Column

熊本中央ボーイズの元プロ監督 越境入学には「3年間やり抜く覚悟」を問う

2023.03.11

 競技人口減少の影響もあり、野球強豪校が県をまたいで選手をスカウトに行くことが増えたと聞く。選手にとって選択肢が増えることは良いことであるが、その一方で越境入学にはリスクを伴うのもまた事実だ。親元を離れ高みを目指すか、それとも地元に残って甲子園を目指すか。進路選択は、いつの時代も難しいテーマの一つだ。

 設立11年目にして、6度(春2回、夏3回、ジャイアンツカップ1回)の全国大会出場を経験した熊本中央ボーイズ・大津一洋監督は、西武や南海でプレーした経験を持つ元プロ野球選手だ。1期生から毎年県外へ選手を送り出し、ソフトバンク育成・桑原 秀侍投手(神村学園出身)、巨人育成・吉村 優聖歩明徳義塾出身)といったプロ野球選手も輩出しているが、選手の進路選択にはどんな考えのもとでアドバイスを行っているのだろうか。

越境入学には「3年間やり抜く覚悟」を問う

熊本中央ボーイズの元プロ監督 越境入学には「3年間やり抜く覚悟」を問う | 高校野球ドットコム
熊本中央ボーイズ・大津 一洋監督

 熊本中央ボーイズでは、選手と保護者が話し合った上で最終的に進路を決めるといい、指導者から「この高校にどうだ」と勧めることはないという。選手の性格や過去の例を踏まえて、慎重にアドバイスをしていくスタンスだ。

「最終的には親御さんと選手が決めることが大前提ですが、もちろん指導者としても高校で頑張ってもらいたい思いはあります。ここ行きなさいとはっきりと言うことはないですが、果たしてこの子があの学校に進学して活躍できるのかなと、いつも考えます。
 県外に進学することも、ご両親と話し合って決めたことであればもちろん止めません。ですが、辞めて帰ってくることを心配して、慎重に助言はしてあげています」

 助言の内容は、チームの状況や選手層の厚さ、レギュラーになるために必要なことなどだ。大きな夢を思い描く選手には、しっかりと現実も伝え、3年間やりぬく覚悟を問うのだ。

「はっきりと止めることはないですが、チームは今こんな状況で、毎年こんな選手が入ってくるよ。相当頑張らないとレギュラーは取れないよと、そこはしっかりと伝えます。それでも3年間やり通す強い気持ちがあるのかと。それでも『ある』というのであれば、覚悟を決めて頑張ってこいと背中を押しますね。

 現在では関東に出る選手も出るようになりましたが、帰ってきた選手は一人もいません。選手と親御様が決めたことにただ『わかった』というのではなく、覚悟を問うのはとても大事なことだと思っています」

 それでも中には、覚悟を問うまでもなく、強豪校進学に背中を押す選手もいる。体力的、技術的に優れていることはもちろんだが、強烈なキャプテンシーや劣勢にも屈さない「心の強さ」も持つ選手は、大きな期待を込めて送り出す。

「チームを引っ張っていける選手、キャプテンじゃなくても試合を引っ張っていける選手は、県外に出てもやっていけるかなと感じます。例えば、横浜高校に進学した津田 啓史くん(三菱重工East)はその一人です。関東や関西からもすごい選手がくると思うけど、『よし、頑張ってこい』という感じで。心配よりも、やってくれるだろうという期待の方が大きかったです」

 津田 啓史内野手は、横浜高のレギュラーとして活躍し、社会人野球3年目の今年はドラフト候補にも名前が挙がる。

 技術だけでなく、心の成長を見極めることも、これから指導者に求められることになるだろう。

(記事=栗崎 祐太朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

【春季四国大会逸材紹介・高知編】2人の高校日本代表候補に注目!明徳義塾の山畑は名将・馬淵監督が認めたパンチ力が魅力!高知のエース右腕・平は地元愛媛で プロ入りへアピールなるか!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.26

【奈良】智辯学園が13点コールド!奈良北は接戦制して3回戦進出!<春季大会>

2024.04.26

【春季奈良県大会】期待の1年生も登板!智辯学園が5回コールド勝ち!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.22

【九州】神村学園、明豊のセンバツ組が勝利、佐賀北は春日に競り勝つ<春季地区大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!