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史上初4強全てが近畿勢 躍進目立った近畿地区6校の魅力

2021.08.28

史上初4強全てが近畿勢 躍進目立った近畿地区6校の魅力 | 高校野球ドットコム
左から池田(大阪桐蔭)、中西(智辯和歌山)、山田(近江)、森下(京都国際)、前川(智辯学園)、阪上(神戸国際大附)

 「近畿の高校野球のレベルが上がったと思います」

 明徳義塾を率いる名将・馬淵監督が、智辯学園との試合が終わった後、近畿勢の躍進ぶりについて語ったコメントだ。

 103回の歴史がある中で、史上初となる準決勝4校すべてが近畿地区の学校となった。近年の夏の甲子園優勝校を見ても、近畿のレベルの高さは窺い知れる。そこで今回は近畿地区6校の魅力を改めて振り返っていきたい。

智辯学園(奈良代表)

 

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左から小畠一心、山下陽輔、西村王雅、前川右京

ポイント:強力打線とWエースの安定感

 準決勝には26年ぶりに進出することになった智辯学園。今年も伝統あるバッティングの破壊力は凄まじい。

 プロ注目スラッガー・前川 右京が小坂監督の目には「中距離砲」というタイプ別をされているが、今大会2本のホームランを放つ活躍ぶりで打線を牽引している。その前川とともに強力打線の中心に座るのが4番・山下陽輔である。ホームランこそないが、繋ぎの4番として活躍している。

 Wエースは左の西村王雅、右の小畠一心の2人だ。
 130キロ台後半のキレのある真っすぐと多彩な変化球を持つ西村投手。小坂監督からは「打者のタイミングを外すことに関しては天性の部分がある」という緩急自在の投球が光る。

 もう1人の小畠投手は「選抜の広島新庄戦から伸びてきた」という安定感抜群の投手。140キロ中盤のストレートを見せながら、ツーシームといった小さく動く変化球を巧みに使って打たせてとるリズムの良い投球が持ち味である。

京都国際(京都代表)

 

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森下 瑠大(京都国際)

ポイント:強力バッテリーを中心とする

 夏の甲子園は初出場ながら、ベスト4まで勝ち進んでいる急成長株のチームである。その躍進を支えるのは、森下 瑠大平野 順大の2年生投手とキャッチャー・中川 勇斗の強力バッテリーだ。

 左の森下は、130キロ中盤と鋭く変化するスライダーを巧みに使って相手打者を抑える技巧派左腕である。初戦・前橋育英戦では1対0での完封勝利を飾り、2013年の高橋 光成(現埼玉西武ライオンズ)以来となる2年生投手による1対0の完封を飾った。

 右の平野は準々決勝・敦賀気比戦で今大会初先発となった。140キロ中盤を計測するストレートには伸びがあり、準々決勝で対戦した敦賀気比大島 正樹は打席から見て「高めのボールには力があった」とストレートの質の高さを評価した。

 この2人の手綱を握る3年生・捕手の中川は、二塁送球が手動での計測で1.71秒を計測した記録がある。元々の肩の強さもあるが、捕ってから投げるまでが素早く滑らかであることも大きい。

 また打っては中軸を担い、前橋育英、二松学舎大付戦と2戦連続でホームランを打つ能力がある。コンパクトな打ち方だがパンチ力ある打撃で、打線を牽引する。

智辯和歌山(和歌山代表)

 

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徳丸 天晴と中西 聖輝

ポイント:投打ともに選手層が厚い

 相手チームの参加辞退に伴って3回戦から登場することになった智辯和歌山。投手陣ではプロ注目の最速147キロ右腕・中西 聖輝が大黒柱にいる。初戦となった高松商戦では9回二死までで3失点だったが、打者1人に対して平均で4.1球しか投じない制球力の高さも光る。

 また準々決勝で先発した塩路 柊季は自己最速144キロ、石見智翠館戦では3番手で登板した武元 一輝は148キロを計測するなど力投派投手の2年生が2人いる。さらに2試合続けてリリーフ登板している伊藤 大稀に、ベンチ入り唯一のサウスポー。高橋 令とバリエーションが豊富な顔ぶれになっている。

 野手はプロ注目スラッガー・徳丸 天晴が柱である。高校通算40本を超える主砲は甲子園で2戦終わって3打点という結果を残し、4番としての活躍を見せている。

 その徳丸に加えて準々決勝・石見智翠館戦でホームランを放ち、祖父が髙嶋 仁名誉監督という髙嶋 奨哉。2試合で打率.500の好調な2番・大仲 勝海が引っ張る。


近江(滋賀代表)

 

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山田 陽翔

ポイント:必勝パターンの投手陣とバリエーション豊かな攻撃

 主力の投手陣は山田 陽翔岩佐 直哉の2枚看板となるが、この2人の安定感が素晴らしい。
 3試合すべてで先発を務める山田は、140キロ中盤を計測する真っすぐに、130キロ台のスライダー、フォークと落差の鋭い変化球で三振を取れる本格派投手だ。それだけでなく打者としても中軸を任せることが出来る実力がある。

 準々決勝の神戸国際大付戦では「あのホームランを大きかった」と多賀監督も称賛したバックスクリーンへのホームランを打っている。

 そして「しんどい終盤は任せよう」ということで、3年生・岩佐が7回を目安にマウンドに上がる。下半身主導のフォームから伸びのある真っすぐを投げるのが岩佐の特徴である。落差の大きい変化球も持ち合わせており、奪三振能力は高い。

 打線では、大会途中から調子を上げて4番に昇格した新野 翔大がホームランを放つ。さらに「ラッキーボーイ的な存在です」という明石 楓大らがバントなどの小技と足を使った攻撃を展開するバリエーションの豊富さでベスト4まで勝ち上がってきた。

神戸国際大付(兵庫代表)

 

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西川 侑志と阪上 翔也

ポイント:阪上の復活劇と攻撃陣が活発

 チーム史上初のベスト8まで勝ち上がった原動力は、プロ注目の阪上翔也の復活劇が大きい。
 選抜の北海戦は肘の痛みの影響で、思うような投球ができずに終わった。そこからは治療に専念して投球は制限したが、夏の兵庫大会に間に合わせ、140キロ中盤のストレートを叩き出した。変化球も130キロ台のスプリットも光り、甲子園では三振の山を築いた。

 打っても3回戦・高川学園でホームランを放つなど二刀流としての活躍を果たした。

 他にも3回戦・長崎商、準々決勝・近江戦でホームランを放った西川 侑志。初戦の北海戦で二塁打を3本放ち、来年の注目野手へ躍り出た山里 宝といった実力ある野手陣で4試合18得点を記録した。

大阪桐蔭(大阪代表)

 

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花田旭、池田陵真、松浦慶斗、宮下隼輔

ポイント:経歴、実力ともに実力者揃い

 最後は2回戦で近畿のライバル・近江に敗れた大阪桐蔭。優勝候補の筆頭格にあげられるほどの充実の戦力が揃っていた。

 投手陣はサウスポー・松浦 慶斗が大黒柱である。最速150キロを計測すると言われる剛腕で、既にプロ志望を明言している。近江戦で先発した竹中 勇登は、140キロ台の真っすぐを含め安定感抜群の投手として、選抜後から急成長を遂げた。

 そんな2人だが、松浦はカル・リプケンU12、竹中U15経験者と中学時代からの実績がある。

 野手では走攻守の3拍子揃う池田 陵真主将を筆頭として、初戦の東海大菅生戦でホームランを放った花田 旭。小学生の時には中日ドラゴンズジュニアに選ばれた宮下隼輔など経歴と実力を兼ね備えた選手層の厚さが光った。

 6校の魅力をそれぞれ見てきた。どの学校も投打ともに高いレベルで両立している。総合力が高いことが共通していることだ。だから大会期間中でもスタメンオーダーの変更や、試合途中での交代など選手を固めずとも、試合ができるメンバーが揃っているから、大会でも勝ち上がっていけるのではないだろうか。

(記事:田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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