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オリックス・宮城などを輩出したポニーリーグ 貫く勝利と育成の両立で人気上昇中

2023.01.18

 ポニーリーグでは、協会として球数制限、木製バットの使用など、同じ中学硬式野球界のなかでも、なかなか見られないあらゆる取り組みを進めている。

 「国の宝」である青少年の成長を守る。元プロ野球選手である広澤克実氏が理事長を務める協会が掲げる選手ファーストの精神に、多くの野球人が心惹かれて、加入チーム、選手が増え続けている。

 ポニーリーグにとっては嬉しい事実ではあるものの、野球界全体は依然として、競技人口の減少は大きな課題である。

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オリックス・宮城など輩出のポニーリーグ 元プロ・広澤克実理事長が進める球数制限に現場の反応は?

プロ野球選手を育てる機関ではなく、人として成長させたい

オリックス・宮城などを輩出したポニーリーグ 貫く勝利と育成の両立で人気上昇中 | 高校野球ドットコム
広澤克実理事長

 東京五輪を通じて多くの競技が脚光を浴び、子どもたちが選ぶスポーツは確実に増えた。少子化で子どもたちが減るなかで、野球を選ぶ確率が下がっている。野球界にとっては厳しい現実だ。

 ただ、元プロ野球選手であるとともに、元アスリートだった広澤理事長は「昔は野球かプロレスしか見るチャンスがなかったので、時代だと思います」と話すと、続けて野球だけが持つ他にはない魅力を語る。

 「野球というスポーツは、教育という観点において他のスポーツより秀でていると思うんです。ですので、私たちはプロ野球選手を育てる機関ではなく、野球を通じて人として成長させることを大事にしています」

 1人1人に役割が与えられ、チーム一丸として戦う野球の競技性を通じて、人間教育をさせていく。広澤理事長はポニーリーグでの3年間を通じて、技術以上に人としての器を育てることを掲げる。だからこそ、「勝利に執着した戦い方や、昭和のような厳しい指導はあってはならない」と強く主張する。

 間違えてはいけないのは「勝利を目指すな」と言っているわけではない。勝負事をやっている以上、選手たちは勝利を目指して練習をすると同時に、勝利を目指すことが日々の練習のモチベーションにもなっている。

 そんな選手たちを指導する大人たちが、必死になりすぎてしまうのが危ないのだ。
 「現場は勝利を目指して頑張るのはもちろんなのですが、それで練習のやりすぎやメンバーの固定化や、厳しい指導などやりすぎてしまうのが、トラブルに繋がってしまうので、協会でチェックして選手を守ることが課題だと思っています」

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ポニーリーグを選んでよかったと思われるように

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ポニーリーグ出身者である平良海馬と宮城大弥

 選手たちのために楽しく、伸び伸びとできる環境をポニーリーグ全体で整える。選手ファーストの雰囲気は、きっと高校野球に向かっていくうえで自信を持たせてくれるはずだ。そんな疑問をぶつけると、ある人の話を持ち出しながら、中学時代の過ごし方の重要性を語る。

 「ヤクルトの高津(臣吾)は大学時代も2番手でしたけど、スカウトに『面白い』と思われたからプロ入りして活躍しています。だからいつ成長するかわからないと思うので、せめて中学の時は全員にチャンスを与えられるように協会全体で取り組んでいます」

 成長するタイミングは人それぞれだ。大学や社会人でピークが来ることだってあるだろう。でも野球を続けなければ、その瞬間は訪れることはない。ただ中学から試合に出場機会がなく、大会でもプレーするチャンスがなければ、その先も野球を続ける選手が減っても仕方ない。野球の面白さを感じることが減るからだ。

 だからこそ、「野球人生が始まったばかりの15歳からチャンスが与えられないことがないようにしています」と協会全体で取り組む。リエントリー制度などが導入されているが、それはまさに広澤理事長の話す、チャンスを与えるための取り組みといっていい。

 球数制限、木製バット、リエントリー制度など数多くの取り組みを導入する先進的なポニーリーグだが、そこには一貫したポニーリーグの指導理念がある。「国の宝」である青少年の成長を守るために、これからも協会全体で取り組んでいくだろう。

 広澤理事長も「これまでポニーの理念を守って運営をしてきたことで、共感してくれる人が増えて、多くのチームや選手がポニーを選んでくれています。だからこそ、今後もより良いものを提供して、『ポニーで良かった』と思ってもらえる3年間にすることが大事になると思います」と話した。

 多感な中学生にとって、人間形成の土台ができるという意味においても、3年間は大事だ。その3年間に勝利ばかりを追求する短期的なものばかりではなく、選手たちの人生を見据えた中・長期的な指導ビジョンを持って育てていく。肩・肘をはじめとした健康を守ることはもちろん、野球の楽しさを味わう機会を均等に作ることや、野球を通じて考える習慣を作ることは、何かプラスになるだろう。

 また、こうした取り組みを通じてオリックス・宮城 大弥投手(興南出身)や西武・平良 海馬投手(八重山商工出身)、阪神・梅野 隆太郎捕手(福工大城東出身)などがNPBで活躍しており、成果は目に見える形でも残ってきている。今後もポニーリーグは指導理念のもとで、多くの選手たちを育て上げ、球界を盛り上げてくれることは間違いなさそうだ。

広澤 克実
一般社団法人 日本ポニーベースボール協会 理事長
1984年のドラフト会議でヤクルトから1位指名を受けて入団。その後、19年間で巨人、阪神と渡り歩き、1893試合出場。2018年に現在の役職に就く。

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(記事:田中裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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