試合レポート

木更津総合vs千葉明徳

2019.09.23

146キロ右腕・篠木、140キロ左腕・吉鶴は全国レベルの2枚看板!今年の木更津総合の課題とは

木更津総合vs千葉明徳 | 高校野球ドットコム
篠木健太郎(木更津総合)

【熱戦の模様をギャラリーでチェック!】

 木更津総合vs千葉明徳の一戦は木更津総合が延長11回裏、篠木健太郎(2年)のサヨナラ打で7対6で勝利し、3回戦進出を果たした。

 投げては8.2回を投げて2失点、9奪三振、打ってはサヨナラ打とまさに千両役者というべき活躍を見せた篠木。ただ6失点の中身を追うと、今年の木更津総合の課題が見えてくる。

 まず先発マウンドに登った吉鶴翔瑛は立ち上がり1点を失い、4番までヒット3本、四球1つとアウトを1つも取れない苦しい立ち上がり。その後、連続三振、三ゴロに抑え、ピンチを切り抜けたが、3回表に適時打を打たれ、降板。ただ吉鶴はボール自体は素晴らしいものがあった。下半身主導で動き、テークバックを取った時、しっかりと胸を張って、投球フォームは早川隆久(早大)、山下輝(法政大)を思い出させるような完成度の高いフォーム。常時135キロ~138キロ(最速140キロ)の直球は角度があり、パワーアップを遂げている。今春に見た時は130キロ前半だったので、しっかりとトレーニングをして調整したのが伺える。そして120キロ後半のスライダーも打者のひざ元に決まり、2.1回を投げて4奪三振とボールの威力の高さを示す奪三振数だ。しかし木更津総合の守備陣のミスが目立った。1回表はライトの送球ミスからの1点で、2回表にもエラー1つ、3回表にも挟殺プレーや処理ミスが目立った。

 今年の木更津総合の守備陣は全体的に前よりで守っている。前進守備にすることで、必然とヒットゾーンは広くなる。千葉明徳のヒットは完全にクリーンヒットという打球はなく、ポジショニング次第ではアウトにできているものも多く、また内野手の捕球姿勢もバッタどりのような形で捕球しにいくので、バウントに合わせることができていない。

 そして外野守備のポジショニングも気になる。千葉明徳の外野陣と比較しても前進守備なのだ。特に篠木がマウンドに立った時はそれが顕著に表れ、左打者が打席に立っても、ライトは右打者の流し打ちに備えるような位置で守っており、驚かされた。実際に捉えた打球は外野の頭を超えて、容易に三塁打にされている。確かに強風が吹いている影響はあったが、千葉明徳は前半守備のミスがあったが、打者に応じて守備位置は浅くしたり、深く守ったりしていて厳しいフライを幾度も捕球しており、スクイズで点を取るなど、戦略性が感じられた。勝負は篠木が勝ったが、チーム全体で見ると千葉明徳が上だった。


 そういう状況下の中で2失点に抑えた篠木の凄さが伝わる。上半身、下半身の動きが連動した投球フォームは惚れ惚れするほど美しく、疲れが見えた今夏と比べると着実にパワーアップを遂げており、常時138キロ~146キロのストレートは回転数抜群で、5回表、千葉明徳の岩瀬颯太を146キロのストレートで空振り三振を奪った場面は思わず唸らされるものがあった。さらに130キロ近い高速スライダーも手元にキレて高確率で空振りが奪え、ストライクが取れる。千葉明徳打線も篠木対策をかなりやっているように見える打撃内容だったが、それでも抑え込んだ篠木の実力はずば抜けている。今回、ストレート83球のうち、140キロを超えたのは57球。平均球速141.33キロとプロの先発投手のような平均球速の高さである。

 高校2年生の段階でここまで到達している投手はなかなかいない。現在の千葉県ナンバーワン右腕として注目される篠木だが、この平均球速の高さとコントロールは現在の高校2年生の中でもトップクラスだろう。

 ただこの日の試合内容は篠木のパワーによって勝てたものだ。こういう試合を続けると篠木のスタミナは確実に削られていき、今回のような平均球速も期待できない。甲子園を目指すとなれば、篠木、吉鶴を含めたチーム力で勝つことが求められている。大会が続く中、木更津総合の守備力はどう高めていくのか。目に見える成長を見せた時、この秋の千葉を制する可能性も高まっていくだろう。

 敗れた千葉明徳は1番・前嶋英人の打撃が光った。吉鶴、篠木からそれぞれ1安打。3回表、二死満塁のチャンスで篠木から走者一掃の適時三塁打を放った当たりは見事だった。

 パワフルなスイングから繰り出す打球の速さはなかなかのものがあり、速球への対応力も素晴らしいものがある。二塁守備も一定レベルのものがあり、今後の進化を楽しみにしたい選手だ。

(記事=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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