夏の準決勝敗退から始まった神宮大会優勝 日本一を狙う中京大中京の課題は
明治神宮大会優勝の中京大中京。選抜出場が実現となれば、優勝候補として期待され、もちろん高橋源一郎監督をはじめ、レギュラー全員が日本一を狙っている。
そんな中京大中京のこれまでの軌跡を追う。
夏負けた時から神宮優勝を狙っていた
印出太一と高橋宏斗
7月29日、愛知大会準決勝・誉戦。中京大中京は2年生のレギュラーは多く、甲子園出場を狙える戦力は十分に有していた。初回、西村友哉、中山礼都が本塁打を放ち、2点を先制。幸先よく試合運びを見せたが、4回裏に逆転を許し、5回表に同点に追いついたが、7回裏に勝ち越しを許してしまい、そのまま逆転できず、夏の甲子園が途絶えてしまう。
この時、バッテリーだった高橋宏斗と印出太一は責任を痛感していた。
「自分が投げて負けているので、この負けは絶対に生かさないといけないと思いました」(高橋宏斗)
「あの試合は自分のリードミスで負けてしまいましたし、打撃でも全く貢献ができなかったので、ふがいなく何もできなかった。一番悔しかった大会でしたので、新チームに生かそうと切り替えました」(印出太一)
新チームがスタートし、すぐにナインは明治神宮大会優勝に目標を切り替えた。高橋源一郎監督は「今年は例年より能力のある選手は多いですが、それだけでは勝ちに直結しません。ただ最初から頂点をとる気持ちは強かった」と振り返る。
そんな意気込む選手たちのために高橋監督がしたことは1つ。練習する環境を提供すること。中京大中京のグラウンドは他部活との兼用なので、全面を使える日は大会が近いとき。また雨天練習場もない。そのため高橋監督がOBに連絡して練習場を探す。
また選手の能力を伸ばすために、いろいろな方に指導をお願いすることも珍しくない。今年の主力選手は学生コーチや、コーチの方から学んできた。エースの高橋、2番手左腕・松島元希の二枚看板は学生コーチの指導を仰いで、フォーム技術、速球、変化球の精度を磨き、遊撃手の中山は自宅が学校に近く、早朝にグラウンドを出て学生コーチにノックを受けてもらい、指導を受けてきた。
また中京大中京の選手は探求心が豊かで、特にエースの高橋は空いた時間があれば一流投手の動画を見て研究を行う。日頃から情報を取り入れて取捨選択しながら才能を伸ばす努力ができる。そういう積み重ねが秋の大会では大きく発揮され、順調に勝ち進んだ。
日本一へ向けての課題
高橋源一郎監督
また、明治神宮大会期間中は国学院大の上月健太コーチから指導を受けるなど、選手の成長のためにはいろんな方の協力を仰いできた。
明治神宮大会優勝できたのは守備力の向上が大きかったと語る。高橋監督は選手たちで築いてきたものだとたたえた。
「特に内野手たちのリーダーである中山礼都を中心にどうすれば守れるのかを考えながら練習に取り組んでいたのがあると思います。シートノックというより、彼らはゴロ捕球について特にこだわりを持ってやっていましたので。練習はうそをつかないといいますが、僕は選手たちきつく絞ったというか、そういうことはやっていません。選手たちが自分たちで考えてしっかりとやったから結果が出たと思います。
そういう選手たちの努力が実ったのは、監督として嬉しいものでした。特に苦しかった天理戦で終盤逆転できたのは守れたことが大きいといえます」
また、高橋、印出の名前が目立つ中、高橋監督はいろいろな選手の成長をたたえた。
「三塁・村上 遼雅、一塁・吉田 周平の成長も大きかったと思います」
全体的な選手の成長も躍進につながったのだ。
課題は明治神宮大会で発揮できなかった打撃。3試合で22得点と打っているように見えるが、主軸の印出、中山は目立った活躍ができなかった。
「良い勝ち方だったと思います。すべてにおいて圧倒した優勝だったら満足してしまうところを、自分たちの力を思うように発揮できなかったところはまた成長の糧になります。だからみんな一生懸命、バットスイングしていますよ」
高橋監督は神宮大会の結果を前向きにとらえていた。
そして高橋、松島以外の成長も大切だ。東海大会でベンチ入りした奥村勇翔、飯島 大斗の両左腕、明治神宮大会でベンチ入りした右腕の山内一真、140キロを超える速球を投げ込む1年生右腕・畔柳 亨丞など多くの投手が成長が重要。今年から球数制限も入るだけに、高橋、松島だけでは、きついものがある。
高橋監督は「高橋、松島以外の2年生投手たちがどれだけ自覚をもって練習をしてくれるか。まず一定以上の球速・切れを出しながら、高橋、松島にはない武器を見出すことができるか。監督としてそうやって努力をしている選手の姿を見逃さず、チャンスを与えたいと思います」
また主力選手も課題が明らかになった。高橋はピッチング面で甘さを残し、印出は打撃の確実性とスローイング、左腕の松島はコントロールを課題に挙げた。
この冬は台湾にも遠征を行い、2勝1敗で終え、貴重な国際大会の経験を積んだ。そして厳しいマークをされることはあっても、日本一という目標はぶらさない。
印出たちは「春夏連覇を目指します」と力強く宣言した。
長い歴史を誇る中京大中京にとっても、またとないチャンス。おごることなく、どこも寄せ付けない圧倒的な強さを身に着けていく。
(文・河嶋 宗一)
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