Interview

高2で最速152キロ右腕・松石信八 球速が一気に伸びた「ヒップファースト・ジャブ・ストレート」の指導

2022.06.25

 高校通算71発を誇る花巻東(岩手)・佐々木麟太郎内野手や、大阪桐蔭のセンバツ優勝の立役者となった前田悠伍投手、「広陵(広島)のボンズ」こと真鍋慧内野手など、逸材が目白押しと評判の高校2年生世代。早くも黄金世代の到来が囁かれるが、その中で現時点で世代最速を記録するのが、藤蔭(大分)の松石信八投手だ。

 173センチ、65キロと体は決して大きくないが、1年夏の選手権大分大会で146キロを計測すると、秋季大会ではダイハツ九州スタジアムで152キロを計測。入学から右肩上がりの成長を続け、23年ドラフト候補へ名乗りを上げた。

心身ともにまだまだ発展途上の大器

高2で最速152キロ右腕・松石信八 球速が一気に伸びた「ヒップファースト・ジャブ・ストレート」の指導 | 高校野球ドットコム
藤蔭・松石信八

「コントロールと球速には少しは自信がありますが、まだ真っ直ぐも簡単に当てられてしまうんで。打たれない真っ直ぐというか、球の切れとか、伸びとかを意識しています」

 世代最速の称号を持つ速球派右腕も、グラウンドを離れればそこは普通の高校2年生。こちらの質問に、言葉を絞り出しながら苦笑いを浮かべて口を開く。5月の連休前には、部で禁止されている眉毛の手入れを行ったことで竹下大雅監督に大目玉を食らい、心身ともにまだまだドラフト候補には及ばないというのがチーム指導者の総意だ。

 だが1年秋に150キロを超える球を投げた身体能力に加え、器用に外野守備をこなすさまや高い打撃センスは誰もが認めるところで、竹下監督もその将来性には大きな期待を寄せる。

「野球センスはやはり良いものを持っています。1年生の時は経験もなかったので、思い切り投げる『1年生らしさ』だけでやっていましたが、一冬越えて制球力もついてきました。まだまだ精神的な甘えもありますが、春季大会も状態は良かったので、夏に向けて考えさせる時間も作りながら鍛えています」

 佐賀県出身の松石は、小学校2年生から少年野球チームで野球を始め、城南中時代は硬式野球チームの佐賀フィールドナインに所属。ここから本格的に投手としての練習に取り組み始めた。

 入団当初から決して目立つほうではなく、中学1年時の球速は110キロにも満たない程。中学2年生になっても試合でなかなか結果を残せなかったというが、中学3年生になる直前に大きな転機が訪れた。

[page_break:「ヒップファースト・ジャブ・ストレート」で142キロ到達]

「ヒップファースト・ジャブ・ストレート」で142キロ到達

高2で最速152キロ右腕・松石信八 球速が一気に伸びた「ヒップファースト・ジャブ・ストレート」の指導 | 高校野球ドットコム
藤蔭・松石信八

「『ヒップファースト・ジャブ・ストレート』という指導を受けて、120キロ台だった球速が一気に135キロまで上がりました。『ヒップファースト』はお尻から体重指導をしていくイメージで、『ジャブ』はボクシングのジャブのようにグラブを捕手の方へ突き出します。最後もボクシングのストレートのイメージで右腕を強く振るというもので、この3つを一連の流れの中でできるように練習すると、どんどん球速が上がっていきました」

 中学3年を前に135キロを計測した松石は、コロナ禍の緊急事態宣言明けの6月には公式戦で142キロを計測し、九州北部では「知る人ぞ知る好投手」として知られるようになったという。その評判を聞きつけて、九州のみならず関東地区からも声がかかったが、最終的には「勢いのある雰囲気」に惹かれて藤蔭への進学を決意。2018年、2019年と2年連続で夏の甲子園に出場したことも、もちろん決め手の一つだった。

「練習の見学に来た時の雰囲気とか、先輩たちの取り組む姿勢とか、そういったところが良いなと思い決めました。また自分が入学する前に2度も夏の甲子園に出場していて、(藤蔭の)ユニホームをテレビで見ていたので。自分も甲子園で野球がしたいなと思い、藤蔭へ行こうと思いました」

 松石は本当に「2005年世代」を代表する投手の一人なのか。2023年ドラフト候補に相応しい投手なのか。

 この夏の投球でその真価を問われることになるが、松石は自身の評価よりも「3年生との最後の大会を、万全の状態で迎えることだけに集中したい」と素直な思いを口にする。

「やっぱり先輩たちと甲子園に行きたいです。そのために仕上げた状態で夏を迎えて、真っ直ぐも変化球も打たれないように、もっともっとキレを上げて、とにかく打たれない投手になりたいと思います。上で野球を続けたい気持ちもありますが、具体的な目標はまだ考えていません。今はとにかく全力で夏に戦うことだけを考えています」

 課題は多いとは言え、ゆっくり絞り出す言葉からは、一歩ずつ着実に階段を登っていることを感じさせる。まずはこの夏、どんな実力を示すのか注目していきたい。

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