試合レポート

大阪桐蔭vs仙台育英

2022.11.22

大阪桐蔭 山田の逆転二塁打にエース・前田の161球の力投で決勝進出

大阪桐蔭vs仙台育英 | 高校野球ドットコム
2番山田の2点適時打で大阪桐蔭が逆転した

<第53回明治神宮野球大会:大阪桐蔭5-4仙台育英>◇21日◇高校の部・準決勝◇神宮

 秋になって代変わりしても日本の高校球界のトップクラスの力がある大阪桐蔭(近畿・大阪)と仙台育英(東北・宮城)の一戦は、大阪桐蔭が後半に底力を発揮して決勝進出を決めた。

 大阪桐蔭の先発、主将でエースの前田 悠伍投手(2年)が立ち上がりから力強い球を投げ、仙台育英の1番・橋本 航河外野手(2年)を三振に仕留めたが、2番の山田 脩也内野手(2年)が速球を弾き返し二塁打で出塁。2つの死球で2死満塁となった後、6番・寺田 賢生内野手(2年)の中前安打で山田が還り1点を先制する。

 2回表、仙台育英の攻撃で問題のシーンがあった。2つの四死球と失策で無死満塁となり、2番・山田は三ゴロ。三塁手の岸本 真生内野手(2年)が本塁に送球して1死満塁かと思われた。その後、審判が三塁手の岸本が三塁ベースにタッチしたと判定。そうなると、本塁はタッチプレーとなり、大阪桐蔭の捕手・南川 幸輝捕手(2年)はタッチしていないので、仙台育英に1点が入った。ところが、大阪桐蔭の岸川は三塁ベースにタッチしていないと主張する。微妙ではあったが、映像を見る限り、タッチしていないように思える。

 誤審はあってはならないが、審判も人間なので、間違えることはある。ただこのシーンで気になるのは、三塁手がベースにタッチしたと判断したのなら、塁審はそこでアウトのジェスチャーをするべきではなかったのかということだ。三塁がアウトかセーフかで、捕手の行動も変わってくる。実際、三塁からの送球を捕手が足をホームに触れた状態で捕球した時点で、球審は本塁アウトを宣告している。誤審かどうかよりも、審判の宣告の仕方の方に考えるべき問題があると思う。

 いずれにしても2回を終えて仙台育英が2点をリードする。大阪桐蔭は3回裏に2死一、二塁から当たっている3番・德丸 快晴外野手(1年)が中前安打を放ち、1点を返す。

 仙台育英は優勝した夏の甲子園同様に、投手を細かくつなぐ。先発は左腕の仁田 陽翔投手(2年)だったが、4回途中から右腕のエース・高橋 煌稀投手(2年)が登板する。高橋は5回裏に3四球で2死満塁のピンチを招くが、大阪桐蔭の6番・村本 勇海内野手(2年)を遊飛に打ち取る。

 大阪桐蔭の先発・前田は5回で95球と球数が多いが、しり上がりに調子を上げ、攻撃面でも大阪桐蔭が押し始めた。そして6回裏、大阪桐蔭は途中出場の7番・長澤 元外野手(2年)の中前安打と2つの四死球で1死満塁のチャンスをつかむ。ここで仙台育英は投手を高橋から左腕・田中 優飛投手(2年)に交代する。大阪桐蔭の2番・山田 太成外野手(2年)は代わったばかりの田中から左中間を破る二塁打を放ち2人が生還して逆転する。さらに4番・南川のやや浅い中飛で三塁走者がタッチアップして1点を追加する。8回裏も9番・前田の二塁打と4番・南川の中前安打で大阪桐蔭が1点を追加する。

 大阪桐蔭の前田は8回を終えて133球を投げている。それでも大阪桐蔭の西谷浩一監督は、「バランスよく投げていました」と言い、続投させる。仙台育英の須江航監督も終盤の前田の投球について、「さすがのピッチングでした」と語っている。

 初戦、9回裏の猛攻で逆転勝ちした仙台育英は、この試合も9回表に意地を見せる。1番・橋本の内野安打と2番・山田の四球の後、3番・湯浅 桜翼内野手(1年)が中前適時打を放った後、4番・齋藤 陽外野手(2年)の中犠飛で1点差に迫る。緊迫の場面になったが、途中出場の住石 孝雄内野手(2年)が三振に倒れ、大阪桐蔭が逃げ切った。

 仙台育英大阪桐蔭にあと1歩のところまで届いたが、須江監督は、「1球の精度。勝負の勘。フォーカスの当て方が違います」と語る。大阪桐蔭とこの時期に試合をしたことで、仙台育英も力をつけていくだろう。来年の春か夏、「彼らの最初の戦いは…」と、この試合のことが語られるかもしれない。そんな予感のする戦いであった。

 一方、勝った大阪桐蔭の前田はこの試合、161球を投げた。西谷監督は前田について、「状態は良くなったけど、修正しながら粘り強く投げました」と評価する。大阪桐蔭は2年連続で決勝戦に進出する。この大会は今まで、2年連続で優勝したチームはない。大会連覇で歴史を作るか、注目の一戦になる。

(取材=大島 裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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