武蔵vs帝京八王子
雨に助けられ、雨を活かした武蔵が帝京八王子を破る
サヨナラ勝ちを収めた武蔵
雨天により、2度の中断を挟んだこの試合。やや帝京八王子に有利かと思われた試合だったが、武蔵が粘りの野球を我慢強く続けて代表決定戦に駒を進めた。
この試合のポイントは、2度の雨天中断のタイミングにあった。
1度目は3回裏、武蔵の攻撃に入る際に雨が強まり中断に入る。初回に3点を挙げた帝京八王子に流れが傾こうとしていただけに、武蔵にとっては流れを断ち切る恵みの雨となったのだ。
武蔵の石井豪監督も、雨に助けられたことを試合後に口にした。
「あまり大会慣れしてなくて試合の入りはバタバタしたのですが、1回目の中断は良い方向に向いてラッキーだったと思います」
そして2度目の中断は7回裏、1度目とは反対に武蔵が4対4の同点に追いついて、今まさに逆転が狙えるというタイミングでの中断であった。ここでは帝京八王子にとって流れを切る恵みの雨となり、武蔵にとっては良い流れを打ち切られる中断となったが、石井監督はこの雨についても冷静に受け止めていた。
「流れが良かったのであのまま続けたかったのもありますが、みんな同点に追いついてヒートアップしていたところがあったので、一回落ち着くのにはちょうど良かったのかなと。最終的には二度ともラッキーな雨になりました」
サヨナラタイムリーを放った吉田(武蔵)
結局、7回裏の試合再開後は得点を奪うことは出来なかったが、かと言って雰囲気が悪くなる様子も全く見せない。中断を前向きに受け入れ、その時間で気持ちを落ち着かせることができ、地に足がついた状態で終盤に入ることが出来たのだ。
雨に助けられ、そして雨を活かすことができた武蔵。
同点で迎えた9回に帝京八王子に1点を勝ち越されるものの、その裏に6番・石村慧冴がライト前タイムリーを放って再び同点に追いつく。土壇場で延長戦に持ちこんだ武蔵は、最後は10回裏に二死一、二塁から4番・吉田知生がセンターオーバーのサヨナラタイムリーを放ってこれでゲームセット。
5対4で帝京八王子を下し、代表決定戦進出を決めた。
サヨナラタイムリーを放った吉田は試合後、打席を振り返り、そして東海大菅生との代表決定戦に向けても意気込みを語った。
「打ったのはストレートです。少し弾道が低かったので越えるか微妙だったのですが、意外と伸びてくれたので良かったです。次も打たれても最少失点で抑えて、粘り強くやっていければなと思います」
勢いだけではなく、戦況を巧みに見極めながら常にポジティブに戦う武蔵。今度は東海大菅生の高い総合力に、どこまで食らいついていくことができるか注目だ。
(文=栗崎 祐太朗)