Interview

千葉県に現れた全国クラスの強肩捕手・古谷将也(成田)。プロ入りした先輩捕手の背中を追いかけ急成長【前編】

2020.10.21

 今年、NPBから注目を集めている大型捕手・古谷 将也。高校通算25本塁打の強打とスローイングタイム1.8秒台の強肩、抜群の俊足で打てて守れて走れる存在として夏の独自大会でも多数の球団から熱視線だった。独自大会優勝を目指して臨んだ今大会は惜しくもブロック準決勝(県4回戦)敗退が決まった。大会前からプロ志望を公言していた古谷はここまでどんな歩みを見せてきたのか。そんな古谷に迫っていく。

シニア日本代表も経験し、高卒プロを強く意識する

千葉県に現れた全国クラスの強肩捕手・古谷将也(成田)。プロ入りした先輩捕手の背中を追いかけ急成長【前編】 | 高校野球ドットコム
古谷将也(成田)

 10年以上の野球人生に導いたのは、祖父・亘さんだった。身近に野球をする環境があり、現在、清和大でプレーする省吾さん(銚子商出身)とともに野球を始める。

 最初は柔らかいボールでのプレーをしていたが、小学校3年から硬式をはじめ、同時に捕手を始めた。そして中学校では香取シニアでプレー。名門シニアになると、かなり遠方から通うチームもあるが、香取シニアはほぼ地元出身の選手で構成。遠方から通うのは、成田出身で、成田高でもチームメイトになる齋藤 鳳人のみで、本人も認める「田舎のチーム」は全国大会にも出場するようになり、第8回林和男旗杯国際野球大会では優勝に貢献する。

 こうした中で、古谷は代表選手になりたい思いが少しずつ沸いていた。まず2年冬には東日本選抜に選ばれ、台湾遠征を経験。この時、主将を務めていた宇野 竜一朗(市川シニアー早稲田実業)と一緒に、「シニアの日本代表に一緒に選ばれるように頑張ろうといわれ、自分も代表というものを意識しはじめました」

 そしてセレクションを受験し、アピールに成功し、見事に合格。シニア日本代表入りした。セレクションからレベルの高い選手と交流できた。その1人が148キロ左腕・高田 琢登静岡商)だった。

 古谷は「高田はセレクションの時にボールを受けさせてもらったんですけど、その時からもうレベルが違っていて、これは受かるだろうと思ったら、本当に合格しましたね」

 高田とはこの代表入りを機に仲良くなり、今でも頻繁に連絡を取り合っているほどの仲だ。また、多くの選手と仲が良くなった。

 シニア日本代表ではアメリカに遠征。今年の高校生を代表する左打者・山村 崇嘉とともにホームステイするなど濃密な経験を積んだ。この世界の経験は古谷を大きく成長をさせた。

「世界の経験もそうですが、周りのレベルの高い選手の実力を知ることができて、自分の実力がまだまだということがわかりましたし、間違いなく視野が広がったと思います」

 そして成田に進むきっかけは田宮 裕涼(北海道日本ハム)の存在が大きかった。 

「自分の高校選びの基準として、高卒でプロにいくことでした。中学のコーチからは甲子園に行ける学校か、高卒プロの可能性が高まる学校のどちらにいきたいといわれて、即答で高卒プロでいける学校にいきたいと応えました。その中で県外の高校に行く選択肢もあったのですが、田宮さんの存在で成田に行きたいと思ったんです」

 いろいろな学校を見る中で、成田の練習試合を見に行く機会があり、古谷が見た試合で田宮が豪快な本塁打を放ったのだ。この一打に古谷の心は大きく動かされた。

「中学生の時、シニアの指導者に『高卒プロを狙える学校に行きたいのか』、『甲子園に行くための学校に行きたいのか』といわれ、僕は即答でプロにいける高校選びをしたいですといいました。その中で成田があって、僕が見た練習試合を田宮さんが豪快な本塁打を放ってレベルが違うなと思いました。ああいう本塁打を目の当たりにして、行くしか無いなと思いました」と成田進学を決断する。

[page_break:先輩捕手・田宮からスローイング技術を学び、超強肩捕手へ]

先輩捕手・田宮からスローイング技術を学び、超強肩捕手へ

千葉県に現れた全国クラスの強肩捕手・古谷将也(成田)。プロ入りした先輩捕手の背中を追いかけ急成長【前編】 | 高校野球ドットコム
古谷将也(成田)

 中学時代から肩の強さ、パワーには自信があったように、同級生の中では抜きん出た実力を持っていた。ただ、田宮を前にすると、実力の違いを思い知らされる。

「全然敵わないなと思いましたね。正確性が本当に素晴らしくて、今でも勝てる気がしませんね」

 古谷は現役中の田宮にはなかなか聞けなかったが、1年夏が終わり、ドラフトへ向けて練習をしていた田宮のもとに話をやっと聞くことができた。そこで守備について学んだ古谷は手首を鍛えることと脚を使うことを意識した。

「田宮さんも1、2年生までスローイング面で悩んでいたと聞きまして、ではどうやって改善したのかというとステップだけではなく、投げる際にスナップを利かして投げることを意識したと話してくれました。ただスナップを利かすには相応の強さがないといけないので、スナップを徹底的に強化して、どんな体勢でも投げられたと言う話を聞いて、自分もスナップを鍛える練習をしました」

 ただ古谷は上半身の強さに頼るスローイングをしていたため、下半身をどう使うか。そのためにトレーニング面に目を向けた。

「下半身をうまく使うということを考えた時、股関節の使い方が大事になるかなと思って、そのため自分はチームのトレーナーを相談をして、股関節を鍛えたり、うまく使うトレーニングを教わって、また小林 誠司さんのスローイングの映像もみていきました。その結果、下半身を使うスローイングができるようになったと思います」

 足を使ってスローイング。これは言葉にしても簡単にできるものではない。古谷の場合、その言葉を噛み砕いて、股関節を使うトレーニングをしたり、自分のタイプに合った捕手のスローイングを参考にするなど、その努力がスローイング改善につながった。

 尾島監督も古谷のスローイングの成長の過程を高く評価をしている。

「古谷と田宮を比較した時、体の力強さ、肩の強さという点に関しては、古谷が上でした。ただ、田宮は捕手としては珍しいぐらい足をうまく使える選手で、それが二塁送球の正確性、速さにつながっていました。古谷の場合、上半身に頼って投げてしまうところがありましたので、それにいけないということは本人は自覚していましたし、何より良い見本がいたということが大きいと思います」

 こうしてスローイングも平均的に1.9秒台を計測するようになった。

 

 自らの考えで捕手のスキルを高めていった古谷。後編では高校通算25本塁打を生んだ強打や捕手としての成長、高卒プロ志望の理由、目標の選手像を聞いていく。

取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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