00年以降から夏7回、10年連続県ベスト8。戦国千葉でも夏に異常な強さを見せる木更津総合の秘密

山下 輝(木更津総合-法政大)
戦国千葉と呼ばれるほど激戦区。その中で、近年、最も実績を残しているのが木更津総合ではないだろうか。
2003年夏の甲子園出場から、計夏7回、センバツは2回(木更津中央時代含めると3回)の甲子園出場だ。2012年以降、10年連続ベスト8以上、独自大会を含めると計8回の県優勝を決めている。この夏も明豊を破って話題となった専大松戸相手に延長13回の激闘を演じている。千葉といえば、秋、春、夏ごとで勢力図がガラッと変わる。その中で夏にこれほどまで安定した強さを発揮する木更津総合は脅威的だ。
なぜ木更津総合は夏に強いのか?その理由の一端を知るべく法政大の山下 輝に話を聞いた。
自主練習が大きなカギ
木更津市出身の山下は岩根西中時代にKボールの選抜チームである千葉ファイターズに選ばれ、優勝を経験。甲子園で活躍する地元の強豪・木更津総合に憧れ、進学を決断する。
中学時代は投手だったが、投手、野手の両方を行うと、負担がかかるため、しばらくは野手に専念する。打撃でも結果を残し、山下は1年夏からベンチ入りしたが、戦国千葉と呼ばれるほどの緊張感のある戦いだった。
「とにかく最初は緊張でやばかったですね」と振り返る。ドラフト候補に挙がる峯村 貴希(日本大)とバスで一緒だったが、移動中はずっと無言だった。そんな中でも先輩たちは緊張する自分たちを見かけて優しく声をかけてくれたという。
2年生、3年生になると徐々に緊張がほぐれてきた。木更津総合は年末に走り込み中心の御宿合宿や、春の大会が終わると、トレーニングの量も増えてくるが、夏を戦う上で一番大きかったのは全体練習後に行われる1時間あたりの自主練習が大きかったと振り返る。
篠木 健太郎がいた時に取材に訪れた時、日中は紅白戦など全体練習を行った後、1時間かけて選手たちは捕球練習、打撃練習、投手はランニング、シャドーピッチング、投球練習など選手それぞれがやりたい練習を行う。この練習は大きな意味があった。
選手たちは自分からできると暗示をかけるようになる

木更津総合ナイン
「足りないところとかは自分たちで考えられるので、ここでこうしたらいいだろうと試合中に考えられるので、いいと思います。自分は投球フォームであったり、変化球はココで曲げるとか曲がり幅とか、いろいろ考えながらやっていました」
そうすると、自分に自信が持てる。次第に選手たちは「自分たちは夏に強い」という暗示をかけているという。
「夏にかけて大丈夫だろとみんな言ってますし『できるよ、できるよ』という上げていく言葉も飛び交います。その辺はそれぞれ、動揺したら相手に押されるというのはみんな知っているので春までの経験がありますので、夏はそれが発揮できたうえで強い木更津総合ができます」
春の県大会は3回戦敗退となったが、夏では準優勝。その戦いぶりは非常に力強かった。またメンバー登用の仕方も木更津総合らしい。木更津総合は五島監督の方針上、実力+人間性が備わって、ベンチ入りができる。春、夏と先発、リリーフでベンチ入りした右サイドの神子史温が台頭したが、五島監督曰く「苦労人で申し分ない人間性と練習試合で着実に結果を残した」ことがベンチ入りにつながり、ラストシーズンの活躍につながった。
「夏に異常に強い」木更津総合は、これまでOBや、結果を残す選手たちを観察して分かったのは、「必ず強くなる魔法」はない。彼らに共通するのは、自立した選手が多いこと。山下だったり、東北楽天で活躍する早川 隆久も大学生とは思えないぐらいの思考力、自主練習を毎日続けていけるだけの心の強さがあった。また木更津総合では公式戦Oだった18年の主将・比護 涼真も関東学園大に進学し、昨秋は5試合に出場するなど、着実にレベルアップしている。比護のプレースタイルもカバーリング、バックアップを全力で行う模範的な動きをしていた。
自分の課題を自分で向き合って成長する時間を必ず設けたことで、夏の強さ。そして高校を卒業しても多くの先輩たちが活躍している。
この環境が続く限り、令和でも木更津総合は千葉をリードしていく学校であることは間違いない。
(取材・文=河嶋 宗一)