試合レポート

文星芸大附vs青藍泰斗

2023.05.03

文星芸大付の伝統メニューで打撃開花、3安打4打点と驚異の8番打者の活躍で関東へ

文星芸大附vs青藍泰斗 | 高校野球ドットコム
タイムリーを放った文星芸大付・伊藤蓮太

<春季高校野球栃木県大会:文星芸大附9ー4青藍泰斗>◇3日◇準決勝◇清原

 栃木を代表する強豪・文星芸大附青藍泰斗の一戦は、9対4で文星芸大附に軍配が上がった。決勝進出を果たし、神奈川県で開催される春季関東大会(20日開幕)への切符をつかんだ。

 初回から自慢の強打がさく裂した。1番・大塚 和央内野手(3年)と3番・曽我 雄斗内野手(3年)のヒットでチャンスを作ると、4番・小林 優太内野手(3年)の犠牲フライで先制に成功。その後、3対3の3回には、相手のエラーからチャンスを作り、2死満塁の場面で8番・伊藤 蓮太外野手(3年)のレフトへの適時打で2点を追加。5回にも追加点を入れるなど、前半5回までで10安打6得点と主導権を握った。

 後半も勢いそのままに得点を重ねた文星芸大附が9対4で青藍泰斗を下し、関東大会と決勝の切符をつかんだ。

 結果、12安打を放って9得点。スタメン全員がしっかり広角に打ち分けていた。特に逆方向に対しては手打ちではなく、しっかりと全身を使って痛烈な打球をはじき返した。対戦した青藍泰斗長嶋 樹哉投手(3年)が「嫌な打線だった」と話すように、厄介な打線だという印象を受けた。

 指揮官の高根沢監督は「自分のバッティングで、強い打球を打つことだけを心掛けている」と、特に3番・曽我と、8番・伊藤は光るものを感じさせた。

 曽我は1安打と結果だけ見れば目立った活躍ではなかったが、内容が良かった。姿勢を下げてきちんと軸足に体重を乗せたところから、思い切りよくバットを振り抜いた。待ち方が良く、しっかりと自分のポイントまで呼び込んでから、下半身を含めて全身を使ったスイングで痛烈なライナーを広角に放った。アウトになったものの、しっかり捉えた打球ばかりで、技術の高さを感じさせた。

 伊藤はこの試合で3安打4打点と結果を残した。やや前のめりになる傾向がみられたが、しっかりとバットを振り切ることができ、引っ張ることはもちろん、多少差し込まれても、逆方向にもしっかりヒットも放って見せた。公式戦では初めて3安打を記録し「ピッチャーが頑張っていたので、ストレートに絞って無心で打った」と振り返った。

 この冬はすり足にフォームを変えて、突っ込む癖とタイミングを改善。そのなかで、ライナーを意識することで、チームで徹底する強い打球を体現した。さらに、「3月のオープン戦で左投手に苦戦したことで、チーム全体で始めました」という、全て逆方向に打ち返す練習「全球逆打ち」というメニューで広角に打ち分ける技術を磨いた。

 伊藤は文星芸大附の伝統メニュー「キャッチ」と呼ばれるティー打撃の成果もあり、「左手で球をつかんで押し込む」感覚を覚えたことでも、広角に強い打球が打てるようになった。青藍泰斗との試合でも広角に強い打球をはじき返したが、「練習の成果だと思います」と日々の鍛錬に手ごたえを感じていた。

 投手陣も複数投手それぞれ個性があり、投打の戦力は十分整っている。決勝、さらに関東大会の戦いぶりにも注目したいところだ。


186センチの大型二刀流に強打のスラッガーなど ポテンシャルの高い青藍泰斗は夏も要注目だ

文星芸大附vs青藍泰斗 | 高校野球ドットコム
ホームランを放った青藍泰斗・長嶋樹哉

<春季高校野球栃木県大会:文星芸大附9ー4青藍泰斗>◇3日◇準決勝◇清原

 文星芸大附の前に敗れた青藍泰斗だが、先発したエース・長嶋 樹哉や4番・馬場 空飛は体格がしっかりしており、プレーでもポテンシャルの高さを感じさせた。

 長嶋は5回で降板したが、130キロ後半を計測する直球には勢いがあった。186センチ、94キロと恵まれた体格を生かした角度を付けた投球も魅力だが、現在の最速は138キロと少し物足りない。足を上げる際に身体を捻るトルネードを採用したことで、5、6キロの球速アップに成功しているが、長嶋本人も「物足りないです」と満足していない。

 理想とする投手はエンゼルス・大谷 翔平投手(花巻東出身)、さらに「緩急を使って試合を作れる」DeNA・今永 昇太投手(北筑出身)を挙げる。ピッチングに緩急差を付けて、理想の2人に近づく意味でも、直球の球速向上を至上命題に掲げ、股関節や肩甲骨といった関節の柔軟性に課題を感じ、夏に向けて改善に努めていく姿勢だ。

 打っては2回にホームランを放つなど、投打で能力の高さを感じさせた。「失点しても自分のバッティングで取り返せるのは持ち味です」と打撃に対しても自信を持っている。栃木にいた大型二刀流は、夏までにどんな選手に成長するのか楽しみだ。

 4番・馬場は1安打に終わったが、その1本が左中間のフェンスにワンバウンドで届く二塁打。183センチ、83キロの体格を生かして逆方向にも長打を飛ばせるパワーを見せつけた。テークバックは取らない代わりに、バットのヘッドを投手方向に傾けてトップに入り、鋭くバットを振り抜く。スイングスピードが速く、あまり大きな穴が無いため、130キロ前後であれば差し込まれることなく、しっかりと打ち返せていた。

 長嶋同様、馬場も能力の高さを感じさせた。その他にも青藍泰斗には実力ある選手が多かった。関東大会の切符は惜しくも逃したが、夏も再び大暴れしてくれることを期待したい。

(文=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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