試合レポート

昌平vs大宮東

2023.05.04

昌平が最速139キロ2年生左腕・富士を攻略し春26年ぶりの関東へ!

昌平vs大宮東 | 高校野球ドットコム
昌平・佐藤 立羽

<春季高校野球埼玉県大会:昌平5ー2大宮東>◇3日◇準決勝◇県営大宮

 ゴールデン・ウイーク(GW)に入り快晴の日、多くの観客が入った[stadium]県営大宮球場[/stadium]、準決勝の第1試合は昨秋王者のAシード・昌平vs最速139キロの2年生左腕・冨士 大和投手を擁する大宮東との一戦である。

 先発は、大宮東が富士、一方の昌平は背番号20の右腕・佐藤 勇心投手(3年)が登板し始まる。

 先制したのは昌平。4回、この回先頭の金子 晄也内野手(3年)が右翼線へ二塁打を放ち出塁すると、2死後、5番・菅沼 航平外野手(3年)が右前適時打を放ち、昌平が1点を先制する。

 対する大宮東の反撃は5回であった。この回先頭の松本 健慎外野手(3年)がセーフティーバントを決め出塁すると、続く川合 海人捕手(3年)とのところでバスターエンドランを決め左前安打を放ち無死一、二塁とする。1死後、昌平ベンチは佐藤勇から佐藤 立羽投手(2年)へスイッチする。大宮東は9番・富士がきっちりと送り2死二、三塁とするが後続が倒れ無得点に終わる。

 すると、昌平は6回にも、この回先頭の好調・金子が「見せ球のつもりが甘く入ってしまった」と、試合後大宮東・富士も悔やんだ甘く入った変化球を見逃さず「狙い球とかではなく反応で打てた」と、右翼席へソロ本塁打を放ち1点を追加する。

 その後は昌平が押し気味に試合を進め、大宮東が防戦一方も富士が7、8回と2度の2死満塁を抑えるなど、粘りの投球を見せ2対0のまま最終回へ。

 迎えた最終回、試合が激しく動く。

 昌平は9回、先頭の甲斐 陸斗外野手(3年)が中前へポトリと落ちるヒットを放つと、続く金子が一塁線を破る二塁打を放ち、無死二、三塁とする。1死後、4番・齋藤 陽貴捕手(3年)は大宮東ベンチに申告敬遠され、1死満塁とすると、続く菅沼が中前適時打を放ちまず1点、続く代打・渡辺 暁斗内野手(2年)が右前2点適時打を放ち、試合の大勢は決したかと思われた。

 だが、大宮東はその裏、5回途中から登板し最速141キロの直球を武器に大宮東打線を完全に封じてきた昌平の2番手・佐藤立を攻め、この回先頭の内浦 康平外野手(3年)が三ゴロエラーで出塁すると、続く桑野 倖成内野手(3年)も中前安打を放ち無死一、二塁とする。ここで4番・恩田 愛斗外野手(3年)が中前適時打を放ちまず1点、さらに代打・横島 大暉内野手(2年)も左前安打を放ち無死満塁とする。

 これにはたまらず、昌平ベンチもエース左腕・渡邊 俊輔投手(3年)を投入するが、一度火がついた大宮東打線の勢いはなかなか止まらない。6番・松本が犠飛を放ち5対2とすると、さらに続く川合も左前安打を放ち、1死満塁と長打で同点というシチュエーションを作る。だが、反撃もここまで。後続が併殺に倒れ万事休す。

 結局、昌平大宮東を振り切り5対2で勝利し関東大会へ駒を進めた。

 まずは大宮東だが、エース冨士はこの日強打の昌平打線を相手に2ケタ安打を許すも要所を締め最少失点で粘り強く投げていた。打線も最終回はさすがの迫力であったが、悔やむべくはエンジンのかかりが遅かったことか。

 「今日は変化球の制球がダメだった。ホームランを打たれた場面はあとは夏までに球速を上げていきたい。中4日空き疲労自体はある程度抜けたんですが、今日は序盤から飛ばして終盤体力が少し落ちてしまったので、その部分も夏までに克服したい」と、反省の弁も次を見据える富士。むしろ、ここまでベスト8以外ほぼ1人で投げており、今大会準決勝進出の立役者に違いない。いずれにせよ、これで夏をBシードで迎える大宮東。

 「まだ速球の練習を夏に向けてやり始めたところで勝負は夏なので。富士はもう1ランク上を目指してほしい。最終回は、執念めいた負けたくないというものが出て敗戦はしましたが収穫」(飯野監督)と、夏へ向け更なる打線の強化と昨夏経験も今大会ケガの影響で出遅れている主戦・森川 晟投手(3年)が戻ってくれば、富士への負担も減る。また、一段チーム力が上がった状態を見せてくれるであろう。

 一方の昌平は、これで春の関東大会は26年ぶり2度目の出場となる。

 「富士君は良かった。後半勝負かなと思っていたんですが、うまいこと攻略できて自信になる。佐藤立も昨秋から比べるとだいぶ成長しているが、最終回は今後へ向け良い経験。関東を含め、今後へ向けチグハグした攻撃面を修正したい」(黒坂監督)

 大宮東の好投手・富士に対し、12安打を放ち攻略して見せるなど、さすがの破壊力。まだケガ人などもおり、万全の状態ではないが、それでも夏のAシードが確定した。「投手陣には常日頃から強く言ってきて、特に佐藤立には強く言ってきた。それで泣いたこともあった。こちらも本人のためにと思って言っているんですが、そんな投手なので、賭けだっんですが、今日は良く投げてくれた。彼が頑張っているのでコースを絞って自分も打たなきゃと良い結果が出た。最後は相手も勢いがあって大変でした。渡邊俊に関しては長いので、今日ピンチからだったんで球は来てなかったですが、コースは間違えないので」と、普段からピッチ上の監督として選手への叱咤激励から継投タイミングまで任されている齋藤。

 元々、1年生秋時点で最速140キロの投手ながら昨秋の正智深谷戦で打ち込まれ、その後も苦しんだ投手だけに、彼の好投に関しては感無量だったよう。彼の存在がある限り、昌平は今後もブレることはないであろう。

(取材=南 英博

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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