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悔しさは4年後に花開くのか、創成館の甲子園5安打男がドラフトを待つ

2022.10.20

悔しさは4年後に花開くのか、創成館の甲子園5安打男がドラフトを待つ | 高校野球ドットコム
高校時代の野口 恭佑(創成館)

 懐かしい名前に目がとまった。間近に迫った10月20日のドラフト会議を前に、大学生のプロ志望届一覧を見ていたときだ。福岡六大学野球連盟に所属する九州産業大・野口 恭佑外野手(4年=創成館)の名前に、4年前のあのシーンが頭に浮かんだ。

 打球が左翼手の頭上を襲った。甲子園がドッと沸く。後方に下がる左翼手の足がだんだんとスピードを増す。打球を追ったのは創成館(長崎)の野口だった。無情にも、その打球は野口の頭上を越えた。塁上にいた智辯和歌山(和歌山)2人の走者が一気に本塁へ向かった。1点リードで迎えた延長10回裏、まさかの逆転二塁打でサヨナラ負けを許した創成館は、センバツ4強入りを逃した。創成館担当として甲子園の記者席にいた私の頭のなかで、勝利の原稿の構想が吹っ飛んだことを覚えている。

 2018年のセンバツだった。8強に進んだ創成館は、準々決勝で智辯和歌山と互角の戦いを演じた。全国の強豪相手に打ち負けなかった。そのなかで創成館5番の野口は、なんと5打数5安打3打点(1四球)の大活躍。3回戦の智辯学園(奈良)戦でスタメン起用に応え4打数2安打だった野口は、この日も好調で2試合で9打数7安打。嵐のように安打を重ねていた。延長10回表に自身の安打をきっかけに1点勝ち越しに成功。4強入りは目前だった。しかし、その裏に自分の頭上を打球が越え、チームはサヨナラ負けした。

 「思った以上に打球が伸びました」

 野口はそう悔しがった。その打球を放ったのは、智辯和歌山の6番・当時2年生だった黒川 史陽内野手だ。そう、2019年にはドラフト2位で楽天入りするスラッガーだ。1学年下のプロに指名された強打者の打球をまざまざと見せつけられた。ちなみにこの年の智辯和歌山の3番には林晃汰内野手(現広島)が座っている。智辯和歌山は14安打を放って勝利したが、創成館はそれを上回る16安打を放っていた。そのうち、野口は5本をマークしていたことになる。

 前年秋の九州大会を制していた創成館は明治神宮大会で「金星」を挙げている。根尾 昂投手(現中日)、藤原 恭大外野手(現ロッテ)などを擁して2018年春夏連覇を成し遂げた大阪桐蔭(大阪)と準決勝で対戦し、7対4で打ち勝った。野口はその試合、1番左翼でスタメン出場し1安打を放っている。

 創成館は18年夏も甲子園に戻ってきた。悔しさを晴らすために4強入りを誓っての聖地入りだった。しかし、初戦で創志学園(岡山)に完封負けを喫してしまう。そう、そのときの創志学園のエースは、現在、阪神で活躍する西 純矢投手だ。当時2年生ながら剛速球を武器に売り出し中で、創成館は西に16三振を喫する完敗。野口も2打数2三振で途中からベンチに退いている。何もできずに最後の夏が終わった。

 あれから4年。野口はたくましくなってプロ志望届を提出した。九産大では1年からレギュラーを獲得し、大学選手権の舞台にも立ち、ジャパン候補にも選ばれた。大阪桐蔭のドラフト1位コンビ、智辯和歌山の強打者、創志学園の剛腕投手と対戦して、泣き笑いした野口。プロとしての「先輩」たちに続くことはできるのか。運命の20日にその吉報を待つ。

(記事=浦田 由紀夫

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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