Interview

元阪神の父に持つ履正社出身の大型捕手・関本勇輔が日大を選んだ理由【後編】

2021.09.08

 部員190人を抱えるマンモス大学として知られる日本大学。過去には全日本大学選手権で優勝2回、準優勝5回と輝かしい実績を持つ。さらに真中 満氏や村田 修一氏、現役には長野 久義京田 陽太など数多くのプロ野球選手を輩出している。

 今年は春季リーグ戦で2部優勝、入れ替え戦も勝利して秋より東都大学野球の1部リーグに復帰する。伝統校の復活の兆しを見せている最中だが、そこに一躍買っているのが、2021年より監督に就任した片岡 昭吾氏だ。

 2年後の2023年に迎える創部100年も見据えて、コーチ陣も一新するなど現状の打破に加え、新時代を築こうとしている。その新時代の中心となり得る未来の担い手が今年も日本大学の門を叩いてきた。

 その中の1人・関本勇輔の野球人生の始まりから履正社での2年間を前回は振り返った。今回は主将として牽引した高校野球最後の1年間、そして現在にスポットを当てていきたい。

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父は元阪神。補欠も覚悟した履正社出身の大型捕手・関本勇輔【前編】

仲間たちに支えられた最後の1年

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関本 勇輔(履正社出身)

 先輩から引き継いだ自分たちの代では、主将という重責を任されるようになる。プレッシャーを感じることは多々あったが、「全員が意識を高くもって、真摯に野球と向き合ってくれたおかげでチームになれました」とチームメイトの協力あって、まとまることが出来たと振り返る。

 そんなチームメイトの存在が関本を支えた瞬間があった。それは練習自粛となった2020年のオフシーズンから春先のことだった。

 秋は近畿大会ベスト4まで勝ち進み、選抜出場を決めた履正社。だが緊急事態宣言の影響で全体練習は禁止となる時期があった。この期間は関本の野球への情熱を冷ますことになってしまった。
 「当たり前のようにできていた練習ができなくなって、少しずつ熱量が下がって、野球への思い入れが薄まってしまったんです。自分のなかでは『これじゃいけない』とわかっていたんですが、野球から気持ちが離れてしまって『このまま終わってしまうんじゃないかな』と思ってしまったんです」

 ベンチ入り、レギュラー獲得ができない苦しさを乗り越えた関本であっても、新型コロナウイルスによる空白の数ヶ月は多大な影響を与えていた。そんな関本を救ったのがチームメイトだったのだ。

 「練習が出来るようになることが決まって、モチベーションは戻ってきていたんですけど、実際にグラウンドで野球を楽しむ仲間の姿に凄くびっくりしたんです。それを見て思ったんです。『何やってんだろう。今の気持ちのままじゃあ皆に迷惑をかけるな』って。そこから気持ちを奮い立たせて、また情熱を注ぐことが出来ました」

 高校野球最後の試合は星稜との甲子園交流試合。4番・キャッチャーで出場した関本は、5打数2安打1打点。守備では盗塁を3つ刺すなど、攻守で存在感を見せて勝利に貢献した。この結果には「勝てて良かったですけど、1試合だけでも甲子園で出来ることに嬉しさと寂しさがありました」と最後の公式戦を振り返った。

[page_break:激しい競争を勝ち抜く]

激しい競争を勝ち抜く

元阪神の父に持つ履正社出身の大型捕手・関本勇輔が日大を選んだ理由【後編】 | 高校野球ドットコム
関本 勇輔(履正社出身)

 その後のドラフトでは志望届を提出するも指名漏れ。「まだレベルが足りなかった」と現実を受け止め、大学で確実にプロの世界に入るためにさらなる飛躍を誓った関本。夢のプロ野球選手になるべく、現在は日本大学で研鑽を重ねることを選んだ。

 「190人という大きな組織で、もまれながら熾烈な競争をするなかで成長したい」という進学理由で伝統校へ足を踏み入れた。日本大学のキャッチャー陣は現在、津原瑠斗日大三出身)や兼子将太朗習志野出身)といった名門校出身の選手が揃う。そういった選手たちからスタメンマスクの座を奪おうと、グラウンドでは闘争心を燃やし続ける日々を過ごしている。

 しかしグラウンドを離れれば、気さくにチームメイトと笑顔で話をする大学1年生の顔を見せる。また人生初の1人暮らしには「これまでやっていなかった洗濯とかをしないといけないので、改めて母親のありがたさを感じています(笑)」と野球と同様にまだ新しい生活に慣れないことが多く、悪戦苦闘気味だ。

 そんな関本のバッティングで評価されているのは、見極めと力強い打撃だ。履正社の名将・岡田監督と、チームによって磨かれたと謙遜をするが、この2つのポイントについて解説をしてもらった。

 「見極めについては、リリースの瞬間で判断をしています。ポイントを近づけてしまうと、真っすぐに差し込まれるので、ポイントは前に置いていました。あとはチームメイトに相手投手のボールがどんな軌道なのか事前に教えてもらって、イメージをもって打席に入ることを大事にしていました。
 力強い打撃については、右中間をセンターだと自分の中で捉えて打っていました。そうすれば開く癖は抑えられるので。それでインコースに来たら引っ張ってファールで良いかなと。見逃しをすると、相手バッテリーの思うつぼだと思うので、積極的に振るようにしています」

 そしてキャッチャーとしては遠投127メートルを誇る強肩を活かしたスローイング。特に二塁送球は最速1.82秒を計測する。握り替えはまだ課題としているところらしいが、好タイムを出すために意識をしているのが、ステップの踏み方だ。
 「捕球する前に左足を前に出してあげて半身の態勢を作るんです。それでボールを横で見ながら、キャッチする。その時に左足に体重を乗っていれば、自然と右足を左足のところまで踏み出すことができます。その時に出来た勢いを使ってあげれば、自然と投げられます」

 夢のプロ野球選手になるために、「まずは1軍に上がって中心選手になれるようになりたいです」と目標を語った関本。

 入学してすぐに1軍のメンバーに帯同してチャンスをもらったが、負傷して春リーグは2軍で過ごした。片岡監督は「もっとアピールしてほしいと思いますが、ここからの過ごし方が大事ですね」と関本へ注文を出す。

 190人も部員がいる日本大学では、アピールをしなければ、試合はもちろん、ベンチに入ることも簡単ではない。しかし、その緊張感は関本が求めていたもので、わかっていたことだ。

 これまで数多くの壁にぶつかっては、両親や仲間に支えられて乗り越えてきた。今度も仲間たちからの刺激を多く受け、さらなる成長を遂げることが出来るか。伝統校・日本大学の未来の正捕手候補を目指す関本のライバルとの熾烈な争いは始まったばかりだ。

(記事=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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