Interview

「大学球界の名門・東洋大4番バッターが語るバッティング理論」佐藤都志也(東洋大学)【前編】

2019.10.07

 大学野球界の中でも、特に熾烈を極めることで「戦国東都」と呼ばれる東都大学野球リーグ。その中で2019年の春季リーグ戦を制したのが東洋大。その東洋大に福島の名門・聖光学院から進学し、今年は主将としてチームをまとめるのが佐藤都志也だ。

 今春のリーグ戦では打率.309の成績を残し、ベストナインを受賞。キャッチャーとしては二塁送球1.8秒をマークする強肩の持ち主で、2年連続で大学日本代表に選出された。今秋のドラフトで注目される佐藤は、今に至るまでにどんな野球人生を送ってきたのか。

興味本位から切り開いた聖光学院への道

「大学球界の名門・東洋大4番バッターが語るバッティング理論」佐藤都志也(東洋大学)【前編】 | 高校野球ドットコム
佐藤都志也(東洋大学)

 佐藤が野球を始めるきっかけとなったのは、祖父の影響だった。

「一緒に野球中継をみたり、キャッチボールをしたりしたのが始まりです。それから『体を動かせば』という話が家で出てきて、そのときに野球をやろうとなりました」

 それから佐藤は小学3年生から地元の子供会に入り、小学5年生からは少年団でソフトボールを始めた。その後、地元の中学校に進学し本格的に野球を始め、高校では名門・聖光学院の門を叩いた。

「最初は、甲子園に行くようなチームがどんな練習をするのかを知りたくて、興味本位で練習会に参加しました。その時は『聖光学院に行けたらな』というくらいしか考えていませんでした。ただ、特待生をもらった縁で行くことを決めました」

 それからの佐藤は聖光学院の当初を振り返ると、「ボーイズ出身の選手と比べると硬式に対する経験が違うので、最初は苦労をしました」と当時のことを語る。

 そのうえで「とにかく練習しました。『自分が一番下手だ』と思って努力と一生懸命さをもってやりました」とがむしゃらに練習をしたことを話してくれた。

 佐藤はその後、守備や足の速さを武器に活躍し、正捕手の座を掴む。そして2度の甲子園出場を経験することができた。

「いい経験をさせてもらえたと思います。ただ、聖光学院での3年間は大変でした」と少し苦笑いをしながら高校時代を振り返った。

 しかしここまでの野球生活で積み重ねたものが、佐藤の大学野球での活躍の支えになっていたことが、バッティングの理論を通じて見えてきた。

[page_break:ミートしてから押し込む感覚が木製バットに活きた]

ミートしてから押し込む感覚が木製バットに活きた

「大学球界の名門・東洋大4番バッターが語るバッティング理論」佐藤都志也(東洋大学)【前編】 | 高校野球ドットコム
佐藤都志也(東洋大学)

 佐藤はリーグ戦で首位打者を獲得するなど、バッティング能力も高い評価をされている。そのバッティングで佐藤選手が求めているのは、“割る感覚“だと語る。

「今はピッチャーが足を上げるタイミングで、右足をあまり上げすぎずに少しだけ上げるようにしています。そこからゆっくり下ろすことで、自分の間で打てるようにしています」

 佐藤は“割る感覚“を作れるように、タイミングを取り始めるポイントを分析するように心がけている。だがもう1つ、佐藤にとって大事な感覚がある。それが、ハマる感じだ。

「軸足にタメが出来る感覚が、ハマる感じなのですが、これは大学野球からより大事にしています。高校に比べてボールの速さや切れが凄いですし、木製バットだと芯を外されるとボールが飛ばないです。なので、しっかりハマった状態で打たないと、ボールを飛ばせないんです」

 このハマる感じをしっかり体でわかるために、片足スクワットをするなどして筋肉に刺激を与えているそうだ。

 そんな佐藤は木製バットに対応するためにどんな工夫をしていたのか。入学当初のことを聞くと、「大変でしたが、自分はバットを長く使う感覚でバッティングをしていたので、あまり苦労はなかったです」

 この長く使う感覚とはどういうイメージなのか。さらに詳しく聞いた。

「バットのヘッドを使う感じです。強くミートさせるというよりも、ミートしてからボールを前へ送り出す感覚です。
金属だと全部が芯なので、当たれば飛んでくれます。ただ木製は芯が狭いので、しっかりミートしてから1センチ2センチでも前へ送り出してから返す。この押し込みが金属とは違うと思います」

この感覚を高校時代から貫いていたことで、木製バットへの障壁は少なかった佐藤。では、この押し込む感覚はどこで養われたのだろうか。

「自分のバッティングは小学校時代から変っていないです。多分、昔は流し打ちが得意だったんです。そこで、外角を打つのに返してしまうと凡退してしまうので、押し込む必要があります。

 それがきっかけで押し込む感覚を覚えて、結果的にどのコースに対しても押し込む技術が使えるようになりました」

 この押し込む感覚が木製バットでは活き、佐藤のバッティングを支えているのだ。

後編ではキャッチャー・佐藤都志也についてさらに詳しく迫っていきます。

(取材=田中 裕毅

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理論派のアスリート型キャッチャー・佐藤都志也(東洋大学)。1.8秒台の猛肩のコツは「キャッチング」【後編】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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