大会を制した。勝つことへの「本気の挑戦」(小田監督)の成果だったのは間違いない。

 夏にも再び勝てる保証はどこにもない。まだまだ力は発展途上。だが彼らの「勝ちたい情熱」に無限の「伸びしろ」を確信させた今大会だった。

(取材=政 純一郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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