Column

足首の捻挫について理解しよう

2020.11.15

足首の捻挫について理解しよう | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 朝晩はすっかり肌寒くなり冬が近づいていることを感じる毎日ですが、皆さんは体調など崩さずに元気で野球に取り組んでいるでしょうか。基本練習や反復練習などが多くなる時期ですが、疲労によるケガを防ぐためにも日々のセルフコンディショニングをしっかり実践していきましょう。さて今回は野球だけではなくスポーツ全般によくみられる足首の捻挫について考えてみたいと思います。

捻挫はどこを傷めているの?

足首の捻挫について理解しよう | 高校野球ドットコム
内反捻挫のイメージと右足首の外側にある靱帯

 捻挫とはその漢字の成り立ちからもわかるように「捻る(ひねる)」「挫く(くじく)」ことを指します。関節に大きな外力が加わること(=くじく)によって靭帯をはじめ、その周辺にある軟部組織や骨などを傷めた状態です。大きな外力によって関節部分が普段動かない方向にひねられて、その結果関節を傷めるというケースもあります。捻挫は足首をはじめ、手首や指、肩、膝など関節のある部位であればどこでも起こる可能性がありますが、スポーツの場面では繰り返されるランニングでの着地や切り返し動作、接触プレーなどによって足首を傷めることが多くみられます。足首の捻挫は「靭帯のケガ」と思っている人もいるかもしれませんが、実は靭帯だけではなく、さまざまな組織を傷めている可能性があります。

首は内側にひねりやすい

 足首の捻挫は足首を内側にひねって起こる内反(ないはん)捻挫と、外側にひねって起こる外反(がいはん)捻挫と大きく分けて2種類ありますが、足首の構造上、内側にひねって起こる内反捻挫が約9割を占めるとも言われています。内反捻挫は足首を内側にひねるため、足関節の外側に大きな牽引力(引っ張られる力)が加わることになり、足首の外側にある靭帯が引き伸ばされて損傷します。外側にある靭帯の中では前距腓(ぜんきょひ)靭帯を傷める場合が多く、外側の靭帯損傷によって足首の外側を中心に腫れ、痛みが生じます。損傷の程度がひどい場合などは足の甲部分や足首全体が大きく腫れてしまうこともあります。

 また内反捻挫をすると、通常は外側の組織が損傷しますが、ときどき足首の内側も痛くなることがあります。これは、足首を内側に大きくひねることによって、内側にある靭帯などが軟部組織との挟み込みを起こしたり、骨との衝突などによって痛みを生じることなどがその原因として考えられますが、時間の経過とともに軽減していくケースが多いと考えられています。

[page_break:痛みや腫れは後から現れることもある]

痛みや腫れは後から現れることもある

足首の捻挫について理解しよう | 高校野球ドットコム
内反捻挫はランニングや切り返し動作などでよく見られる

 足首を捻挫した場合はプレーを中断し、適切な応急処置を行うことを基本としましょう。受傷直後は痛みや腫れなどの炎症症状がみられない場合もありますが、動き方がおかしかったり、足首をひねったという自覚があれば無理をしないという判断が必要です。プレーを続けた結果、足首全体が大きく腫れてしまうような状態になってしまうと、腫れが引くまでに数日かかり、またそこから体重をかけて動かしていくと腫れが再発しといった具合になかなか状態がよくならないということにもなります。まずは患部に過度な負担をかけないようにし、氷や氷水などをつかって患部を冷やすRICEを行いましょう。足首全体が熱っぽいような状態の場合は患部を中心に足首を大きく囲むようにして冷やすことが大切です。氷バケツなどを使用して足首全体を冷やすことも良いでしょう。時間は10~15分程度を目安とし、痛みや冷たさを感じなくなってからさらに5分程度冷やすようにすると、表面だけではなく深層の関節付近まで冷やすことができます。場合によっては医療機関を受診し、安静期間の指示やその後のリハビリテーションなどを指導してもらうことが大切です。

競技復帰する時に気をつけたいこと

 足首の捻挫はよくみられるケガの一つなので、比較的短時間で競技復帰できることもありますが、捻挫によって「何を傷めたか」「程度はどのくらいか」「個人の持つ筋力や柔軟性はどのくらいか」といった個別要因が競技復帰を大きく左右するものです。また痛みを感じなくなっても、捻挫によって傷めた靱帯や関節付近にある組織は修復に時間がかかることが多く、安易に競技復帰してしまうと傷めた部位にストレスがかかって再受傷してしまったり、いつまで経っても痛みが残ってしまうといったことも起こります。さらに何度も捻挫を繰り返していると、足関節を支えている靱帯などが機能低下を起こし、いわゆる「ゆるい」状態になってしまうこともあります。

 競技復帰をする前には捻挫の再発予防に必要なトレーニングや十分に行うことはもちろん、ケガをした状況でも不安なく同じ動作が行えるようにコンディションを整えることが必要です。足首の不安感を軽減させる目的で、必要に応じてサポーターやテーピングなどを使用することも一つの方法ですが、最終的にはこうした装具やテープに頼らない状態にまで改善させるようにしましょう。なじみのある足首の捻挫ですが、捻挫をした初期段階でムリをしてしまうと後々長引くことにもなってしまいます。競技復帰に向けてはあせらずに少しずつできることを増やしながら、段階的に練習強度を上げていくことを心がけましょう。

【足首の捻挫について理解しよう】
●捻挫は「捻る(ひねる)」「挫く(くじく)」ことによって起こる関節部分のケガ
●捻挫によって靱帯だけではなく、関節の周囲にある軟部組織や骨などを傷めることもある
●足首の捻挫はもともとの構造上内側にひねりやすい特徴がある
●捻挫の応急処置はRICEが基本。患部を安静、冷却、バンテージなどで軽く圧迫、挙上を心がけよう
●捻挫を繰り返すと靱帯の機能不全によって「ゆるみ」を覚えることがある
●再発予防に必要なトレーニングを十分行ってから競技復帰をする

(文=西村 典子

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.29

【福井】福井工大福井、丹生、坂井、美方が8強入り<春季県大会>

2024.04.29

【春季埼玉県大会】今年の西武台はバランス型!投手陣の完封リレーで初戦突破!

2024.04.29

【春季和歌山大会】和歌山東の前芝が5回参考ながらノーノ―達成!プロ注目の強打者・谷村もタイムリーでアピール

2024.04.29

【春季神奈川県大会】横浜が慶應義塾を圧倒!ドラフト候補たちが投打に活躍!

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.26

【春季四国大会逸材紹介・高知編】2人の高校日本代表候補に注目!明徳義塾の山畑は名将・馬淵監督が認めたパンチ力が魅力!高知のエース右腕・平は地元愛媛で プロ入りへアピールなるか!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!