関東一vs都立小山台
谷が被安打2の完封!主将・渋谷が3打点!関東一、都立小山台を破り甲子園へ
都立校としては初めて2年連続で決勝戦に駒を進めた伝統校である都立小山台が悲願の甲子園初出場なるか、それとも、関東一が3年ぶりの甲子園出場を決めるか。猛暑の中、[stadium]神宮球場[/stadium]は2万人の観衆が集まり、熱気に包まれていた。
関東一の先発は背番号10の速球派の谷幸之助、小山台は全試合に完投している安居院勇源だ。
谷は好不調の波が激しいのが欠点だった。1回表1番・池本仁志を四球で出す。関東一の米澤貴光監督は思わず、「いい加減にしろと」思った場面であった。さらに3番・笠原柊真の三ゴロを、1年生の初谷健心のエラー。一死一、三塁と関東一はピンチを迎える。ここで谷はあわてず、4番・吉田大晟を遊ゴロの併殺に仕留め、無失点に終わる。両チームにとって、大きな意味を持つ、1回表の攻防であった。
それでも小山台の安居院も落ち着いた投球で、序盤3回に得点を与えない。一方の谷は、2回、4回とその回の先頭打者に四球を与える不安定な内容。関東一の米澤監督が、「持ち味と紙一重です」という不安定さがあるものの、以前の谷なら、四球を連発して自滅したかもしれない場面でも、しっかり持ちこたえる。「変化球で内野に打たせることを意識しました」と谷は語る。そこにこの1年の成長を感じる。
先取点を挙げたのは関東一だった。4回裏、この回先頭の2番・村岡拓海の右中間を破る三塁打を放ち、4番・平泉遼馬の右前安打で1点を入れる。さらに平泉は二盗に、5番・野口洋介の一ゴロで三塁に進み、主将で6番打者の渋谷嘉人の詰まった当たりの中前安打で生還し、1点を追加する。
関東一の谷は5回、6回と四球を出し、背番号1の土屋大和がキャッチボールを始める場面もあったが、得点を許さない投球を続ける。
一方スプリットなどの変化球を効果的に使いながら、根気強い投球を続けていた小山台の安居院であるが、この大会、1人で投げ抜いているだけに疲れもみえてきた。
8回裏関東一は、この回先頭の2番・村岡が右前安打。村岡はこの試合猛打賞の活躍で、チャンスメークの役割を果たした。さらに4番・平泉の死球などで2人の走者を置き、主将の6番・渋谷が左中間を破る三塁打を放ち2点を追加。関東一は優勝を大きくたぐり寄せた。
本来140キロ台後半の速球を投げることができる谷だが、この大会は、130キロ台後半に抑えた球が多かった。しかし、9回表にマウンドに立つと、140キロ台の球を続けて投げる。「スピードはそんなに意識していません」という谷であるが、無意識のうちに力が入ったのかもしれない。
それでも二ゴロ、三振と2アウトになった後、小山台の7番・森喜洋に四球を与えると、米澤監督からの伝令がマウンドに来て一呼吸を置くと、8番・藤原光基を三振に仕留めると試合終了。谷は被安打2、与四死球7、奪三振7の完封。最後に投げた球は139キロだった。
0-4で敗れ、今大会も準優勝に終わった小山台であるが、昨夏の準優勝、春季都大会のベスト4、この夏も準優勝と、強豪校と何ら遜色のない素晴らしい結果を残した。練習時間が限られ、練習環境も決して恵まれていない中での快挙である。今年の準優勝で中心的な役割を果たしたのは、吉田大晟、池本仁志、佐藤晃といった昨夏を経験した選手たちである。2年生ながらこの夏を経験した上江洲礼記や飯田瑤生らを中心に、来年の夏の活躍を期待したい。
3年ぶり8回目の優勝を決めた関東一であるが、秋季都大会の3回戦で国士舘に負けた頃は、「このままでいいのか、考えないといけないかもしれない」と米澤監督が吐露するほど、状況は良くなかった。それでも練習を続けていく中で、実力が上がり、野球の理解度も高まった。秋までの不安定さは影を潜め、大舞台でも十分に戦えるチームになってきた。それでも米澤監督の理想を100とすれば、まだ70程度だという。短期間で急成長することは難しいにしても、甲子園での試合までの間に、どこまで高めることができるかが、甲子園での戦いのカギとなる。「甲子園では、思い切ったプレーをして、自分たちの野球ができればと思います」と渋谷主将は語る。甲子園での戦いを楽しみにしたい。
(文=大島 裕史)
2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会東東京大会
■開催期間:2019年7月7~7月27日(予定)
■組み合わせ表【2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会東東京大会】
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