近畿8強・神戸国際大付(兵庫)はなぜ毎年強力打線を築き上げられるのか【前編】
今秋の近畿を制したのは奈良県2位・智辯学園。準優勝は大阪桐蔭と今年も熾烈を極めた近畿大会。強豪校がひしめき合い高い注目を集める激戦区の1つだが、その近畿大会でベスト8まで勝ち進んだのが神戸国際大附だった。
現役でプレーをしている坂口 智隆や小深田 大翔。そして今年のドラフト会議にて巨人からドラフト1位指名を受けた平内 龍太らを輩出する兵庫県屈指の名門校だ。今年は注目の二刀流・阪上 翔也を擁する強豪はいかにして近畿8強まで上り詰めたのか。
県1番になるんだったら、打ち勝つしかない
ティーバッティングに打ち込む神戸国際大付の選手
「全員がずっと調子が良かったわけではありません。調子の悪い選手を別の選手たちでカバーすることが試合ごとにできたので、県大会を勝ち進むことが出来ました」
そのように語ったのはチームを指揮する名将・青木尚龍監督だ。同校のOBとして春夏合わせて6回の甲子園出場に導いた青木監督だが、今年のチームは投手陣に課題を感じていたと振り返る。
「柱となるような投手がいませんでした。阪上は下級生から投げていましたが、打者がメインでしたので、『お前がしっかり投げられれば近畿に行けるぞ』と話はしていました」
今年は新型コロナウイルスの影響で新チームのスタートが遅れるなか、神戸国際大付は練習再開してすぐに下級生のチームを作り、早くから秋に向けて少しずつ準備を進めていた。
西川 侑志主将は不安を感じながらも目標は明確だったと振り返る。
「経験者が少なくて不安は大きかったですが、先輩たちも手伝いに来てくださっていたので、自分たちは兵庫県の頂点に立つつもりで練習をしていました」
練習再開してすぐにチームを分けたおかげもあり、違和感なく新チームはスタートを切り、選手個々の能力を伸ばしつつ、バントなどの小技やトレーニングなど練習を重ねた。
だが青木監督が語ったように、どうしても投手陣の計算だけが立てられなかった。そこで阪上に白羽の矢を立てつつも、青木監督の中では1つの決心を固めていた。
「県で1番になるには投手陣が弱い。だったら、打ち勝つしかない」
毎年、打力が光る神戸国際大付。その打力をこの秋は存分に発揮して勝ち上がることを決めた青木監督。だが、例年強力な打線を形成できる理由は何なのか。青木監督が選手たちに伝えるのは“仕掛ける”意識だ。
[page_break:打ち勝つための徹底された体力強化]打ち勝つための徹底された体力強化
神戸国際大付の練習模様
「フリーバッティングだとどうしても気持ちよく打とうとしてしまいますが、大事なことはどんな事情、どんなボールでもしっかりとタイミングをとって、きちんとスイングをすることです。自分のスイングで常に仕掛けていくことが大事なんです」
基本的には受け身になりがちなバッターだが、全て受け身になるのではなく、自分の間合いで思い切り自分のスイングをする。そういった仕掛けを常に練習からすることで、ミスショットをした時に原因を感じ、考えることが出来る。そうやってフルスイングの精度を高め、確実に打力を高めるのが神戸国際大付のバッティングなのだ。
その一方でプレッシャーを強く感じ、思い切れない選手もなかにはいる。特に新チームは経験者が少なく、「最初は殻を破れずに見逃しが多くて苦労しました」と難しさも同時に感じている。ただ、秋の大会は勝てば次の試合まで日数が空く。その期間で選手たちの自信を深めたことで、少しずつ殻を破っていったとのことだ。
主将の西川 侑志選手は「監督から『思い切りいけ』という一言をもらったおかげで、緊迫の場面でも気持ちよくスイングして1本を出せました」と青木監督からの指導の効果を語る。
ただ考え方だけではない。「まずはバットを振れるだけの体力を付けないといけないです」と青木監督が前置きで語るように、体力づくりも忘れてはいけない要素だ。その点に関しては20年間、青木監督とタッグを組む上里田(あがりだ)哲英統括コーチが一任されている。
上里田コーチは社会人まで野球を継続してからトレーナーに転身。現在も最新の知識を学びながら選手たちのコンディショニングを担当しているが、その上里田コーチが監修する中で選手たちは通年でトレーニングに打ち込む。
「ただ単純にやるよりも選手たちが自発的にやらないと伸びません」という考えのもと、トレーニング方法や計算式を用いる。さらには数字を明確に提示し、個別性を大切にするのが上里田コーチの指導。実際に神戸国際大付では、1年生と2年生でそれぞれベンチプレス平均の重さを設定して、その目標に設定してトレーニングを実施する。
神戸国際大付ではシーズン中は軽い重量を扱う代わりに回数を増やし、休憩時間にも追い込みメニューという形で腕立て伏せなどの細かいメニューを組み込むことで、筋肉に様々な刺激を与えながら、確実に鍛えている。
そしてシーズンオフになると、本格的に重たい重量を使って少ない回数でもパワーアップを測るが、高校生とは思えないハイレベルなトレーニングをこなす。最後にはストレッチもきちんと入れて、ケガを予防しつつ可動域を低下させない筋肉づくりを心掛ける。それを上半身、下半身で取り組む日を別々にして休息もきちんと入れることで、しっかりと身体を作っていく。また教え子でもある中上、田中両コーチも選手時代から経験しており、しっかり選手に指導や補助もやってくれていることで、身体が出来上がっていく。
他にも、全身の可動域を限界まで使いながらトレーニングが出来るレッドコードトレーニングの施設。さらに食事に関しても年に数回講習会を開き、選手たちの体組成計を定期的に計測しつつ、栄養摂取の重要性を確認。それと同時に、カロリー計算などを選手たちそれぞれに教え込むことで、日々の食事で必要な食事を自分たちで理解させる。
こうして土台となる身体を作り上げたうえで、技術や考え方を伝える。ここに神戸国際大付の強さの一端が隠されていた。
前編はここまで。後編では新チームの歩みをさらに深く振り返っていきます。
後編はこちらから!
選抜出場の可能性残る神戸国際大附(兵庫)が目指すのは「一目で強い。隙のないチーム」【後編】
(取材=田中 裕毅)