1976年夏全国Vの桜美林に復活の兆し 秋は失策0。守り勝つ野球で2季連続8強
桜美林エース・吉田 啓人
2023年の東京の高校野球では桜美林に期待したい。2022年は夏の西東京大会ベスト8、秋も都ベスト8入りを果たし、東京都の21世紀枠推薦校にも選出された。
夏4回、春6回の甲子園出場経験があり、1976年夏には全国制覇を達成した。現在の東京都高野連に所属するチームで夏の甲子園で優勝経験があるのは日大三、帝京、早稲田実業と桜美林の4校のみ。東京の高校野球を牽引してきたチームだが、2002年夏以来甲子園から遠ざかっている。
チームを率いるのは1976年夏に主将で甲子園Vメンバーとなった同校OBの片桐 幸宏監督だ。前チームは春まで「苦しかった」と語るが、現2年生も主力として活躍した選手が多く、「経験を積むことができている」と今年のチームには期待している。
前チームは春まで0勝から夏は8強
桜美林・片桐 幸宏監督
前チームは春まで1勝もできていなかったが、夏は準々決勝まで勝ち上がった。のちに甲子園出場を果たす日大三にコールド負けを喫したが、課題だった守備を強化し、攻撃につなげる野球が光った。
その守備力は今年のチームも健在だった。秋の大会では失策は0。守り勝つ野球で勝ち進んだ。エースで主将を務める吉田 啓人投手(2年)も「守備に助けられることが多かった。野手陣が意識高く練習している姿を見ていたので、信頼して投げることができた」と力強く語る。
外野手はヒット性の当たりをアウトにしたり、長打を許さないポジショニングも光った。2番・左翼手で副主将を務める佐々木 健人外野手(2年)は前チームでの春季大会で出た反省が生きていると語る。「秋、春は送球ミスが負けに繋がりました。夏の大会まで、守備は一から作り直そうとチームで決めて、キャッチボールから意識を変えて取り組んでいました」と一球一球に集中力を高め、本番でも1歩目の動きだしが変わったことを実感した。
内野手も前チームから主力だった3番・遊撃手の松村 健吾内野手(2年)、2番・二塁手の香川 太佑内野手(2年)の二遊間を中心に、「どんな形でもアウトを取る」という姿勢で泥臭く堅守を貫いた。
秋の失策0の成果に、片桐監督も「内野手はゲッツーを取れるところは確実に取ること」と守備面の課題は次のステップに進んでいる。
日大三との再戦で「力の差」を実感
秋の準々決勝では日大三に延長10回に勝ち越された
打線は「あと1本」が出なかった。夏の再戦となった秋の都大会の準々決勝、日大三との試合では、先制するも延長10回、2対3の接戦で逆転負けを喫した。桜美林打線は再三好機を作ったが1点を取ることの難しさを実感したという。
「一つ勝つということは大変。あと1本。だいたいそんなもんですよ。でも、その1本が力の差。そういうところで力を出せるチームにならないといけない」
高校野球の頂点を知る片桐監督にとっても永遠の課題だ。スコアブック上では適時打1本の差。しかし、その1本の裏にある準備、練習量、実力には大きな差があり、勝利か敗北か、という雲泥の差になることを実感した。
12月9日に21世紀枠の最終候補9校が発表され、そこに桜美林の名前はなかった。来春センバツ出場は叶わなかったが、「そういう形で評価されたということは喜ばしいこと」と間違いなく士気は上がった。「とにかくひたむきにやるしかない。どの学校もやるのだから、ここまででいいというところはなく、とことんやらないと」と片桐監督は力を込める。
秋の経験を糧に桜美林ナインは古豪復活を目指し、オフシーズンの練習に取り組んでいる。
(記事=藤木 拓弥)