Column

秋の四国で見つけたダイヤの原石 古市 尊(高松南高2年・捕手)

2019.09.29

 2007年2月に首都圏から居を四国地区に移し13年目。「さすらいの四国探題」の異名を背に四国球界でのホットな話題や、文化的お話なども交え、四国の「今」をお伝えしている寺下友徳氏のコラム「四国発」。

 第56回から数回は秋の四国で見つけたダイヤの原石たちを紹介していきます。その第1回は高松南高に突如出現した強肩捕手・古市 尊(2年)を紹介します。

二塁送球1.9秒台を超えない超強肩「元センター」

秋の四国で見つけたダイヤの原石 古市 尊(高松南高2年・捕手) | 高校野球ドットコム
高松南・古市 尊(2年・捕手)

 「1.73秒!!」

 9月15日・令和元年度(第72回)秋季四国地区高等学校野球香川県大会、夏のベスト4高松工芸高松南が挑んだ2回戦。取材時に習慣化している投球練習後の捕手二塁送球タイム測定で高松南の捕手が出したタイムに、私は思わずのけぞってしまいました。

 

 ややスタンディング気味で捕球してからの送球とはいえ、これは特筆すべきもの。その後も「1.75」「1.71」「1.85」。直前に一塁ベース上でひざに相手のけん制が当たった直後ですら「1.94」。そして9回は「1.79」。「こんな選手、旧チームからいたっけ?」慌てて私は旧チームのメンバー表を調べました。するとありました。「背番号8・中堅手・古市 尊・2年生」。そう、強肩捕手の正体は「元センター」だったのです。

[page_break: 「探求重ねて伸びた送球タイム]

探求重ねて伸びた送球タイム

秋の四国で見つけたダイヤの原石 古市 尊(高松南高2年・捕手) | 高校野球ドットコム
1番を張る高松南・古市 尊(2年・捕手)

 「彼は中学時代は捕手だったんですが、旧チームでは3年生にしっかりした捕手(天野 雄人*9月16日にプロ志望届提出)がいたので、公式戦ではセンターに回していました。実は今日も先日の練習試合で死球を受けて万全ではないんですけどね」

 

 1番・古市の2打数2安打3四球3得点の活躍などで5対2とシード校・高松工芸を下した直後、銚子商(千葉)部長として甲子園出場経験を持ち、トヨタ自動車・多木 裕史外野手の実父でもある高松南・多木 教雄監督がその謎を解いてくれました。

 では「公式戦ではじめてのリードは緊張した」と試合後に明るい笑顔を見せた古市捕手はどうやってこの送球タイムを手に入れたのでしょうか?「遠投は香川中央リトルシニア2年の時以来測ったことはないですが、その時から92メートルは投げていました」と話す本人に、その経緯を聴いてみると……。

 

「高校に入ってからもB戦で捕手を務めていたんですが、そこで盗塁される場面が多かったんです。そこでどうしたらいいかを考えて、昨年の冬には下半身を鍛えた上で、左足でボールに対して入って低く入っていって送球する形を作っていきました」。いわば日本球界歴代の名捕手である古田 敦也(元東京ヤクルトスワローズ)を目標としている志を持っておる探求心が、このタイムを叩き出したといってよいでしょう。

金言を胸にドラフト候補へ駆け上れ

 そして彼は幸運の持ち主でもあります。この試合、他会場の視察から回ってきた某NPB球団スカウトが試合後半から古市 尊のプレーを見ていました。以下はその感想です。

 「いいものは持っていますね。だた、地肩の強さを最大限活かすために、二塁送球時のコンパクトさをもっと出してほしい。あとはワンバウンド捕球時に一瞬浮く癖がある。140キロ以上の球速に対してはそれでは対応できないので、そこは修正してほしい。そうすれば他の部分も伸びてくると思います」

 いまのところ本人の志望は「社会人野球でプレーできる選手になること」。ただ、この努力をさらに伸ばしていけばドラフト候補に挙がることは間違いありません。9月28日・高松桜井との3回戦でもリードでは7回2安打無失点、打っても4打数1安打1四球2盗塁と新たな引出しを加えた高松南・古市捕手。10月5日(土)8年連続の四国大会出場を狙う英明との準々決勝で彼がどんなパフォーマンスでチームをけん引し、ドラフト候補に駆け上がるかを楽しみにしています。

秋の四国で見つけたダイヤの原石

第1回 選手データ

古市 尊 

ふるいち たける

高松南高2年 捕手 右投右打 177センチ67キロ

丸亀市立岡田小卒(軟式・綾歌少年野球クラブ→飯山少年野球クラブスポーツ少年団出身)~丸亀市立綾歌中卒(香川中央リトルシニア出身)

(文・寺下 友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.15

西東京大会は激戦ブロックが続出!昨夏甲子園出場の日大三は国士舘と同ブロック!【2024年夏の甲子園】

2024.06.15

東東京の横綱に上り詰めた帝京、関東一の軌跡~前田三夫と小倉全由、2人の名将~【東西東京大会50周年物語③】

2024.06.15

【福島】日大東北がサヨナラ勝ち、帝京安積はコールド勝ちで4強入り<春季支部選手権大会>

2024.06.15

今年の東京は「スラッガー大豊作世代」! 超進学校に現れた「プロ入り明言」の二刀流、木製で本塁打量産の早実のスラッガーなどが夏を盛り上げる【注目選手リスト】

2024.06.15

“超不人気”だった東京の高校野球を「3つの出来事」が変えた! 東京ローカルチーム・桜美林の全国制覇、都立高の甲子園出場、そして……【東西東京大会50周年物語②】

2024.06.14

【福岡】九州国際大付は小倉商、東海大福岡は小倉南、春日は大川樟風、福岡大大濠は輝翔館と対戦【2024夏の甲子園】

2024.06.11

センバツ出場・東北のレギュラー左翼手がプロボクサー挑戦へ! エースはENEOS、主力は國學院大、国士舘大などへ進学【卒業生進路】

2024.06.14

15日に夏の甲子園抽選会!超激戦区・愛知が誇る逸材を一挙紹介!素材の宝庫・愛工大名電、中京大中京の149キロ右腕…そしてモイセエフはどこまで成長したのか?今年も全国クラスの逸材が点在!【注目選手リスト】

2024.06.11

【北海道】十勝支部は12日に抽選会!帯広大谷、白樺学園の初戦の相手に注目<夏の甲子園予選組み合わせ>

2024.06.10

【沖縄】11日に抽選会!春の覇者・エナジック、ノーシードの沖縄尚学の対戦相手に注目<夏の甲子園県大会組み合わせ>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.21

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在33地区が決定、岩手では花巻東、秋田では横手清陵などがシードを獲得〈5月20日〉

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.20

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在31地区が決定、宮城では古川学園、仙台南、岩手では盛岡大附、秋田では秋田商などがシードを獲得