本田峻也(東海大菅生)など好左腕が続々!東京都の2020高校野球を総括
大変な1年であった。
それでも、自粛の期間を経ながらも、しっかり球史をつないでいった2020年の東京の高校野球を総括する。
センバツ中止が国士舘に与えた影響
交流試合にも出場した国士舘
冬の間トレーニングを積んで、これから実戦という時に、コロナによる休校、練習の自粛が始まった。どの学校も多大な影響を受けたが、特にセンバツ出場を決めていた国士舘は衝撃が大きかった。そしてその影響は、秋まで引きずることになる。
夏の独自大会は、永田昌弘監督の配慮で3年生だけで臨んだ。西東京大会の準決勝まで進んだが、センバツ出場校による交流試合もあるためエースの中西 健登に無理をさせるわけにいかず、準決勝の佼成 学園戦は接戦になったけれども、エースを出さず敗れた。
また独自大会は3年生のみで戦ったため、1、2年生の実戦経験は不足していた。毎年秋の段階としては完成度の高いチームを作っていたが、大会3連覇を目指したこの秋は、2回戦で四球を連発するなど、国士舘らしくない形で負けた。
3月から5月までチームとして練習ができなかったことにより、選手の自立、自主性が問われることになった。西東京大会で準優勝した佼成学園は、昨年の秋季都大会よりはるかに強いチームになっていた。藤田直毅監督は、「生徒から学ぶことが多かった」と語っている。今回のコロナ禍は、高校野球の指導のあり方にも変化をもたらすに違いない。
甲子園なき夏が作った劇的な試合
6月に学校が再開された後も、部活動は制限のある学校が多かった。また雨天の日が多かったこともあり、準備不足のチームがあったことは致し方ない。独自大会の前半では、試合開始早々に投手陣が崩壊するケースも目立った。また1、2回戦で好投しても、次の試合では力がガタっと落ちるケースもあった。例年のように実戦を通して力を引き上げることができない、この夏の難しさがあった。
それでも、東西東京大会の決勝戦と、東西決戦は素晴らしい試合になった。この3試合に共通するのは、9回裏に同点、あるいは逆転のドラマがあったということだ。東東京大会の決勝で登板した[team]関東一[/team]の今村拓哉、西東京大会の決勝で登板した佼成学園の平澤 燎、東西決戦で登板した帝京の田代涼太は、おそらく高校生活で1番といっていいほどの投球をした。ただ疲労がみえ始めた9回、交代のタイミングは遅れ、得点を許した。
勝っても負けても、これが高校生活最後という思いが、ベテランの指揮官をして、交代のタイミングを遅らせたという気がする。そしてそのことが、逆転のドラマを生んだと私は思う。
夏の独自大会は、無事に終われば成功であった。それくらい、選手たちはもちろん、関係者の苦労も大きかった。そうした苦労に応える熱い戦いであった。ただ帝京が東東京大会で優勝するのは9年ぶりだけに、甲子園での活躍を見たかった。
[page_break:エースの健闘が光った秋、2番手投手に課題]エースの健闘が光った秋、2番手投手に課題
東海大菅生・本田峻也
夏休みが短かったうえに、合宿や遠征も制限されたため、秋季大会でも準備不足は否めなかった。背番号とポジションが一致しない選手が例年以上に多かったのもその表れだ。
また秋季都大会では、初めてシード校制が導入された。夏の東西東京大会のベスト8、16校がシードされることになっていたが、東大会8強の都立城東が1次予選で都立日野に敗れたため、15校がシードされた。
2回戦で帝京が都立小山台にコールド負けするなど波乱含みであったが、8強は八王子を除きシード校が進出し、4強は全てシード校になった。強豪を分散させるという点で、シード校制度は効果があった。その一方で、シード校を破り上位に進出する学校がなかったのは、寂しかった。
八王子の長身左腕・羽田 慎之介はヒジの故障のため準々決勝で登板できなかったものの、8強に残ったチームには、左腕では東海大菅生の本田 峻也、日大二の大野 駿介、日大三の宇山 翼、二松学舎大附の秋山 正雲、日大豊山の玉井 皓一郎、右腕では関東一の市川 祐、早稲田実の田和 廉など印象に残る好投手がいた。その他にも日野の木下 孔晴、小山台の木暮 瞬哉など好投手が目立った大会だった。
ただその一方で、2番手以降の投手が育っていないチームが多く、投手交代の失敗や、エースを引っ張り過ぎて後半もつれる試合が多かった。秋季都大会の63試合のうち、コールドゲームになった25試合を除く38試合で、1回から3回まで得点は79点、4回から6回までは91点であったのに対し、7回から9回までの終盤に151点入っている。
特に1回戦の国学院久我山・城北戦では、国学院久我山が7回表に8点を入れ、点差を12点としたが、エースを降板させた7回裏に城北が10点を入れ、8回裏にも4点入れて逆転した。目白研心は日大二相手に善戦したが、エース・安保 優太郎が終盤崩れると、8回表に9点を失って敗れた。コールドゲームなので集計には入れていないが、東海大高輪台と日大鶴ヶ丘の試合では、東海大高輪台がエースを降板させた8回表に日大鶴ヶ丘が11点入れて、逆転しただけでなく、コールドゲームにした。
一方、優勝した東海大菅生は、エースの本田だけでなく、控えの鈴木泰成も好投。準決勝と決勝では、若林弘泰監督が気迫を評価する中堅手の千田光一郎が抑え投手と活躍するなど、選手層の厚さをみせた。走れる選手も多く、夏に続いての東京制覇で盤石の強さをみせた。夏の甲子園はなかったが、来春のセンバツでの活躍を期待したい。
(記事:大島 裕史)