交流試合一番の番狂わせ。昨秋神宮大会準優勝・健大高崎は帯広農との一戦で何が起こったのか
昨秋は県大会3位から神宮大会準優勝まで駆け上がった健大高崎。『下克上』という合言葉をもって旋風を巻き起こした健大高崎は、16日の甲子園交流試合では帯広農と対戦。試合は序盤から帯広農にペースを握られ、1対4という結果に終わった。
自分たちの武器だった下克上を体現された
好投を見せた帯広農・井村塁(写真は2019年10月12日 秋季北海道大会より)
この一戦に先発マウンドを託されたのは下慎之介。プロ志望届を既に提出しており、甲子園は仲間と戦う最後の場所であるとと同時に、公式戦で活躍を見せる数少ないチャンスだった。しかし結果は4回投げて被安打5、与四死球1、自責点2、失点3という内容に終わり、帯広農に試合の主導権を渡すこととなった。
「序盤からすべて高めにボールが浮いてしまい、そこを外野まで持っていかれました」と下は自身のピッチングを振り返る。また「思い通りに投げられなかった」という武器であったスライダーも高めに浮き、帯広農の各打者に狙われた。
試合を振り返っても初回から制球が大きくばらつき、高めのボールが帯広農の各打者のコンパクトなスイングで捉えられている。昨秋まであればピンチの場面でも持ち味である粘りの投球が出来たが、帯広農戦で発揮できず、失点を重ねた。
帯広農はチーム打率.404という結果を昨秋は残している。今大会参加チームの中でも好成績であり、十分に警戒していたはずだが、結果として序盤に失点を重ねてしまいリズムを崩した。
そんな下から「変化球がバットに当てられている」ということを聞いていた4番手で登板した橋本拳汰も、自信を持って投げたストレートは高めに浮けばきっちり外野まで運ばれている。
帯広農の単打で繋ぐ打撃に崩された健大高崎。すると攻撃陣も守備からの負の連鎖を断ち切れず、帯広農・井村塁の低めに丁寧に集めた投球にゴロを打たされ、アウトの山を築かされた。
だが、試合運び以上に下は精神面について語った。
「自分たちは神宮大会準優勝で追われる立場になって、向こうは死に物狂いで来ると思っていました。自分たちで言うところの下克上で来たところで気持ちで勝れなかったです」
どこかに慢心があったのではないかと考えていた下。他の選手たちはわからないが、ライナーの飛び出しによる併殺プレーなど細かなミスが時折出ており、どこかで隙があったのかもしれない。
そこを逃さずに丁寧な野球を最後まで見せてきた帯広農。強い方が勝つのではなく、勝った方が強い、という常套句があるが、健大高崎はそれを体現されたのではないだろうか。
(取材=田中 裕毅)
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