Column

甲子園初出場を果たした平田が掲げる「攻めの守備」とは? 創成館戦で見えたもの

2020.08.12

 ピッチャーが投げるボール1球ごとに野手陣が少しずつポジショニングを変えていく。「(平田にとっては)当たり前のことですかね」とエース・古川雅也は語る守備位置の移動こそ、チームの特徴の1つ、「攻めの守備」だったのだ。

 チームの悲願であった春夏通じて初めての甲子園出場となった平田。11日の創成館戦に登場し、全国レベルの相手を前に堂々たるプレーを見せた。その中で光ったのが初出場とは思えないような平田の果敢な「攻めの守備」だった。

裏付けされた平田の武器である「攻めの守備」

甲子園初出場を果たした平田が掲げる「攻めの守備」とは? 創成館戦で見えたもの | 高校野球ドットコム
甲子園初出場を成し遂げた平田

 これまでに平田に取材をしてきてチームのウリを聞くと「攻めの守備」というフレーズを掲げていた。その全貌が創成館との一戦で明らかとなった。

 ピッチャーが投げるボール1球ごとに野手の守備位置が変わる。打者によって守備位置を偏らせることはプロ野球でも珍しくはないが、高校野球のレベルでピッチャーが投げる1ボール1球ごとに動くのは非常に高度な守備体系だ。

 その一方で少し大胆とも思える取り組みだが、確かな裏付けをもってやっている。古川に聞くと「相手打者の特長を掴むためにビデオを10回くらいは見て、打球の方向はどちらに飛びやすいのか。またどのコースが苦手なのか。各打者の特徴と、それに基づいた配球を頭に入れたうえで守備位置を動かしています」

 「攻めの守備」を武器にしている平田にとっては、このミーティングこそが全ての軸となっているのだ。それは扇の要を担う三島毅輔も理解している。

「自分たちの鍵を握っているといっても過言ではないです。そこで相手打者の苦手なコースや打者の傾向を把握します」

 創成館戦ではセカンド・黒田泰司が頻繁にポジショニングを変えていたが、そこで大事なのは「決め事に合わせてチームで揃えて動く。統一感をもってポジショニングを変えることです」と黒田は語る。三島も「センターへ抜けることが多かったので、黒田は良く動いたんだと思いますが、ある程度統一して動くようにしています」とチームが連動して守備位置を動かすことをポイントに掲げる。

 また外野陣を見るとあまり深く守らず、浅めに守っているのも目に留まった。これは、「創成館さんはミートを大事にするチームだったので、長打は少ないと思ったんです。だから内野と外野の間に落ちる打球を取れるように、前に守るようにしました」と語っており、こちらも事前のミーティングに基づく守備体系だった。

[page_break:3つの要素がかみ合って初めて「攻めの守備」は完成する]

3つの要素がかみ合って初めて「攻めの守備」は完成する

甲子園初出場を果たした平田が掲げる「攻めの守備」とは? 創成館戦で見えたもの | 高校野球ドットコム
エースの古川 雅也 ※2019年の秋季大会より

 だが、この守備体系の根幹はデータと配球。つまり創成館戦であれば、古川と三島バッテリーの出来が肝になっている。この配球に関しては三島はこのように語る。

「基本的には相手打者の苦手なコースを突いて打ち取れるようにしています。その上で監督とコミュニケーションをとって、自分が理解できるまで話し合いました。なので、監督の存在は僕にとっては大きいです」

 キャッチャー・三島の配球は、植田悟監督の力も借りて準備されたたものだった。そして、その配球をエース・古川がしっかりと投げきることで「攻めの守備」は成立する。つまり、事前のミーティングに基づくデータと配球。そしてピッチャーの投球の3つが上手くはまって、初めて平田の「攻めの守備」は完成するのだった。

 甲子園でも「攻めの守備」発揮した平田。三島に「攻めの守備」の成果と手ごたえを聞くと「初回の先頭打者・田中 雄大はインコースにボールを投げ込んでファーストゴロにできたのは、こちらの作戦通りでした」と全国区相手にも通用した。

 その一方で、「思った以上に低い打球を打たれました。また、粘られた末にヒットを許すなど、相手チームのやりたいことをやらせてしまったと感じています」と全国レベルの高さを感じる瞬間もあった。

 それでも高校野球最後の試合を甲子園で出来たことは、これからに繋がるはずだ。古川は「悔しい気持ちもありますが、やり切ったという思いが強いです」と語れば、三島は「これだけの人が来てくれた中で試合ができて、改めて1人ではできなかったと思いました。ですので、『ありがとうございました』と言いたいです」とコメントした。

 今回は勝利を掴むことはできなかったが、再び「攻めの守備」を武器に甲子園に戻ってきて、次こそは全国での1勝を掴むことを楽しみにしたい。

(記事=田中 裕毅)

関連記事
「今だからこそ両親に感謝しなさい」 帝京の前田三夫監督が3年生たちへメッセージ
9年ぶりの甲子園を狙う帝京。復活の予兆を見せた裏側に迫る
3年生に託した9回の攻防 臼井の執念のサヨナラ打で東海大菅生 東京の頂点に立つ!

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.15

獨協大の新入生に専大松戸の強打の捕手、常総学院のサード、市立船橋のトップバッターが加入! 早くもリーグ戦で活躍中!

2024.05.16

涙の甲子園デビューから大きくレベルアップ!前橋商の192センチの剛腕・清水大暉は、高速スプリットで群馬県大会19回1失点、22奪三振の快投!<高校野球ドットコム注目選手ファイル・ コム注>

2024.05.16

【2024年春季地区大会最新状況】全道大会は出場校決定、関東と東海は18日に開幕

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.12

学法石川の好捕手・大栄利哉が交流戦で復帰! 実力は攻守ともに世代トップクラス!身長200センチ右腕を攻略し、完封勝利!

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?