Interview

長崎に現れた高校通算32本塁打の長距離砲・作本想真(大村工)!ブンブン丸と呼ばれた悔しい時期を乗り越えて【前編】

2020.07.13

 九州大会でベスト4に入った創成館や昨年の茨城国体に出場した長崎海星などがひしめく長崎県。その名が先で強打を武器に秋の県大会でベスト4まで勝ち上がったのが大村工。夏は1回戦で姿を消したが、秋に結果を残し県内に存在感を示した。

 その大村工をバットで牽引するのが作本想真だ。身長188センチ86キロの大柄な体格から長打を放ち、12日の試合までで高校通算は32本塁打と同世代の中でも屈指の数字だ。さらに投げては140キロを投げる肩の強さを持っている作本はいかにして誕生したのか。そのルーツに迫る。

肩の強さを褒められて野球の世界へ

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2年生時の作本想真(大村工)

 作本が野球を本格的に始めるのは大村中学に進学してからで、小学校まではソフトボールをやっていた。

「当時はサッカーが好きで公園でサッカーをしていた時に、ソフトボールが転がってきたんです。同じ公園で練習をやっていたので、投げ返したら『肩強いね!』と言ってもらえて。それで『オレって肩強いんだ』と思って、キャッチボールをしてみたら楽しかったんです。それで小学1年生からソフトボールチームに入ることを決めました」

 現在福岡ソフトバンクホークスでプレーする、増田珠横浜出身)もソフトボールから野球へ転向した選手だが、作本もその中の1人だった。

 そして大村中に進学し、野球を本格的に始めた。ボールの大きさの違い、さらには上から投げることなど、ソフトボールと野球の違いに最初は苦戦を強いられた作本。そのなかでも「楽しく野球をやりたい」ということを考えながら日々の練習に打ち込んできた。

 しかし作本の意識の変化は1年生の時にやってきた。

「一緒にソフトボールをやってきた選手が1年生の時に中体連でスタメンとしてベンチに入ったんです。自分はライバルだと思っていたので、『何であいつだけ』と思ったんです」

 ライバルに負けない活躍をするべく、作本は楽しく野球をするのではなくライバルに勝つために練習に打ち込むようになった。なかでも試行錯誤を繰り返したのがバッティングだった。

 ソフトボールの時は大きく振っていた作本。スイングスピードも「振れている方だった」と自信を持っていた。しかし、軟式特有のボールがつぶれるという感覚の影響で、ホームランを狙ってしまうとポップフライを打ってしまうことが度々あった。

「ソフトボールの時と同じ力で振ってしまうとボールが柔らかい分、つぶれてしまうので、押すイメージとか力加減など、力を入れる感覚には工夫をしました」

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高校野球に入って自分らしさが発揮される

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作本想真(大村工)

 特に新チームになってから、「周りから『ブンブン丸』と言われたことが悔しかった」と振ってもボールが飛ばないことを経験。そこをきっかけにバッティングについて深く考えだした作本。

 創意工夫を凝らすが理想的なスイングが見つからず、最後まで苦労を重ねたとのことだ。

作本に中学時代を振り返ってもらったが、「ポップフライばかりを打ってしまいチームに迷惑をかけたのは覚えています」と反省の言葉を口にしていた。

 その後、作本は大村工への進学を決める。その理由は苦労したバッティングが関係していた。

「中学の時にホームランを打ちたかったので、バッティングに力を入れている大村工に進学することを決めました。大村工に進学してしっかり指導を聞いていれば、ホームランは打てるようになると思っていましたので」

 こうして大村工に入学した作本。ボールが硬式となり、中学の時とは違う世界に飛び込み、プレーに変化が生じるかと思われたが、作本にはそれがなかった。

大村工は大きなスイングをする選手が多いのですが、それでもきっちりミートさせてホームランを飛ばすので、『振った分だけ遠くに飛ばせる。元に戻してもいいんだ』と思えました」

 中学の時は強いゴロ、外野の間を抜いていくようなライナー性の打球を求めてきた作本。出塁することを優先したスタイルから脱却し、本来の自分らしい大きなスイングに戻すことにしたのだ。

 すると試合でも結果を残し続け、1年生の夏からベンチ入りを果たす。チームの中で欠かせない存在となってきた一方で課題も明確になってきた。

「振った分だけ打球は飛ぶんですが、レベルの高い投手相手に対しての対応力。変化球の待ち方などタイミングの取り方がバラバラで、打てるときとそうでない時の調子の波が激しかったです」

 前編はここまで。後編ではホームラン量産態勢に入れた理由に迫っていきます。後編もお楽しみ!

(記事=田中裕毅

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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