Column

6年連続甲子園出場を狙う花咲徳栄。選手の進化を支える独自のアイテムとは

2021.02.20

 センバツ甲子園出場32校が決まったが、3000校以上の学校が夏へ向けてスタートを切っている。その中で楽しみな学校なのが、花咲徳栄だ。2015年から続く6大会連続の夏の甲子園出場を目指す花咲徳栄は、140キロ台の速球を投げる主力投手が5名おり、さらに打線も巧打者、強打者も揃い、スキがないチーム構成となっている。

 花咲徳栄の恐ろしさといえば、夏にかけてさらに最強チームに仕上がるということだ。長年、花咲徳栄を支えるアイテム。そしてその真相に迫る。

なぜ花咲徳栄の選手たちは足袋をはくのか?

6年連続甲子園出場を狙う花咲徳栄。選手の進化を支える独自のアイテムとは | 高校野球ドットコム
浜岡陸主将(花咲徳栄)

 「選手が一番伸びる時期といえば、この12月から2月。だから選手たちには『一冬超えて成長した』と実感してもらいたい。そういう練習のプログラムを作るのが指導者の役割だと思っています」

と語るのが花咲徳栄を全国トップクラスの名門へ育てた岩井隆監督だ。1992年に花咲徳栄のコーチに就任し、2001年に監督に就任。2015年から続く6年連続で甲子園に出場。まさに一冬超えて夏に強い選手、チームを作り上げている。

 では何があるのか。そのヒントは足元にあった。

 選手たちの練習を見ると、スパイクをはいていないことに気づく。花咲徳栄の選手たちは足袋をはいているのだ。

6年連続甲子園出場を狙う花咲徳栄。選手の進化を支える独自のアイテムとは | 高校野球ドットコム
花咲徳栄の選手たちが履く足袋(花咲徳栄)

 オフ限定で12月~2月の3か月間で、雨などでグラウンドが使えない日以外は足袋を履いたまま、トレーニング、投球練習、打撃練習、守備練習といった技術練習をこなす。
なぜ足袋で練習するようになったのか?それは岩井監督が足袋をはいて練習した経験者だからだ。

 桐光学園出身の岩井監督は現役時代、遊撃手として活躍。その時、師匠として慕う稲垣 人司監督の勧めで桐光学園では同時期に足袋をはいて、岩井監督も効果を実感したという。

 その後、稲垣氏は花咲徳栄の監督に就任し、継続して足袋を導入し、現在に行きついている。一見、古典的なトレーニング。近年はトレーナー主導でメニューを組むチームがある中で、ある意味、斬新的だ。実際に花咲徳栄はウエイトトレーニングが取り組めるウエイトルームもあり、多くの強豪校でアスレティックトレーナーをしている方からサポートを受けるなど、花咲徳栄のトレーニングは多岐にわたる。

 その中でも岩井監督が足袋をはいてトレーニングする理由は効率性だ。最後の夏にかけて選手たちの技量がピークに持っていくためには、計画的な練習計画、絶対的な量が必要となる。昨秋は選手たちのミート力を高めるために、徹底とした打撃練習を行っていた。

 岩井監督も長い指導者生活で、いろいろな練習を試してきた。その中で足袋を履きながら普段の練習をすることで、技術力向上をしながら、足の指を鍛え、踏ん張る力を身に着けることが選手たちのポテンシャルを引き出すうえで、効率性が高いと考え、オフ期間に限定して取り組んでいる。

 では選手たちはどう感じているのか。その効果とさらに注意点についても説明をしていきたい。

[page_break:選手たちの感想は??]

選手たちの感想は??

6年連続甲子園出場を狙う花咲徳栄。選手の進化を支える独自のアイテムとは | 高校野球ドットコム
富田隼吾(花咲徳栄)

 今年の守備の要であり、堅守を誇る遊撃手・浜岡陸は効果を実感している。

「この冬でスムーズに足が運べるようになったと思います。軽いのもそうですし、薄いので裸足で走っている感覚です」

ただ最初は地面を強く前方への打球処理には苦労したようだ。

「とにかくどうすればうまく動かせるのか、苦労しました」

そこで足の指をどう踏ん張ればいいのか、地面にかむ感覚を養っていったところ、次第に動けるようになったようだ。

 また4番・富田隼吾も打撃の時に効果を実感している。

「このままでやると最初は滑ります。自分は軸足で踏ん張って、その力を使って回転を与えるタイプなので、滑って苦労しました。それでも指で土をかむ感覚でいくと、振れることができました。たまにシューズを履いて練習をするのですが、強いスイングができます」

 そして身体能力の高さはチームトップクラスの外野手・飛川は「一塁の駆け抜けでは、これがすべてではないですが、コンマ何秒かは速くなりましたし、スパイクをはいてみると、本当に体のキレが出てきたことを実感します」

 効果てきめんな足袋練習がオフ限定なのは、故障のリスクがあるからだ。スパイクと比べてフィット感がないため、足の骨折を招くケースがある。そのため足袋の下にあるソックスを二重に履いたり、テーピングをしたりしているようだ。

 

 はっきりいえば、高負荷なトレーニングになるため、誰もがお勧めできるメニューではない。それでも花咲徳栄の選手たちは上達のために、故障を防ぎながら、パフォーマンスアップしてきたのはこれまでの歴史が証明している。

 意欲的に自分の課題に向き合い練習してきた選手たちを見ると、今年の花咲徳栄は怖い。そう実感できるものがあった。

 花咲徳栄の選手たちがが打撃、守備、投球で大事にしていることはテーマ別でコラムでお届けします。お楽しみに!

(取材=河嶋 宗一

関連記事
【速報】センバツ出場校発表!32校の顔ぶれは?
140キロ以上が4人の投手陣、強打者、巧打者揃いの強力打線を誇る花咲徳栄の逸材を徹底分析
清水達也、高橋昂也など埼玉5連覇を支えた花咲徳栄の好投手列伝

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.27

【京都】龍谷大平安、京都成章、北嵯峨などが2次戦進出戦に挑む<春季大会>

2024.04.27

【大阪】3回戦は28日に大阪桐蔭、履正社が登場、29日には上宮-関西創価など<春季大会>

2024.04.27

横浜に入学した「スーパー1年生5人衆」に注目せよ! 佐々木朗希二世、中学日本代表の二刀流など明日の慶應戦で活躍なるか!?

2024.04.27

【滋賀】シードの滋賀学園、彦根総合が登場<春季県大会>

2024.04.27

【春季千葉県大会】中央学院が逆転勝利でベスト8!15奪三振完封の好投手の攻略に成功

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.22

【九州】神村学園、明豊のセンバツ組が勝利、佐賀北は春日に競り勝つ<春季地区大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!