坂本勇人、市丸紘樹の強打者コンビで頂点へ。昨秋準V・唐津商(佐賀)の厳しい現実
唐津商ナイン ※写真提供=唐津商野球部
独自の大会を開催する方向で準備が進んでいる佐賀県。昨秋は県大会準優勝を果たし、夏こそは頂点を目指しオフシーズンを過ごしてきた唐津商は現在も活動を続けている。
3月25日から4月中旬までは活動をしていたが、緊急事態宣言を受けて活動は自粛。5月14日より再開し、再びチーム一丸となって甲子園を目指す日々を送っていた。チームを指揮する吉冨俊一監督も、「14日から活動再開しましたが、選手たちには『(開催を)信じて頑張ろう』と声をかけていました」と諦めずに練習を続けてきた。
しかし、20日に正式に中止が決まり、選手たちはショックを受けていた。
「練習がある程度きっちりできていましたし、4月は練習試合も行っていました。自粛期間中もSNSなどを使って、動画を送ってもらったり、コミュニケーションをとったりと自主練習もきっちりやってきました。だから、選手たちは余計にショックが大きかったんだと思います。実際にうなだれている選手もいましたし」
吉冨監督も3年生を気遣い、中止の決まった翌週までは選手たちを見守り続けたが、6月に入り、いつも通りの練習に戻した。
「いつも通りやらなければ、下級生へ対して示しがつきません。ですので、これまでやってきたことを変えずに練習をしようと決めました」
しかし最大の目標であった甲子園が中止となり、なかなかモチベーションが上がってこないのが唐津商の厳しい状況だ。
「一生懸命やろうとしているんですが、プレーはどこか精彩を欠いていました。今まで甲子園という目標に向けて3年生は練習や試合など一生懸命取り組んできました。その姿勢を今まで下級生は見てきたからこそ、示しがつかないと感じました。また、これから大学などで続ける選手、高校野球で引退をする選手も保護者に対して1つの集大成として見せるべきプレーがあると思っています。
3年生一人ひとり、少年野球から高校野球までの約10年、一生懸命白球を追いかけてきた集大成をプレーとして表現してもらいたいと思っています。その3年生一人ひとりの姿勢が今後の唐津商業野球部を担う下級生にも繋がってくれると信じています。大会まで1か月ありますので、『一人ひとりまだ成長できるから野球、大会ができる事に感謝し、いつも通り続けて行こう』と話をしています」
左:市丸紘樹 右:坂本勇人 ※写真提供=唐津商野球部
大会の戦い方など課題は残るが、唐津商は冬場に明豊の攻撃力を見て、バッティングを強化してきた。「今年はバランスがいい」と吉冨監督が語る高い完成度を誇る。その中でチームを引っ張るのが1年夏から公式戦を経験している市丸紘樹と坂本勇人の2名だ。
「坂本は1年の秋から捕手をやっていますが、この3年間で、ちゃんと育ってくれたと思います。首脳陣が想定していたような選手になりました。振り返れば、色々と喝を入れた時がありましたが、当時と比べると、複数の投手をリードする力、洞察力や統率力も良くなりました。
また主将の市丸は高校通算20本塁打を超える強打の遊撃手。吉冨監督は市丸の成長についてこう語る。
「1年生の時と比べると打撃がかなり良くなりましたね。きっかけは昨秋の九州大会の明豊さんとの試合ですね。14対20で負けたのですが、少しでも追いつけるように。ああいった攻撃力が必要だと肌で感じたと思います。守備に関しても主将でもありますので、声が出るようになって、周りは見えていると感じるのが見受けられます。技術面ではチームで一番の選手ですが、プレーだけでなく、姿勢でもリーダーシップを取れるようになりました」
独自大会では市丸と坂本のコンビを中心にまとまり、優勝を目指す。
(記事=田中 裕毅)
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