Interview

剛腕・佐藤由規が振り返る同僚との対戦と甲子園への想い【前編】

2021.04.02

 野球をプレーするうえではもちろん、生きていくうえでもメンタルの保ち方は大きな要素となる。ここぞの大一番や苦しい時、プロ野球選手たちは、どのようなことを意識してきたのだろうか。

 仙台育英高校からヤクルトへと入団し、2018年オフに楽天へと移籍。2021年シーズンからルートインBCリーグの埼玉武蔵ヒートベアーズでプレーする由規に話を聞いた。

トライアウトでチームメートと対戦

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佐藤由規(写真提供=埼玉武蔵ヒートベアーズ)

 昨日の敵は今日の友。当然、その逆もある。移籍が伴う勝負の世界では頻繁に起こりうる。由規にもつい最近そういった出来事があった。

 楽天から戦力外を受けた由規は、昨年12月に神宮球場で12球団合同トライアウトに参加した。そこで由規は打者3人と対戦し、本塁打、死球、見逃し三振の結果を残している。真剣勝負の大一番。それもひとり目の対戦で本塁打を打たれてしまった。

 由規から本塁打を放ったのは、楽天でチームメートだったルシアノ・フェルナンドである。2年間同じユニフォームを着て戦っていた仲間との対戦はどういった心境だったのだろうか。

 「トライアウト当日に対戦相手を知ったんですけど、フェル(フェルナンド)とは『お互いにやりづらいね』って話をしてましたね。手の内がわかってるのもありますしね。実戦になればそんなことは考えないのですが」

 対戦相手がわかった時から複雑な心境はお互いにあったようだ。だが、打たれたことに関しては淡々としていた。

 「(ホームランを)打たれてしまったなぁって感じです」

 打たれた恨み節はもちろん、悲壮感もまったくない。その出来事を前向きに捉えているように見受けられる。

 「また同じチームでやることになったのもなにかの縁ですし、もうホームランを打たれることはないんだな、って思いますね」

 そう、フェルナンドもトライアウト終了後に由規と同じ埼玉武蔵ヒートベアーズと契約しており、2021年シーズンからは再びチームメートとなったのである。

 自分から真剣勝負の場でホームランを打った選手が、後ろを守るというのはきっと心強いことだろう。

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野球をやっている限りライバル

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高校時代の佐藤由規(仙台育英)

 プロ入り前にも元チームメートと対戦するという同じような経験があった。仙台育英高に入学する前のことだ。

 「小学校では同じチームだったけど、中学では違うチームになったことで対戦する楽しみがありました。一度対戦したから高校でまた一緒になったら楽しいんだろうな、って子供ながらに思っていましたね」

 子どもながらに元チームメートとの対戦を前向きに捉え、その先まで見据えて楽しみを見出していたようだ。

 だが、同じチームになったから勝負がなくなるわけではない。公式戦で戦うことはないかもしれないが、ベンチ入りやレギュラーをかけて争うことになる。

 「同じところに入ってしまったら、こいつに負けたくないって気持ちは当然ありましたね。甲子園に出るにしてもベンチの枠もありますし、競っていかねばならないので。野球をやっている限りライバルなんですよね。でも自分たちが3年生になったとき、そのメンバーみんなで甲子園に行けたら楽しいんだろうなぁってモチベーションがありました」

 高校入学時の由規はスーパー中学生という扱いではなかった。そもそも当時は投手ではなく、150キロを出しプロ野球の世界に行く、という意識もなかったという。それでも仙台育英高という強豪校のなかで、ここまで前向きに考えていたのは驚きだ。

 後編ではプロでのエピソード、そして現状に迫る。

(記事=勝田 聡

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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