甲子園優勝の智弁和歌山。新チームも強力。優勝捕手、140キロ超え2枚残り、大型チームの予感
岡西 佑弥、渡部 海、武元 一輝
21年ぶり3度目の甲子園優勝を果たした智辯和歌山。元プロの中谷仁監督の就任により、練習内容の中身を改革した。猛練習というより、ボール回しなどの基礎基本を徹底とした練習、自主練習を多くして、選手の個々の能力を伸ばす手法を取った。そして全体練習となれば、全国のライバルを意識し、ワンプレーを突き詰め、実戦力を高め、うまくなる予感しかない練習が行われていた。そんな智辯和歌山は、22年度も強力なチームということはお伝えしておきたい。
まず正捕手・渡部 海の成長が著しい。U-15代表を経験した好捕手は1年生から経験。捕手出身の中谷監督に捕手としてのイロハを叩き込まれ、幾多の試合を経験し、技術面、精神面で大きく成長した。
打者の裏を欠くリード。スローイングタイム1.8秒台を叩き出す強肩で、次々と盗塁を試みる走者を刺し、渡部の良さが生きたのは準決勝の近江戦だっただろう。5回裏、一死一塁で近江の2番・西山 嵐大の犠打を素早く処理して二塁へ送球し、併殺を完成させたプレー。
試合が膠着し、後半戦を仕掛けたい近江の反撃の芽を摘む見事な送球だった。
6回表、智辯和歌山は2点を追加し、完勝につなげた。決勝戦では特大の本塁打。大会では打率.400で終えることができた。一瞬の気の緩みがあれば、一気に流れを持っていかれる甲子園の舞台をマスクをかぶって経験できたことはかなり大きい。現在、和歌山は新人戦が行われている。すぐ秋の公式戦を迎える智辯和歌山にとってタイトなスケジュールになるが、渡部の成長を考えると、公式戦100試合分の経験をこの甲子園で手に入れることができた。
19年に捕手・東妻 純平がプロ入りしているが、高校時代の東妻と比べても攻守でスケール感があるので、十二分に高卒プロ入りも狙える選手ではないだろうか。
また、左のスラッガー・岡西 佑弥も恵まれた体格を活かし、鋭い打球を次々と飛ばす。まだ本領を発揮していないが、対応力が大きく高まると、かなり怖い存在になりそうだ。
投手では、塩路 柊季も石見智翠館戦で好投を見せた。上背はそれほどないが、体を効率よく使った投球フォームから繰り出す140キロ中盤の速球、スライダーのキレは新チームでは攻略困難。安定した活躍が期待できる。
そして、甲子園で最速148キロをマークした武元一輝。22年の智辯和歌山の浮沈はこの男にかかっているのではないか。そう思わせるほどの大器だ。石見智翠館戦では威力抜群の速球を見せてくれたが、まだフォーム、制球もまだまだ未完成だ。とはいえ、今年のエース・中西 聖輝、プロ入りした小林 樹斗、立教大で活躍する池田 陽佑と比較しても、彼らを上回るポテンシャルを持った選手といえる。
さらに打撃を見てもスイングが鋭く、今年のレギュラー選手よりも見栄えはする。ただ、試合に勝つための貢献度が高いプレーができる選手にはまだ見受けられなかった。
精神面、技術面で成長を果たし、中谷監督が認める柱となるか注目をしていきたい。
その他、和歌山大会で活躍を見せたセンス抜群のプレーヤー・小畑 虎之介、世田谷西シニア時代から評判だった大型スラッガーの青山 達史、秋ではベンチ入りしていた好遊撃手・坂尻 翔聖(2年)も、秋から活躍を見せてくれそうだ。
全国制覇を決めた3年生の姿勢、メンタリティを学び、22年も高校野球をリードする存在となるのか、注目をしていきたい。
(記事:河嶋 宗一)