明聖vs翔凜
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延長11回の死闘を制したのは明聖 エース・荒張が161球の熱投
明聖先発の荒張勇紀
どちらも予選では打線が機能して県大会の切符を掴んだ。ワンランクあがった県大会でも同じように打線が爆発するかがポイントだと戦前は考えられたが、試合内容は両エースの意地の張り合いになった。
初回に先取点を奪った先攻の明聖は2回、エース・荒張勇紀が自らのミスなどで2点を与えてしまい、逆転を許す。さらに4回には翔凜1番・林悠雅の内野安打で3点目。序盤は1対3と明聖不利の試合展開で、中盤に入る。
ただ翔凜の先発・大山龍之介は担ぐような投げ方でボールに勢いを付ける分、反動の影響でボールが安定しない。特にランナーを出すと制球が乱れるところがあり、明聖もチャンスは作っていた。
そんな中、6回に3番・稲生隼人のヒットをきっかけに3点を加えて逆転に成功して主導権を握ったように思われた。
しかし8回に、1点を明聖エース・荒張が与えてしまい、試合は延長戦へ。終盤から両投手が何度も得点圏にランナーを背負うも、気迫のこもった投球でピンチを凌ぐ息詰まる内容となっていく。
ただ翔凜の大山の不安定な投球を明聖は突き、11回に二死満塁から4番・山崎 航が押し出しの四球を選び、これが決勝点。エース・荒張は11回161球の熱投でチームを勝利に導いた。
11回を投げきった荒張は野球人生でもここまで投げたのは初めてだったとのことだが、「スタミナは問題なかったですし、相手投手に負けたくないと思っていました」と精神、体力ともにまだまだいけるところだったようだ。たゆまぬ練習の成果の1つだろうが、スタミナだけが練習を通じて荒張の成長を支えたわけではない。
明聖はこの夏、練習試合で2勝13敗と大きく負け越したという。このなかで荒張自信を持っていたストレートが「打者にとっては打ちやすいことに気が付きました」と打たれたことで、武器の真っすぐの改善が必要だと悟った。
そのために着手したことはフォームの改善だ。特に下半身の体重移動を見直して大会に向けて準備を進めていくと、次第に真っすぐで打者の手元に差し込むことが増え、鈍い当たりが増えてきたという。その辺りから「手ごたえを感じ始めました」と自信を深め始めた。
この試合は真っすぐを軸に、変化球を混ぜた緩急漬つけた投球が光った。長い手足を上手く畳んで投げることのできるまとまったフォームをしており、効率的に身体を使いこなしている印象を受けた。その証拠に、11回投げて四死球1つのみと制球力も安定している。まだ線が細いため、パワー不足だと感じられるが、筋力がついてくれば、面白い投手ではないだろうか。
「やるからには優勝を目指しているので、この勝利で勢いに乗りたいです」と次戦へ向けての想いを語った荒張。次戦も粘り強い野球を見せられるか。
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ガッツポーズする翔凜4番・石井隆太
ハイタッチを交わす明聖バッテリー
ハイタッチを交わす翔凜ナイン
(記事=田中 裕毅)