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具志川商の九州8強など記録と記憶に残った2020年の沖縄3大ニュース

2020.12.30

 コロナウイルスの猛威により高校野球界のみならず、全てにおいて衝撃的となった2020年も終わりを迎えようとしているが、東京都や北海道など大変なニュースばかりで心が痛い。これ以上広がらないよう祈るばかりだ。

 春の大会が途中で中止となったばかりか、新人大会も早々に取りやめになった沖縄県高校野球。正直全てがコロナウイルスの影響を受けたことで終わってしまうが、あえてそれ以外での三大ニュースを取り上げてみよう。

独自の夏季大会開催と八重山高校夏の初優勝(夏季大会)

具志川商の九州8強など記録と記憶に残った2020年の沖縄3大ニュース | 高校野球ドットコム
八重山のエース・砂川羅杏

 夏の甲子園が早々と無くなった夏だったが、各都道府県の高野連が踏ん張り独自の夏大会が開催されたことは一人のファンとして嬉しい。沖縄県でも2020沖縄県高等学校野球夏季大会と銘打った最後の夏が始まった。

 当初は無観客試合の予定であったが各校父母会からの要請が高まり、3年生の父母らに限定とし、検温や名簿提出、スタンドでの声出し厳禁などのお願いの中でスタートした。

 シード4校のうち中部商美里工に、宮工がKBC学園未来沖縄に、沖縄工八重山に敗れる。もう1校の日本ウェルネス沖縄だけが、リベンジに燃える興南を下すなど順当に勝ち進んだ。

 迎えた準決勝の第一試合。前評判は完全に日本ウェルネス沖縄が有利だった。1回裏、前泊宮城類のタイムリーに加え、二つの押し出しで4点を奪う。7回を終え6対1とリードした日本ウェルネス沖縄がこのまま逃げ切るかと思われたが、八重山の反撃が始まる。

 8回表、相手ボークで1点を返すと主将内間の2点タイムリーが生まれ息を吹き返す。9回にも砂川羅のタイムリーで完全に主導権を握ると、押し出しで同点に。延長10回、タイブレークから2点を奪うとその裏、エース砂川羅が最少失点で凌ぎ勝利。1988年以来となる二度目の決勝進出を決めた。

 決勝の相手はKBC学園未来沖縄。共に初優勝が懸かるとあって序盤4回を終えてゼロゲーム。その流れをもってきたのも準決勝で活躍した下位打線だった。

 5回表、エラーとヒットで一・三塁とすると1番宮良のタイムリー、内間のスクイズ、下地のタイムリー、最後の締めは4番比嘉の三塁打で一挙4点を奪取。投げては幸喜、下地、大城と繋ぎ最後はエース砂川羅杏が9回に1点を失うが最後の打者をファーストゴロに斬りゲームセット。

 2006年、ライバル校の八重山商工に先を越された夏の制覇。甲子園出場は幻に終わったが、念願だった最後の夏の覇者となった八重山ナインと島民が一番輝いた忘れられない夏となった。

[page_break:具志川商が九州ベスト8(秋季大会)]

具志川商が九州ベスト8(秋季大会)

具志川商の九州8強など記録と記憶に残った2020年の沖縄3大ニュース | 高校野球ドットコム
秋季九州大会ベスト8進出を果たした具志川商ナイン

 粟国陸斗主将をはじめ、多くの選手が前チームから主力を務める具志川商。新チームとなり秋の初戦で、名護商工を相手に二桁安打7得点で勝利を納めると快進撃が始まる。八重山商工宮古工・宮古総実連合との二回戦、美来工科との三回戦と7回コールドゲーム。準々決勝の宮古戦でも8得点を奪い完勝。野球部創設以来初となるベスト4進出は、それまでの4試合全てが二桁安打と強さを見せつけた展開でもあった。

 準決勝は大会屈指のサウスポー山城京平擁する強豪興南。しかし初回からランナーをためプレッシャーをかける具志川商は、相手のエラーもあって1回表に3点を奪う理想的で出し。このリードを、先発の粟国陸斗が5回を1失点と最高の結果を残す。リリーフした新川俊介も6回から8回まで僅か2安打ピッチング。9回、意地の1点を返す興南のプレッシャーに打ち勝った具志川商。それまで過去2戦2敗中(秋季大会)の興南を倒し、歓喜の決勝進出。具志川商初の九州地区高校野球大会出場権をも獲得した。

 決勝の沖縄尚学戦は完敗。「僕らの戦力と興南さんの戦力とを比べたら、僕らは100%で臨まないととても勝てなかった。言い訳にしかならないが、それまで完璧なゲームで勝ち続けてきた沖縄尚学さんとの、準備力や体力、精神力の差が出た」と、具志川商の喜舎場監督。連戦の戦い方はもちろん、それが強豪校との戦いとなると一筋縄では行かないことを学んだナインは、九州地区高校野球大会で躍動する。

 東海大星翔戦。1回表にいきなり2点を失う展開だったがその裏すぐに同点に追い付いたのが成長の証。2回に内野ゴロの間で得点すると、5回にも追加点。投げては初先発の新川俊介が2回以降東海大星翔打線を翻弄。最終9回も三者凡退に斬りゲームセット。見事、九州地区高校野球大会初出場初勝利を飾った具志川商であった。

[page_break:与勝が29年振りの八強入り、そして初のベスト4(秋季大会)]

与勝が29年振りの八強入り、そして初のベスト4(秋季大会)

 具志川商と切磋琢磨してきた同地区の与勝の秋も凄かった。初戦の小禄戦3回裏、6番徳田の2点タイムリー二塁打で先制。逆転されたものの5回裏には8番牧門、9番山口誉の下位で突き放すと1番照屋がこの日早くも3本目となる安打をレフトへ放ち4点を奪う。その後も着実に加点し二桁10得点でコールド勝ちを収めた。

 続く名護との戦いでは2対3とビハインドで迎えた7回裏、比嘉優の二塁打を含む5連続長短打が飛び出すなど大量6点。一転して投手戦となった首里との戦いは、7回まで僅か1安打しか放てず苦戦を強いられる。しかし8回、二死二塁から代打の上原が同点タイムリーを放つと9回、4番又吉和輝に逆転タイムリーが生まれる。

 押し出し四球も選び3点目をボードに刻んだ。投げては先発の牧門が好投。2回に1点を失うが、その後踏ん張り7回を投げ5奪三振。リリーフした又吉和輝が9回に連打を浴びるも、粘り強く投げ得点を許さずゲームセット。実に29年振りとなるベスト8進出を決めた。その勢いそのままに、準々決勝の沖縄石川戦では序盤3回までに二桁安打をマークし7得点。その後も攻撃の手を緩めず15安打10得点。与勝の歴史上初となるベスト4進出を、7回コールドという圧巻のゲームで演出してみせた。

 迎えた準決勝は沖縄尚学相手に完敗したものの、興南との三位決定戦(順位戦)で9回を戦い同点。10回のタイブレークで4得点を奪う力を見せるなど、山城京平を最後まで苦しめた打線は、秋の大会6試合で打率.328、42得点をマークした。

(記事=當山 雅通

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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