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宮城大弥なども選出 世界とつながるポニーだからできる唯一の取り組みが面白かった

2023.02.28

宮城大弥なども選出 世界とつながるポニーだからできる唯一の取り組みが面白かった | 高校野球ドットコム
那須勇元事務総長

 2017年以来となるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の開催で、世界で野球に対しての熱量が高まっている。日本で言えば、エンゼルス・大谷 翔平投手(花巻東出身)や、パドレス・ダルビッシュ 有投手(東北高出身)が参加するなど、世界各国でメジャーリーガーが出場することが、拍車をかけている。

 侍ジャパンの1人、高卒3年目となる宮城 大弥投手(興南出身)は、U-15やU-18に選出されているが、他にも代表経験がある。それはポニーの日本代表だ。

・世界の高い壁が成長を促す

 世界に組織を持っているポニーでは、ワールドシリーズを毎年開催しており、その年のポニー世界一を決めているが、特徴的なのは2歳ごとでカテゴリーを分けて開催していること。そのため、参加国はカテゴリーごとに代表チームを編成して、世界一を目指していく。日本代表チームが複数存在するのは、他にはないポニーならではの仕組みだ。

 協会の事務総長を務める那須勇元氏によると、「2023年は9歳、10歳でも初めて代表チームを組みます。選手にとっては日の丸を付けるチャンスなので、モチベーションになっていると思います」と新たな試みを明かしつつ、国際大会の重要性を説いた。

 もちろん代表チームを組む以上、セレクションを通じて選手を決めるため、誰もが日の丸を背負えるわけではない。それでも年々、セレクションを受ける選手たちが増えている。世界に組織を持っている唯一の団体であるポニーに対して、世界を意識している選手が増えていることは間違いない。

 協会としても「子どもたちの成長を見守る」という理念を実現するために、できる限り選手たちに世界を体感できるように、あらゆる施策を打っている。補助金を出すことで選手たちをサポートしたり、1か国から2チーム編成することを認めて、1人でも多くの選手にチャンスを与えたりと、現代にあわせたベストな形を作り続けている。

 日本が世界一の座についたのは2013年にポニーのカテゴリーで達成したのが最後。2019年にはコルトで世界3位までたどり着いたが、優勝には手が届かなかった。低反発バット、ピッチスマートによる球数制限などはもちろんだが、アジアのライバルとなる韓国と台湾の存在が大きいという。特に台湾は年齢の問題もあり、「対等とはならず難しい」と那須事務総長は話す。その一方で「勝ったチームが強いので、勝つためにどう工夫するか。この考える習慣が、今後の野球人生で有利に働くと思います」と高い壁だからこそ、乗り越えたときに得られるものが多いことを期待して、選手たちを送り出している。

 選手たちも世界のスケールの大きさを感じて、「また行きたい」と挫折するどころか心惹かれる選手は多い。中学卒業後に留学を選択する人も過去にはいたという。自己形成の年代で世界を知ることは、やはり影響力が絶大のようだ。

・最も大事なのは人としての器を広げること

 出場した選手たちに多大な影響を与える国際大会だが、何も競技性の違いだけが選手たちの心を動かしているわけではない。協会が最も大事にしている「人としての成長、幅を広げる」ことが選手たちを大きく変え、成長に結びつけている。

 日米親善交流大会が象徴的な取り組みである。世界大会とは違い、参加したい選手が出場できることになっている。毎年、大人数で米国に向かい、試合を通じて交流を深めている。加えてあらゆるイベントを実施して、グラウンド外でも交流する機会を作る。競技性を大事にした世界大会とは違い、国際交流を通じて人としての懐を広げている。

「特に積極性、度胸は変わると思います。学校で習ったばかりの英語を使って、会話をすること自体、度胸がなければできません。でも自分の意思を何とか伝えようと必死にやり続けると、帰国する頃には単語を並べたり、身ぶり手ぶりを交えたりして、自分を表現するんです。人として成長して帰れますし、向こうの文化や生活に触れることで、英語に対する勉強の意識も変わって、点数が上がっている選手がいます」

 日米親善交流大会では、出場する選手の家庭にホームステイすることも醍醐味になっている。親離れの年代になる思春期でも同じ年代の米国人と生活することで、恥ずかしがることなく、普段どういった生活をしているのか、目の前で見聞きできるのだ。

 那須事務総長は「色んなところに好奇心が湧いているからこそ、若年層での国際交流は大きい」と日本にいたら経験できない文化に触れることで新たな発見ができ、成長に繋がっているという。ホームシックというようなことになる選手はほぼいない。「とにかく楽しいことが盛りだくさんで、野球に夢中になれる期間だと思います」と充実した交流だと改めて主張した。

 世界大会は4月に各地でセレクションが始まり、選抜チームに入ることがファーストステップだ。その後、5月に各地の選抜チームが集結する広澤克実杯で結果を残しつつ、アピールをして、6月から3年ぶりに開催となるアジアチャンピオンシップに出場する日本代表を目指す。

 日米親善交流大会は8月の開催を予定。日の丸を背負って、各カテゴリーの選手が世界と戦う。貴重なチャンスを1人でも多くつかみ、世界と繋がっているポニーという組織をいい意味で利用して野球人生だけではなく、長い人生においても財産となるような経験を積んでほしい。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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