大学準硬式界の雄・中央大が五冠達成 人間力で関東の頂点に
25日に幕を下ろした明治神宮野球大会。大学四冠を目指した慶應義塾大との熾烈な戦いを制した中央学院大の初優勝で、2021年の学生野球の公式戦はすべて終了した。2022年も白熱した試合が繰り広げられることを楽しみにしたいが、明治神宮野球大会に先立ち、大学準硬式界も最後の公式戦が行われていた。
各リーグの精鋭10校による秋の関東No.1決定戦
中央大の得点シーン
今年で43回目となる関東地区大学・社会人準硬式野球王座決定戦(以下、関東王座)。毎年、関東地区に所属する5リーグの優勝校の計5チームと、社会人から3チームの総勢8チームが参加。唯一大学と社会人が真剣勝負をする大会として、毎年11月頃に開催されてきた。
ただ今年は新型コロナウイルスの蔓延に伴い、社会人からの出場は見合わせることとなり、各リーグの上位2チームの合計10チームで秋の関東最強を決める戦いが行われた。
強豪10校が集まる中で、大会前より注目が集められたのが、東都大学準硬式で優勝を飾った中央大だ。
3月に関東地区に所属する全チームを対象とした関東選手権での優勝をはじめ、2021年シーズンは四冠(春秋リーグ戦、東都大学野球新人戦、関東選手権)を達成している。言うなれば大学準硬式野球界の雄とも呼べる存在として、大学準硬式界を牽引している名門校だ。
そんな中央大の五冠達成を阻もうと、中央大とともに9月の全日本大学準硬式野球選手権大会に出場した明治大や神奈川大などが出場。11月3日から大会が始まると、1度雨による順延がありながらも大会は進み、11月10日にはベスト4が出揃った。
優勝候補・中央大は、準決勝で9月の清瀬杯に出場した国士舘大世田谷と対戦。試合は中央大4番・佐藤 龍之介(能代松陽出身)が4打点、さらに5番・伴野 匠(東海大菅生出身)が3打点と大暴れ。国士舘大世田谷を貫禄の5回コールド勝ちで、決勝進出を決めた。
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好投を見せた中央大1年生右腕・田中 駿佑
大学五冠、そして大会三連覇へ最後の刺客となったのは、全日本大学準硬式野球選手権大会に出場した神奈川大。明治大、群馬大荒牧との接戦を制して決勝まで勝ち上がってきた。
「勝つために調子が良い投手を使いました」と決勝は初先発となる1年生右腕・田中 駿佑(大崎出身)が立ち上がりを攻め立てられる。神奈川大6番・小林優也(日本文理出身)の打球をショートがエラー。ランナーが1人生還し、追いかける立場で試合が始まった。
ただ「(田中の)ボールは悪くなかったので、焦りはありませんでした」と森 康太朗主将(静岡出身)が話すように、王者は慌てない。直後に3番・佐藤の犠牲フライで同点。さらに6番・川満剛(糸満出身)の一打で勝ち越しに成功する。
3回にも追加点を奪い、試合の主導権まで中央大が握ると、7回には4年生・足立裕紀(八戸学院光星出身)にもタイムリーが飛びだす。中押しで神奈川大を突き放すと、守っては「森さんに指摘してもらって、下半身主導で投げられるようになった」とマウンドの田中が尻上がりに調子を上げてスコアボードに0を並べる。
最後は1番・羽渕 達哉(報徳学園出身)のホームランなどで勝負あり。9対1で中央大が神奈川大を下し、歓喜の輪を作った。
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優勝した記念で集合写真を撮影する中央大
大学五冠という形で2021年シーズンを終えた中央大。主将として1年間チームをまとめてきた森は、「ホッとしましたし、終わったんだと思って、勝手に身体が動いていた」とマウンドで待つ1年生・田中へ駆け寄ったときの思いを振り返った。
中央大は全日本大学準硬式野球選手権大会も、もちろん優勝を目指して戦った。しかし、結果はベスト8で敗退。悲願の日本一を達成できず「リーグ戦も辛かった」と指揮官である池田監督も、秋季リーグの厳しさを思い返した。
しかし、選手たちは厳しい状況を跳ね除け、四季連続でリーグ戦を制した。「試合に出ている選手たちがチームを引っ張るつもりで、先頭に立って行動したことでまとまった」と主砲・足立は話すが、森主将は池田監督の教えが活きていると考えている。
「監督からは、『浮き沈みがある中で、沈む時こそ人の真価が問われる』と話してもらったことがありました。全日大会が終わった後は、まさにその言葉が支えになって『この状況だからこそ、頑張らないといけない』と思ってやれたからこそ、優勝できたと思います」
チームを指揮する池田監督の「社会でも通用する、一流の人を育てる」という指導方針を掲げ、日頃から選手たちに厳しく接する。それは箸の持ち方1つから話をするそうだが、野球を通じて人間教育をするために、凡事徹底の精神で野球も生活も指導にあたっている。
神奈川大との決勝でも試合前に、学生委員が大会準備をしている様子を見させ、大会運営に携わる裏方の頑張りを目に焼き付けさせた。そのうえで「言葉だけではなく、行動でも感謝の思いを表現しよう」と些細なところから指導し、人として成長をさせる機会を与え続けた。
そういった成果もあってか、OBは大企業へ就職する人も多く、「就職に関しては抜群です」と池田監督も胸を張っているところでもある。
文武両道をするのが前提のため練習時間に限りがあるものの、就職先の充実や指導方針に心を惹かれ、花巻東や浦和学院、さらには山梨学院に大崎といった高校野球界の名門校出身の逸材が中央大準硬式の門を叩いてくる。
[page_break:名門主将たちが語る準硬式だけの魅力]名門主将たちが語る準硬式だけの魅力
最後の挨拶をする中央大・森 康太朗主将
高い志を持った選手たちが集まり、強豪校としてあり続ける中央大。来年以降も楽しみではあるが、最後に卒業する4年生の森主将と足立に、準硬式野球の魅力は何なのか聞いた。
「高校時代、甲子園を逃し、大舞台で活躍できずに準硬式を選んで、関東で優勝したり、全国を目指す環境がありました。もし準硬式野球を志す選手がいれば、もっと活気ある準硬式野球界になれると思うので、よければ入ってください」(足立)
「メニューもそうですが、1人1人が責任を持ってやることが多いので、1人の人間として成長することを求めるのであれば、是非準硬式野球を選んでもらえればと思います」(森)
硬式野球にも負けず劣らずの白熱の試合が繰り広げられている準硬式野球。硬式野球で継続する自信がない球児、野球継続を迷っている球児は、一度選択肢に入れて、考えてはどうだろうか。
(記事:田中 裕毅)