Interview

現在の大阪桐蔭の礎を作った主将・福井章吾が中心選手になるまで vol.1

2020.12.24

 2018年に春夏連覇を達成した大阪桐蔭。以降も甲子園に出場すれば、全国制覇を狙えるチーム作りを見せている。その礎を築いたのは、2017年世代ではないだろうか。当時、主将として率いていたのが、福井 章吾だ。主将として牽引した2017年の選抜優勝、夏の甲子園ベスト16入りを経験した。

 さらに大阪桐蔭初の慶応大進学を決め、2年秋には明治神宮大会優勝を経験。さらには3年生からレギュラーを獲得し、二季連続でベストナインを獲得。そんな福井の野球人生を振り返る。

入学から先輩たちのレベルの高さに圧倒される

現在の大阪桐蔭の礎を作った主将・福井章吾が中心選手になるまで vol.1 | 高校野球ドットコム
大阪桐蔭時代の福井章吾

 「どの代になっても日本一を目指せる風土を作りたいんです」

 2016年12月、西谷 浩一監督は組織作りにおいて話をした時、目指すチーム像を上記のように語った。その中心役として担ったのが福井だった。

 箕面ボーイズ出身の福井が大阪桐蔭を選んだ理由は2つあった。

 「日本一の学校でレベルの高い野球をやりたい思いがあったので、その時、一番輝いていたのが大阪桐蔭でした。

 もう1つは僕は森 友哉選手(埼玉西武)に憧れていて同じユニフォームでやりたい思いがありました」

 大阪桐蔭から誘いがあったことは嬉しかった気持ちと同時にハイレベルな環境に飛び込むことに不安はあった。

 「それでも覚悟を決めて入学を決めました」

 いざ入ってみると、先輩たちのレベルは想像以上だった。

 「入学して見ると、先輩たちの身体の強さ、スピードの違いを大きく実感しました。本当に中学生と高校生の違いを痛感させられました」

 当然、ベンチ入りする機会どころかAチームとしてメインの練習に入ることもできない。大阪桐蔭の練習は、主力選手となる選手がグラウンドで練習し、それ以外の選手は雨天練習で練習したり、ボール拾いしたり、走者付きの実戦練習で走者を務め、練習の補助をする。もちろんそこもアピールの対象となり、選手は片時も気が抜けない。

 福井はどうやってみてもらえるか常に考えていた。

 「野球の技術でアピールすることはもちろんですが、西谷先生は人としてみていらっしゃる方でしたので、最初はゴミ拾い、グラウンド整備を誰よりも率先して日々取り組んでいました」

 試合に出場ができない中でも、チームの一員として認められるようになってきた福井。そして最大のチャンスが訪れる。

 それが控え選手を対象とした対外試合だ。大阪桐蔭は秋季大会が終わると、ベンチ入りができなかった選手やベンチ入りをしていても試合出場機会がなかった選手がメインに試合出場し、11月末まで練習試合を行う。レギュラーはその期間、グラウンドで体力強化に充てる。

 試合を組むのは休日だけではなく、平日でもグラウンドが近い近大附大産大附などと練習試合を組み、1人あたりの打席数、イニング数が決められ、平等にチャンスが与えられていく。ここでアピールに成功した選手は冬の強化指定選手となり、紅白戦、シート打撃。また選抜に出場すれば、大会直前の練習試合までアピールできれば、逆転してベンチ入りができる。これまで大阪桐蔭はこの期間で多くの選手の入れ替えを行っているようにチーム、選手をさらに強化させる期間なのである。

[page_break:勝負の期間でアピールに成功し、ベンチ入りの座を勝ち取る]

勝負の期間でアピールに成功し、ベンチ入りの座を勝ち取る

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大阪桐蔭時代の福井章吾

 福井もこの期間がチャンスだと捉えていた。

 「当時、チームは近畿大会を優勝していて、神宮大会にも出場。センバツはほぼ確実な状況でした。この期間にアピールをすれば、センバツでベンチが誰も入れると思って試合、練習をしていました。だから自分は死ぬ気が毎打席やっていたと覚えています」

 この期間で、福井は結果を残し続け、アウトオブシーズンになると、練習試合の成績が貼り出されるが、なんとチームで2番目の打撃成績を残し、Aチーム入り。強化指定選手にも選出された。この期間でもアピールに成功し、ついにセンバツで初のベンチ入りを果たしたのであった。

 土佐戦で代打として試合に出場し、甲子園デビューを飾った。この試合は福井にとっても思い出深い試合となっている。

 「僕の野球人生が変わるきっかけとなった試合になりましたし、もう一度甲子園に出たい 今度はスタメンとして試合に出たいという思いになりました」

 大会が終わると、スタメン出場していた選手が負傷し、穴を埋める形で一塁としてスタメン出場。上宮戦ではサヨナラ安打を放つなど、着実に実績を重ねていくが、夏の大会では3回戦敗退と早い夏が終わった。

 新チームがスタートし、福井が主将に就任する。当時、西谷監督は福井就任について、ほとんどの選手が推す形で決定したと語る。

 「福井は真面目で、普段の練習からひた向きに取り組めて、芯が強い選手と評価をしていました。冬至の2年生を1人1人面談をしたら、ほとんどが福井のことを推していました。僕も面談する前から福井が主将になると思っていました」

 福井は大きな責任を感じていた。

 「驚くぐらい早く夏が終わってしまいましたし、本当にあのときは大阪桐蔭がここから落ちていかないように、自分たちで強い大阪桐蔭を引き戻さないといけない責任感で、夏休みの1ヶ月臨んだことを覚えています」

 2年連続で夏の甲子園出場を逃す。再建の思いで臨んだ大阪桐蔭の主将のプレッシャーは想像以上のものがあった。

 vol.1はここまで。vol.2では主将に就任してからの苦悩、選抜、夏までの過程を描いたインタビューをお届けします!vol.2はこちらから

(記事=河嶋宗一

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