Column

「強打の花咲徳栄」復活へ どんな投手にも対応できる術を身に着け、成長中

2020.12.01

 2015年から5年連続の甲子園出場の花咲徳栄。2020年夏はベスト16敗退となったが、この年は甲子園が中止になったため、2021年は記録上、6年連続の甲子園出場がかかっている。そんな花咲徳栄のチーム作り、注目選手に迫った。

軟投派投手を攻略できずに終わった秋

「強打の花咲徳栄」復活へ どんな投手にも対応できる術を身に着け、成長中 | 高校野球ドットコム
キャッチボールの様子(花咲徳栄)

 妥協を許さない。かといって束縛した雰囲気ではなく、選手たちが黙々と練習に取り組む。緊張感がありながらもどことなく余裕がある。そんな大人の雰囲気を持ったのが花咲徳栄だ。花咲徳栄はアップから時間をかけて練習を行う。ランメニュー、エクササイズとメニューが豊富。けがを防ぐために工夫を凝らしているのが分かる。

 そんな花咲徳栄の課題は打撃だった。秋季大会5試合で45得点と多く得点を奪ったかにように見えたが、代表決定戦の久喜北陽戦では110キロ台の投手の対応に苦しんだり、そして敗れた細田学園戦でも軟投派投手を対応ができず、敗れる結果となった。

 この試合で課題となったのはミートポイントのずれだ、緩いボールに対応しきれず、ひっかけた打球、体が泳いでの弱い打球などが相次いだ。そしてプレッシャーがかかるチャンスの場面になると余計、技術的な欠点を露呈しやすい。

 そういう欠点を埋めるには日々、技術的な欠点を修正し、打ち込みを重ねるしかない。花咲徳栄の打者たちはインサイドアウトで振ることを基本に教え込む。近年、花咲徳栄は甲子園で戦っていき、全国制覇を果たした東海大相模作新学院と対戦をして打力の差を痛感し、体づくりにも取り組んでいるものの、基本的に技術を徹底的に教え込む。岩井監督は選手によってアプローチの仕方は違う。今年、ドラフト1位となった井上朋也の場合、入学当初から本塁打を重ねていたが、波を打つスイング軌道となっていた。もちろんそのまま打てていたので、矯正せずにいじらない方法もある。ただ、高いレベルでは苦労するとみていた岩井監督はこう説得した。

「井上には『プロで活躍する選手は同じ技術のままでは、活躍ができないから、フォーム、技術などを少しずつ変えていくのは当たり前』と諭したら、本人も変えたいということでスイング軌道、ヘッドの抜き方などこと細かく教え込んだ。

 その結果、さらに打撃技術が増して、高校通算50本塁打にも達し、ドラフト前の打撃練習では鋭い打球連発をしていたが、岩井監督の指導と、それを聞き入れた井上の姿勢がなければ、ここまで高評価にならなかっただろう。

 また井上だけではなく、北海道日本ハムの期待の星である野村 佑希も岩井監督曰く「1年秋までは本当に空振りが多かった」というほど。それでも我慢強く起用し、技術面も指導して、ドラフト2位まで上り詰め、さらに若月にいたっては、「プロを目指せる選手というスタートではなく、ボールが当たらなかった」というレベルから超高校級捕手までに成長させた。

 技術を徹底的に教え込む花咲徳栄。最近は入学する選手のレベルも高くなってきたが、素材はいいけれど、粗く、育てにくいといわれる選手たちも数多く育ててきた自負がある。

[page_break:大会後の練習試合では猛打爆発]

大会後の練習試合では猛打爆発

「強打の花咲徳栄」復活へ どんな投手にも対応できる術を身に着け、成長中 | 高校野球ドットコム
雨天練習場の打撃練習の様子(花咲徳栄)

 花咲徳栄の良いところは岩井監督だけではなく、先輩後輩同士が技術を教えあう良さがある。井上は野村とマンツーマンで教わり、野村自身も西川 愛也(埼玉西武)の打撃フォームを参考にしたり、また今年の4番・冨田 隼吾も井上から下半身の使い方を学んで、強打につなげている。

 教えてもらった技術を会得するために花咲徳栄の選手たちは徹底的に練習を行う。日の入りが早くなる10月頃から、守備練習の割合を減らし、徹底とした打撃練習を行います。取材日ではシートノックも行わず、打撃メインの1日そして寮生は夕食を摂り、交代制で1年生の選手が参加します。選手層が厚い花咲徳栄は試合に出ていない選手でも体格がよく、鋭い打球連発。また雨天練習でも精力的に練習をしている姿が見かけた。

 そして20時過ぎからレギュラー選手が打撃に参加。なんと22時まで打撃練習を行う。こうして夜遅くまで打撃練習を行う花咲徳栄だが、朝練習はなし。睡眠時間をしっかりと取るための方針で、選手たちの身体もみるみる大きくなっていた。

 11月以降の練習試合では大量点を挙げ、勝利を上げるなど、少しずつ課題を克服している様子が見える。主将の浜岡 陸は「少しずつではありますが、自分たちがやりたいことはできつつあります」と手応えを感じている。

 今年は全国トップクラスの投手陣を擁するだけに安定して打線が力を発揮できれば、6年連続の甲子園出場を狙う花咲徳栄にとって大きな展開となりそうだ。

(取材=河嶋 宗一

注目選手のインタビュー記事はこちら!
小、中学校時代のライバルは高校通算40本塁打以上のスラッガー。遅咲きのスラッガー・冨田隼吾(花咲徳栄)の決意
北海道から来た144キロ右腕・松田和真(花咲徳栄)。全国のライバルたちに負けない成長を
ライバルを倒し、ライバルと甲子園で投げ合うことを夢見る143キロ右腕・高安 悠斗(花咲徳栄)
威力はチームでトップクラス。143キロ右腕・堀越啓太(花咲徳栄)がエースになるための課題

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.13

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.05.13

【仙台六大学】“投手王国”にまたひとり…リーグ戦初登板初先発の東北福祉大・柴田由庵が史上15人目ノーヒットノーラン達成!

2024.05.14

【2024年春季地区大会最新状況】近畿大会、北信越大会、全道大会で出場校が決まる

2024.05.13

【首都大学】14季ぶりリーグ戦優勝の帝京大のエース左腕・榮 龍騰は「絶対にマウンドを譲りたくなかった」ストレートを軸にした投球で前回対戦の悔しさ晴らす11奪三振快投!

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.09

プロスカウトは190センチ超の大型投手、遊撃手、150キロ超右腕に熱視線!この春、浮上した逸材は?【ドラフト候補リスト・春季大会最新版】

2024.05.09

【熊本】九州学院は城北と文徳の勝者と対戦<NHK旗組み合わせ>

2024.05.09

「指導者はどこにいる?」九里学園(山形)が 選手主体の”考える野球”で成果着々

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?